1987年6月11日、東京・帝国劇場でその歴史的なプレビュー初日を開けたミュージカル『レ・ミゼラブル』。
それまでのスター中心の公演とは異なり、群像劇として多くの登場人物にドラマがあるミュージカルとして歴史を大きく変えたこの舞台では、その高い音楽性を表現し、歌って演じられる高レベルのキャストを揃えるために、日本で初めて全ての役を一般公募。1万1千件を超える応募の中から選ばれたキャストは、1年間に渡り“エコール『レ・ミゼラブル』”と呼ばれる学校で、発声、身体表現、歴史的背景など『レ・ミゼラブル』を上演するため、登場人物を演じるために必要なあらゆる事を身につけて、その初日を迎えました。
その全役オーディション、そして“エコール『レ・ミゼラブル』”の伝統は現在まで引き継がれ、2007年6月〜8月に帝国劇場で行われる公演で20周年を迎えることとなり、その製作発表が11月13日に都内のホテルで行われました。
70名に及ぶキャストが揃い、150名のオーディエンスと報道陣を迎え、軽部真一フジテレビアナウンサーの司会でスタートした製作発表では、最初に20年間の歴史を振り返るダイジェストのビデオが上映されます。
これまでの上演回数は2141回、総出演者数は389名、1997年には初演から10周年で1000回公演を達成し、2005年には2000回を記念してのスペシャルキャストでの上演も行われるなど、多くの話題と感動を提供してきた『レ・ミゼラブル』は、今回が2年ぶりの帝国劇場公演となり、9月〜10月の福岡・博多座公演終了時には、その上演回数を2354回に伸ばすことになります。
続いて一足早く20周年記念公演が行われているNYの模様を、「日本の『レ・ミゼラブル』の母」と紹介された演出家アシスタントの垣ヶ原美枝さんがレポート。
NYでは3年前に一度クローズした『レ・ミゼラブル』ですが、今回6ヶ月の限定公演で10月29日よりプレビューがスタート、11月9日に初日を迎えたということで、スライドを交えたまさに最新の情報に、キャストも興味津々で聞き入ります。
現在、NYで公演が行われているブロードハースト劇場は、帝劇よりも小さいために大道具の収納など様々な工夫がされている事、そのため登場人物の出入りが変更されたり、オーケストレーションも一部変更になっている事など、ユーモアを交えた語り口にしばしば笑いも起こる会場。
さらに、ジャベール役のノーム・ルイスはアフリカ系アメリカ人であり、バルジャンを演じるアレクサンダー・ジェミニアーニは26才である事が紹介されると、突然山口祐一郎さんが「すみません、申し訳ない。」と立ち上がってお辞儀をして、会場は大きな笑いに包まれました。
その後は、出席した全キャストがアンサンブル(男性20名、女性16名)、プリンシパルの順に紹介されて、長く暖かい拍手が続きます。
さらにプリンシパルの34名は一言づつ挨拶を行い、緊張の中にも、それぞれがこの作品に対する熱い思いが伝わってきますが、その中で一番のざわめきが起こったのは、今回初めてコゼット役で出演する富田真帆さんが「『レ・ミゼラブル』の始まった1987年に生まれて、この6月に20才になります。」と自己紹介した時。
司会者曰く、「出演者に衝撃が走った。」瞬間となりました。
続いて行われたのは質疑応答。
「時代が変化しても、変わらないの作品の本質的な魅力と、なぜここまで観客の支持を得られたのか。」に答えたのは4人のジャン・バルジャン。
また、20年の歴史を持つ『レ・ミゼラブル』ならではのケースが、アンサンブルからプリンシパルになったり、年代によって役柄を変えて出演するキャスト。今回の主席者では、今井清隆さん、岡幸二郎さん、石川禅さん、安崎求さん、阿部裕さん、原田優一さん、知念里奈さんらが居り、それぞれに「経験者は感想を、これからの方は期待などを。」という質問に、その胸中を語ります。
そして最後の質問は別所さんに対して「今の様な時代に、将来を担う子供たちに向けて、この作品を通して伝えられるメッセージを一言でお願いします。」というもの。
しばし天を仰いで考えた別所さんは、「「一日一日を大切に生きる」ということだと思います。」と、きっぱり答え、満場の拍手を浴びていました。
ラストは、初参加のキャストを中心に劇中から3曲のナンバーが披露されます。
マリウス4人(泉見洋平、藤岡正明、小西大樹、山崎育三郎)のリレーによる「♪カフェ・ソング」。コゼット(辛島小恵)マリウス(小西大樹、山崎育三郎)、エポニーヌ(知念里奈)による「♪プリュメ街〜♪心は愛に溢れて」。そして最後の「♪ピープルズソング」では出席者70人全員による迫力の大合唱に、帝国劇場さながらのでスタンディングオベーションで観客が応じ、1時間半に渡る製作発表は幕を閉じました。
(この歌の場面は東宝サイトで、動画がご覧いただけます)
また、製作発表のあとには、ジャン・バルジャン、テナルディエ夫人、マリウス、エポニーヌの4役の方へのインタビューも行われ、改めて今回の舞台に対する意気込みや、20年という年月の重さなどに対するそれぞれの思いが語られました。
なお、この製作発表の模様、ならびにインタビューなどは順次動画で掲載する予定で、現在準備を進めております。
残念ながら、当日参加出来なかった皆様にも、その雰囲気が伝えられるようにしたいと思っておりますので、どうぞ楽しみにお待ちになってください。
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