28年目を迎えたトーク番組「徹子の部屋」を始め、クイズ番組やコメンテーターなど数々のテレビ番組に出演、またユニセフ親善大使として世界各国を訪問したり、「社会福祉法人トット基金(日本ろう者劇団)」設立や数々の著作を発表するなど八面六臂の活躍をみせる黒柳徹子さん。
その活動フィールドは多岐に渡る黒柳さんですが、女優としても毎年舞台に立ち続け、青年劇場と劇団NLTに隔年ごとに客演して全国の演劇鑑賞会を巡演したり、銀座セゾン劇場で89年から始まった海外コメディシリーズ(2000年以降はパルコプロデュース公演/ル
テアトル銀座)で毎年主演を務め、1996年には『幸せの背くらべ』と『マスター・クラス』で毎日芸術賞、読売演劇大賞の大賞と最優秀女優賞を受賞していることは意外に知られていないようです。
その黒柳さんの舞台女優としてのライフワークとも言うべき「海外コメディシリーズ」は今年で15周年を迎えますが、その節目の年を飾るのは『おかしな二人』『サンシャイン・ボーイズ』『第二章』など数々の名戯曲で知られる喜劇の王様ニール・サイモンの最新作『ローズのジレンマ』。
共演者にダンディな華やかさと確かな演技力を併せ持つ岡田眞澄さん、昼ドラマ「牡丹と薔薇」でも話題となった実力派女優・川上麻衣子さん、ミュージシャン・俳優のみならず最近ではキャスターとしても活躍しているうじきつよしさんと、15周年にふさわしい豪華な顔ぶれが集まったこの公演の舞台稽古が、10月8日にル
テアトル銀座で行われました。
ローズ(黒柳徹子)は、かつてピュリツァー賞を受賞した大物女流作家。
しかし5年前に最愛の恋人ウォルシュ(岡田眞澄)を亡くして以来スランプに陥り、今や破産の危機。助手アーリーン(川上麻衣子)は、贅沢な暮らしを切り詰め、新作を書かせようと必死だが、ローズは毎晩のように現れるウォルシュの幽霊との奇妙な甘い生活に浸っている。
ある日ウォルシュは、あと2週間で自分が消えてしまうと告げ、自分が未完成のまま遺した小説を若手作家クランシー(うじきつよし)と組んで仕上げ、ウォルシュの遺作として出版して莫大な印税を手に入れようと提案する。
果たして、ローズとウォルシュの作戦は成功するのか?
舞台稽古終了後に会見に臨んだ黒柳さんは「海外コメディにこだわるのは、まず喜劇が好きなこと。面白い作品が沢山あってその中から選べるということ。日本のオリジナルにも出たいと思っていますが、準備に時間が掛かるのでずっと前から脚本が無いと出来ないんです。今回も稽古は一ヵ月半ですけれど、その前の半年くらいから勉強して役作りをしました。」と、じっくりと舞台に取り組む心構えを語ります。
「脚本を読んで、アメリカの女性は戦いながら生きて行く強さがあると思った。」と語る黒柳さん。「ニール・サイモンはこれまで老人を扱った喜劇を多く書いてきましたが、“死”を扱ったのは初めてだと思いますし、77歳のサイモンも老境に入って、こういうスタイルの作品を書きたいと言う思いはずっとあったと思います。岡田さんの役が周りには見えずに自分にだけ見えるギャップが面白いのですが、次々と喋る台詞は多いし、普段使わない言葉なのでやりとりが大変で、テープに入れて車の中で運転しながら何回も聞いて自分に叩き込みました。」「衣裳は各場面ごとに8回替えますが、高いヒールを履いて階段を走って上がって早替りするので運動になります。岡田さんは幽霊なので、あちらから出たり、こちらから出たりで大変なんです。」と、裏での苦労も少し明かしてくれました。
最後に見どころを聞かれ「笑えるということ、死というものをはっきり書いているけれども、この芝居を観るとあまり恐れなくても良いかなと思えます。恋人の有る方も無い方も、未亡人の方も、幸せな方もそうでない方も、どなたにでも観ていただいて、共感していただける2時間半だと思います。」と自信のコメントで締めくくった黒柳さん。
ほぼ毎年新作に挑戦してきた15年間の集大成とも言える今回の『ローズのジレンマ』。洒落た笑いと心温まる愛の物語は、客席も優しい気持ちになれる作品と言えそうです。