シアターフォーラム    
シアターフォーラム 作・演出/三谷幸喜、出演/戸田恵子 『なにわバタフライ』開幕

三谷幸喜 人気劇作家・脚本家の三谷幸喜氏が3年ぶりに書き下ろした新作舞台、そして三谷氏にとって初の“一人芝居”となる『なにわバタフライ』が3日間のプレビュー公演を経て、12月22日(水)にPARCO劇場で初日を迎えましたが、その初日開幕に先立ち、公演の一部分上演と三谷幸喜氏自身による舞台の見所のレクチャーが同日の昼、報道陣に向けて行われました。


 舞台セットを背にして登場した三谷氏は「こんなに少ない人たちの前で喋るのは20年ぶりくらいかな」と言いながら、「プレビュー公演を今まで3回やってきて、やっと固まった感じです。」と、出来栄えには手ごたえを感じている様子。

 「一人芝居なので、戸田恵子さんが2時間ずっと喋りっぱなしのお芝居になっています。戸田さんはあまり泣き言を言わない方なので、実際のところは分からないのすが、かなりプレッシャーだったと思うし、今日も初日を迎えて緊張されていると思うんですが、一人芝居をやってみて思うのは、こっち側も緊張するけれども、観ているお客様も、「これはどう観ていいのか」みたいな感じでやっぱり凄く緊張されている。僕のお芝居って演劇通みたいな、一人芝居を一杯観てきたという人よりも、この『なにわバタフライ』で初めて一人芝居を体験する、そういうお客様のほうが多いというのもあるものですから、皆さん、「本当に一人で二時間出来るんだろうか?」みたいな感じで、最初は凄く緊張感が客席にも漂うんですよね。
 ただ、今回僕が3年ぶりに舞台をやってみて思ったのは、お客様がとても成長しているというか、とても良いお客様です。皆さん、このお芝居の世界に集中してくれて、特に一人芝居というのは、あまり気持ちが拡散しないんですよね。一人の人間をずっと2時間観っ放しになるので、凄く観ている方も集中力が要るんだけれど、ちゃんと皆さん最後まできちんと観てくれるし、携帯電話なんてもちろん鳴らないですし、笑うところは皆さん笑ってくれて、笑わなくて良いところは――よく「何でも笑ってやろう」みたいなお客様も居ますが――今回はホント皆さんきちんと観てくれる。それで最後ちょっとしんみりするところはシーンとして観てくれて咳をする人も居ないし、凄く良いお客様だな、この3年間で演劇界もお客様が凄く成長して来ているな、という風に僕はプレビューを見ながら感じました。」と、ここまでのプレビュー公演を評します。

 そして「この後、冒頭12〜3分の抜き稽古を演りますが、ざっとお芝居がどんな感じなのかご説明したいと思います。」と背後の舞台を振り返ります。

 「これがセットで楽屋、設定はモチーフとなるミヤコ蝶々さんが昭和50年代後半に大阪のとある劇場でお芝居を演っているという設定で、その楽屋です。ここで一切の舞台転換、装置転換無しで、この楽屋の中だけで2時間、話が進みます。但しお話は7歳のころからずっと彼女の人生を追って行く訳で、この楽屋の中だけで、ここが例えば7歳の彼女が初めて舞台に立った九州のとある炭鉱町の劇場の舞台になったりとか、大阪から東京へ向かう夜汽車の中になったりとか、病院の中になったりとか、この中で全部展開します。ここにあるいろんな小道具を使って、彼女は7歳になり、22歳になり、40何歳になり、という感じになっています。だから衣裳替えなんかも全部ここで見せてしまおう、という趣向です。例えばあそこに緑色の変なジャージが掛かっていますけれども、あれは何かというと、戦争の場面になった時に彼女が履いてそれをモンペに見立てるという感じですね。
 今回、本当に演出的なところで色々工夫していまして、――僕は演出家でもないので、お芝居にそんなに工夫はないのですが、――今回はかなり頭を使いまして、テーマは「見立て」ということで、この中に在る色んなものを、色んなものに見立てて一人の人の人生を表現していこうと思っています。その見立ての一つで、上に楽器が並んでいるのが見えると思うんですが、あそこでBGM、一切合財の音楽を小竹さんと山下さんの二人にやって貰います。SE・・・普通は音響さんが出してくれる汽車の音とか、大砲の音とか、時計の音とかも全部見立てということで、後ろの打楽器を使って演奏する事になっています。
 僕は『オケピ!』というお芝居で初めて小竹さんを知ったのですが、打楽器の世界というのは本当に面白くて、色んな僕らの知らない楽器が沢山有るんですよね。(数十センチのホースを袖から出して)これも楽器で“ミュージックホース“というものらしいのですが、こうやって音を出します。(実際にやってみせる)面白いでしょ。これがどういう風に劇中で使われるか、というのは見ていただいてのお楽しみです。(竹筒のようなものを手に)これは雨の音を出す時に使う、これも楽器なんですよね、“レインメーカー”というものです。(実際にやってみせる)延々、何か流れるんですよね、中はどうなっているのか、解らないですが。僕が一番お気に入りなのはですね(と、ポケットから取り出す)。これはパチカという打楽器なんですけれども、これは実際に上で演奏されるのですが、あんまり面白いので僕はマイ・パチカをヤマハで買ってきたんです。これはどう使うかというと――これは来年多分一番のヒット商品になるんじゃないかと僕は思っています――(実際に使いながら)こうやって音を出すんですけれども、叩きながら音も出るんですが、時々こうやって(と別の使い方を試すが上手くいかずに)、・・・ちょっと・・・さっきは掴めたんですが・・・こうやって、こういう感じで音を出すんです。これも非常に珍しい、パチカという楽器です。本番でも凄く活躍しますので、それもご期待していただきたいな、と思っています。」

