2003年8月、パルコ劇場で上演されて様々な物議をかもし出した問題作『ウィー・トーマス』(原題:THE
LIEUTENANT OF INIISHMORE)。
この舞台は、長塚圭史が始めて翻訳作品の演出を手掛けた事でも話題となりましたが、そのマーティン・マクドナー作×長塚圭史演出による第二弾公演として、前作を上回ると話題の最新作『ピローマン』(原題:THE
PILLOWMAN)が2004年11月6日より同じくパルコ劇場で上演されることとなり、舞台稽古が5日に行われました。
『ピローマン』は2003年11月から2004年4月まで、ロンドンのナショナル・シアターでレパートリー上演され、2003年度ローレンス・オリヴィエ賞を受賞、2004年9月からはブロードウェイで上演されている注目作。
前作同様、笑うしかないほどの悪意とおばかさ、不毛とナンセンス、罰当たりなアナーキーさを満載した、再び話題沸騰必至の作品です。
演出の長塚圭史は阿佐ヶ谷スパイダースでの作・演出・出演を始め、近作では『真昼のビッチ』(作・演出)『夜叉ヶ池』(脚色)などの大活躍で注目を集める、若手を代表するクリエーターですが、今回の出演者には、その長塚が信頼し、今舞台やテレビでその個性が輝いている男優が4人揃いました。
まず、真摯な文学者なのか、ただのイッちゃっているヤツなのか良く解らない作家カトゥリアンに、劇団「離風霊船」出身で、『きらめく星座』『おかしな2人』『ダム・ウェイター』などの舞台、「すいか」「エースをねらえ!」「世界の中心で、愛をさけぶ」などのドラマ、そして「トリビアの泉」などのバラエティでも人気を博している高橋克実。
脳に障害を持ち、天真爛漫なのか邪悪なのか良く解らない兄のミハイルに、早稲田小劇場を経て様々な劇団に客演。『スラップ・スティックス』『カメレオンズ・リップ』『ミッドサマー・キャロル』など人気作に連続して出演し、映画・テレビなどでも活躍の山崎一。
この二人を取り調べる胡散臭くて、有能なのか無能なのか良く解らない刑事トゥポルスキに、三谷幸喜作品『罠』『ラヂオの時間』『笑の大学』などに出演し、最近では『ラ・テラス』『阿修羅城の瞳』『ビリーとヘレン』などの舞台出演や、「劇団・ダンダンブエノ」のプロデュースでも気を吐く近藤芳正。
その部下で凶暴なのか心優しいのか良く解らない刑事アリエルに、「iOJO!」(オッホ)退団後、98年以降の「阿佐ヶ谷スパイダース」全公演に出演。さらに「宇宙レコード」「ペンギンプルペイルパイルズ」などへの外部出演や、『ダブリンの鐘つきカビ人間』『人間風車』など常に小劇場でひっぱりだこの人気の中山祐一朗。
舞台稽古を前にインタビューに応えた高橋克実さんは今回の舞台について「凄く良い話で、インパクトは有るけどベースに流れているものは優しいので、それがお客様にどう渡せるかですね。」とコメント。
途中の休憩時間以外はずっと舞台に出ているということで、「今まで経験したことが無く、集中力、体力が必要となるので、朝から晩まで規則正しい生活を何年か振りでやってます。お酒も殆ど呑んでないし、ストレッチなどもやって、身体に良いし健康になってきました。・・・どうしてこれが続かないんだろうと思います。」と苦笑いを浮かべます。
演出の長塚さんや、共演者について「中山君以外はこれまで仕事もしていますし、昔からの知り合いですからチームワークは良いですね。この中では中山君が一番若いんですが、気を遣う人で、4人良い感じでまとまっています。長塚さんとも仕事は初めてですが、酒を呑んだりする知り合いで、丁寧で細かい人ですね。演出の時も言い方が気持ち良くて優しいのでスッと入って解りやすいんです。」と、纏まりの良さを強調した高橋さん。
「今、若い人に大人気の長塚さん演出で、前回の『ウィー・トーマス』とは全く毛色が違う作品だと思いますので、そのギャップも面白いと思います。」と締めくくって、3時間出ずっぱりの舞台に向かっていきました。
今をときめく、くせものの個性派俳優の競演による、マーティン・マクドナー×長塚圭史の超過激問題作『ピローマン』。
不穏当すぎて笑わずにはいられない現在を映す鏡のような舞台は、この秋の観逃せない一本となりそうです。