当代を代表する人気劇作家・三谷幸喜の傑作二人芝居『笑の大学』。
今年1月には、『The Last Laugh』として英訳・翻案されて英国・ウインザー王立劇場で上演の後、3月まで英国4都市でツアー公演が行われて好評を博しました。
そして遂に演劇の本場、ロンドン・ウエストエンドにて来年1月よりロングラン上演が決定。その英国プロダクションが開幕に先駆けて来日し、7月22日まで東京・渋谷のPARCO劇場で公演を行っています。
英国での上演にあたっては、PARCOと共にトニー賞、オリヴィエ賞受賞の敏腕プロデューサー Bil Kenwright
が製作。日本人作家の作品をロンドンのコマーシャル名興行を手掛ける一流プロデューサーが、ロングランを狙った英語プロダクションで上演するという、日本演劇界にとって輝かしい画期的な企画となりました。
出演は喜劇一座の座付き作者に、TVドラマ「The Office」や映画「Love Actually」で日本でも人気がある
Martin Freeman、検察官役は、イギリスの長寿コメディ「オンリー・フール&ホース」や映画「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」などでお馴染みのベテラン俳優・Roger
Lloyd-Pack、実力派コメディ俳優二人の競演が実現します。
今回の上演に当たっては、三谷氏自身がインターナショナルヴァージョンとして改訂したものを英訳し、それをさらに脚色して上演台本を製作。時代・場所の設定が戦時中の日本から、どこでも、いつの時代でも起こり得る話ということで、具体的な場所とか時代設定がなくなったものの、「戦時中に笑いなんかいらないだろう、不適切」という検閲官と、「こういう時代こそ笑いが必要なんだ」という作家がぶつかりあい、検閲官が出す無理難題な注文を乗り越えて行く筋立ては全く一緒で、多くのエピソードもそのまま残されています。
1月〜3月に行われた英国公演では、「とても大きな成功を収めて、本当に椅子から転げ落ちるくらいの大きな笑いが何回も起きました。それだけではなくて、普遍性を持つテーマまで深く掘り下げた、非常に深みのあるお芝居だという評を頂いています。イギリス人の観客は笑えて、同時に考えさせらるという芝居が大好きなので。」と語る英国のプロデューサー。これまで日本の演劇といえば、歌舞伎かニナガワのような「古典・様式美」や、非常にシリアスなイメージが強かった英国の観客にも、日本の喜劇は違和感無く受け入れられたようです。
そうした英国での観客の反応に日本側のプロデューサーも
「笑いは日本と殆ど一緒で、同じところで受けていました。台本だけだと「大丈夫かな」と思っていた部分も実際演じられると笑えましたし、三谷さんが創った設定を英国の俳優が演ってウケているのを観ると嬉しいかったし、三谷さんの笑いが世界でも通用することを実感できて誇らしかったですね。」と、十分な手応えを感じた様子。
そして今回の来日公演についても「三谷さんの笑い、日本人の笑いが世界で通用することを日本の観客に実感して欲しいし、それをウエストエンドより早く実感できる機会だと思います。三谷さんが世界に受け入れられる作家になったことを実感出来て、三谷ファンは勿論嬉しいと思うし、「三谷さんが創ったこの設定をイギリス人が喋っているよ、そして面白いじゃん、日本と変わらないよ。」ということが解って貰えると思います。」と、その意義を語ってくれました。
その三谷氏は英国での上演を観ていないため、今回の日本公演で演出家やキャストと初めて顔を合わせるとの事。「三谷さんに観て貰うために来たような部分も有って、会えるのを凄く楽しみにしているのと、ドキドキしている。」と言っている英国のプロダクションと、それに対する三谷氏の反応は、7月15日の終演後に行われたトークショーで語られるのですが、こちらについては改めて掲載を致します。
少なくとも半年以上のロングランを狙うために、敢えて開幕を来年1月からに設定したという、英国・ウエストエンドでの公演。その間を縫って実現した今回の日本公演を見逃すと、日本の演劇史の新たな一ページを見逃すことになるかも知れません。
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