 という説明がなされた後、「これから冒頭の部分だけ観ていただいて、こんなお芝居なんだよということだけ観ていただきたいな、と思います。」と言う事で、一度舞台が暗転し、芝居の冒頭部分の上演が行われました。

 12分ほどの上演が終わった後、緞帳の下りた舞台の前に再び姿を現した三谷氏は、「今観ていただいたように、彼女の人生がこのあとずっと50何歳に至るまで続き、その間に2回の結婚があったり、駆け落ちがあったり、ステージパパのお父さんとの交流があったり、そのお父さんの死があったりと、色んな波乱の人生があって、最後に彼女がいったい何を見つけるかというのが、今回のお芝居のテーマになっております。
 今観ていただいた様に、7歳の戸田恵子さん、――まあ見ようと思えば見えないことはないと思うんですけれども――、一人芝居は観る側にも集中力が必要なお芝居なんですよね。
 この後も例えば彼女のお父さんであるとか、初恋の人、最初の恋人、旦那さん、2番目の旦那さんとか一杯登場人物が出てきます。それは決して実際に出て来る訳じゃなくて、お客様には見えないし、台詞は聞こえない。全部戸田恵子さんが自分の芝居で、リアクションであたかもそこに人が居るように、喋っているように見せるということです。だから観ている方も集中しないとそこに誰が居るのか良く判らなくなっちゃう。でも集中してちゃんと観てくれると、生き生きとした色々な登場人物が見えてくる、みたいな仕掛けになっています。
 僕は、台本にはその相手の台詞を全部書きました。イメージキャストもして、この役はこの人じゃないかと、僕の芝居に良く出てくれる俳優さんたちでキャスティングを勝手にやって、この人はこの役者さんが演ってますと戸田さんにも伝えました。例えば台詞を僕が言ったりしながら稽古をして創っていきました。だから、相手の台詞も観ている皆さんの耳に聞こえてくるように創っているつもりではあるので、そういう感じで楽しんでいただけたらな、と思います。
 僕の理想は、カーテンコールで最後に戸田さんが出てくるんですけれども、そこで初めて観ている人は「あれ、これ他に登場人物居なかったっけ?」「出演者、戸田さんだけだったんだ。」って、そこで初めて一人芝居だったってことに気がつく、そんなお芝居にしたいなと思っています。プレビューを見た感じだと、多分そういうものになっていると確信しておりますので、皆さんも是非その目で確かめていただきたいな、と思います。」と、この舞台の狙いを語った三谷さん。

「1月の末までやっております。その後は大阪にも行きます。よろしくお願いいたします。どうも今日はありがとうございました。」と締めくくって、公開稽古と三谷氏の見所講義は終了となりました。

三谷幸喜

なにわバタフライ 戸田恵子
撮影:谷古宇正彦
なにわバタフライ 戸田恵子
撮影:谷古宇正彦
なにわバタフライ 戸田恵子
撮影:谷古宇正彦
戸田恵子

 この日は初日ということで、劇場のロビーには多くの花が立ち並び、三谷さん、戸田さんお二人の現在の幅広い活躍、そして交友関係の広さを物語っていました。
 また、今回のチラシやプログラムにも使用されている蝶々のイラストをあしらったTシャツなどのグッズも販売されており、こちらも人気を呼びそうです。


 この公開稽古と三谷氏の見所講義は、後日動画にての掲載を予定しております。文章ではお伝え出来にくいことも御覧いただけると思いますので、どうぞ楽しみにお待ちください。


なにわバタフライ 戸田恵子
パルコ・プロデュース公演
 
『なにわバタフライ NANIWA BUTTERFLY』
     演出/三谷幸喜
     出演/戸田恵子
     生演奏/小竹満里・山下由紀子

■東京公演
会場  PARCO劇場
日時  プレヴュー公演  2004年12月18日(土)〜12月20日(月)
本公演  2004年12月22日(水)〜2005年1月26日(水)
<12/21、12/28、1/1-3、1/11、1/18 は休演>
一般前売  2004年12月 4日(日) 10:00〜  <電話・店頭>
料金  プレヴュー公演 \7,500 / 本公演 \8,000 <全席指定・税込>
お問合せ  パルコ劇場 03-3477-5858


■大阪公演
会場  シアター・ドラマシティ
日時  2005年 2月 2日(水)〜 2月13日(日) <2/7(月)・休演>
一般前売  2004年12月25日(土) 10:00〜
料金  \8,000 <全席指定・税込>
お問合せ  キョードー大阪 06-6233-8888

パルコ劇場サイト  
三谷幸喜公演サイト  

   

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