中国の北、ロシアの南に位置するモンゴル国。
親日的な国としても知られ、2006年8月には当時の小泉純一郎首相が同国を単独訪問、2007年にはモンゴル国から大統領が来日され、昨年の夏には皇太子殿下が同国を訪れるなど、両国間での活発な交流が行われています。
横綱の朝青龍や白鵬を始めとして、多くの大相撲力士を輩出している国であることでご存知の方も多いでしょう。
また、豊かな牧草地に恵まれていて、どこまでも果てしなく続く草原と砂漠を家畜の世話をしながら移動し、ゲルで生活する遊牧民の姿をイメージされる方も居られるかも知れません。
そのモンゴルを13世紀初頭に統一しモンゴル帝国を創設した“ジンギスカン”。日本でも有名なこの英雄の姿を描いた舞台『ジンギスカン』は、牧逸馬氏の原作を窪田篤人氏が脚色、1986年にはミュージカルの要素を取り入れた新脚本が創られて松平健主演により明治座で上演されました。
その後、1991年の名古屋・大阪に続いて1992年には日中国交正常化20周年記念公演として中国・北京での上演が実現、1997年には再び東京での公演が行われています。
そして2008年新春、総合演出に市川猿之助氏を向かえ、キャストも一新して新たな『ジンギスカン』が誕生。
今回、主役のテムジン=ジンギスカンを演じるのは、平幹二朗を父に、佐久間良子を母に持ち、最近では映画「茶々-天涯の貴妃-」やNHK大河ドラマ「蔦姫」などにも出演する若手のホープ、平岳大。歌あり殺陣回りありのハードな役どころに挑む平さんは、「僕が言うのもなんですが、自分では努力したつもりです。一幕は体力勝負で駆け抜ける感じで、最後に見得を切るところでは腕が震えるくらい疲れる大変な殺陣なんですけれども、段々身体に入ってきて、流れるようになっています。」と、これまでの稽古の積み重ねに自信をみせます。
その相手役となるカルカは、相田翔子(〜1/16)紫城るい(1/17〜)のWキャスト。「皆で心を一つに頑張ってきたものが、お客様に伝わればいいなと思っています。今回、「歌は語って欲しい」という演出家の要望もありましたので、言葉を自分の中で租借しながら伝えるような歌い方に務めています。」という相田さんと、前半では長老の娘ジュべも演じる紫城さんは「一つの作品の中で二役をさせていただくという事は、凄く幸せな事だと思っていますし、後は信じて演るだけという感じです。」は、それぞれにカラーの違ったヒロインを演じてくれそうです。
共演は他に、ジュべのWキャストとして勝野雅奈恵が1月17日から参加。
そして、「全体が盛り上がってきました。ご覧の通り平ジンギスカンは大きいので、芝居も歌も迫力がとてもあると思っています。芝居がモンゴルの話ですから、出来たらユーラシア大陸を感じさせるような舞台になるように、皆で一致団結してやりたいと思っています。」と語る榎木孝明さんが演じるのは、ジンギスカンの義兄弟でありライバルでも在るケレイト族の族長ジャムカ。
さらに、ジンギスカンと相対するナイマン族の武将サングンを演じる伊吹吾郎さんは「映像では悪役というのは過去にも経験があるのですが、舞台では初めてなんですよ。いわゆる悪というよりも、戦争ですし一方のナイマンという国の総大将ですから、ワルと言ってもちょいと品の有るワルではないかと思って演っておりますし、そう言った意味で初めてな事と、このサングンという役にワクワクしております。」と、いつもとは違った役どころを楽しんでいる様子。
そして、「私はジュべという長老なんですけれど、この若さで長老を演る訳ですから、相当勉強しないとダメですね。頑張らないと。とにかく平さんのテムジン=ジンギスカンは素晴らしいです。是非観ていただきたいと思います。」と語る若林豪さんや、「これだけの素晴らしい方の中に出演させていただいて本当に幸せな気持ちです、ただひたすらにテムジンを愛して、深い母親の愛情が皆様に感じていただければいいなと思っています。私は一幕の最後に死んでしまいますので、後はずっと楽屋で皆さんの演技を見守ろうと思います。」と言う榛名由梨さんなどベテランが脇を固め、初春の銀座にモンゴルの草原を渡るような風を吹かせます。
「普通の生活の間の距離感ではなく、草原で皆が喋っているような感じですので、日本に居るよりも二倍も三倍も広いのを意識して芝居をして、力強さだけは説得力があるように務めていきたいと思います。」と今回の舞台に対する抱負を凛々しく語った平さんは、「若林さんから若手に至るまで、一ヶ月間一生懸命稽古してきました。ジンギスカンに対する皆さんのイメージは色々あると思いますが、これが僕たちのジンギスカンです。1月28日までル
テアトル銀座で皆頑張っておりますので、是非観に来て下さい。よろしくお願いします。」とアピールしていました。
初日に先駆けて行われたプレビュー公演にはレンツェンドー・ジグジッド駐日モンゴル国特命全権大使も駆けつけて、主演の平さんに花束を贈り、「2007年はモンゴル日本外交関係樹立35周年と言う節目の年であり、モンゴル国においても日本年が開催され、両国間の交流は一層促進したと確信しております。モンゴルと日本のパートナーシップにおいて文化芸術交流は重要な役割を果たしていると思っております。愛と勇気、自然の中に暮らす遊牧民の知恵を語るこの素晴らしい物語が、日本で再び公演されます事は両国の友好親善の更なる発展に貢献するものだと期待しております。『ジンギスカン』の開催にあたりまして、関係者の皆様に感謝を申し上げ、公演のご成功をお祈り申し上げます。」とスピーチを行うなど、掛けられた期待の大きさが感じられるこの作品。
出演者50名、スタッフ50名が創り上げる、モンゴルの大草原を舞台にした愛と勇気の超ロマン大作。『ジンギスカン』は、冬真っ只中の日本に熱い心と風を運んでくる舞台と言えそうです。
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