シアターフォーラム    
シアターフォーラム 岡田達也・上川隆也・大内厚雄で再演 『TRUTH』製作発表

 1985年に早稲田大学の演劇サークル出身者により創立され、“誰が観ても分かる”“誰が観ても楽しめる”をモットーに、“人が人を想う気持ち”をテーマに、成井豊氏の新作上演をベースに活動を続けて、今では多くのファンを持つ演劇集団キャラメルボックス。
 2005年には劇団創立20周年を迎えますが、その記念公演として再演の要望が高かった作品の連続上演が行われることになり、第一弾となる『TRUTH』の製作発表が12月17日に都内で行われました。

 この『TRUTH』初演は1999年で、山本周五郎氏の小説「失蝶記」を題材にした成井豊氏と真柴あずき氏の共同執筆による劇団初の悲劇、しかも時代劇でしたが、チケットは即日完売して動員記録を塗り替えたという作品で、劇団のサポーターズ・クラブのアンケートでも圧倒的な支持を得て再演希望演目の第一位となり、今回、上演の運びとなりました。


 製作総指揮の加藤昌史さんの司会で始まった製作発表会見に出席されたのは、出演者の岡田達也さん、上川隆也さん、大内厚雄さん、そして作・演出の成井豊氏の4人。物語の軸となるキャストの3人は初演と同じ役での出演となります。

 最初に、出席者から、この作品に対する思い出、今回の再演への心意気として、
岡田達也さん「今のところ主演の弦次郎を演じる予定になっておりますが、稽古中に上川さんに殺されなければ本番を迎えられるかな、という感じです。ですので怪我の無いように初日が迎えられるように頑張りたいと思います。」
上川隆也さん「2年振りの所属劇団への出演と言う事で、個人的にはいかに楽しむかを考えて取り組んで行きたいと思っております。」
大内厚雄さん「これは5年前の作品で、5年間には色々あって歳も重ねましたので、前回よりもっと勢いもあって、でも深くて、という作品になればいいと思っております」
成井豊氏「アンケートで上位になった作品を再演するのを20周年の目玉にしようと考えた時、多分一位は『TRUTH』だと予想して、上川君にも話をしていたのですが、ぶっちぎりの一番でした。初演の時のお客様の反応が圧倒的で、劇団ではいつも予想動員数よりも少し多目のキャパシティを用意するのですが、この公演はほぼ即日完売で、本番中にもどんどんお客様が来て大変な状況になってしまった公演です。19年間やってきた中で、お客様の反応が最も大きかったのがこの公演でした。
中身はキャラメルがいつもやっている「冒険・ファンタジー・SF」とは毛色が違って、2年に一度やる幕末劇で――今まで5本やっているのですが、――その中でもハッピーエンドにならない、「初めて悲劇に挑戦する」といってやったお芝居です。つまりキャラメルの本流とは違うお芝居なので、初演では、初の悲劇でいつもと違うことをやるということで本当に懸命に取り組んだ挑戦でした。その挑戦心、冒険心がお客様に評価されたのだと思っています。手応えも充分に有りました。ただ、5年前の作品の完成度、お客様の反応とこれから戦っていくプレッシャーは有ります。
再演に当たっては、メインの3人は外せないと考えました。それ以外は一部変えていますが、脚本・演出は変えず、5年間にそれぞれが培ったものをぶつけて行けば、きっと初演を超えられるお芝居を創れるんじゃないかと考えています。」
とそれぞれのコメントが有った後、報道陣との質疑応答に移ります。

●再演へのプレッシャーは感じていますか
大内さん「同じ役を演るので非常に有ります。それが無いと成長しないので、良い事だと思っています。」
岡田さん「どんな芝居を演る時にもプレッシャーは有りますが、お客様に大きく支持された作品は、それを超えなければやる意味が無いと思います。ただ難しいのは、演劇は数字が残る訳ではないので、お客様の気持ちの中で「初演より良くなっている」と思われるにはかなり努力しなくてはならない、と思ってプレッシャーを感じています。」
上川さん「現時点ではプレッシャーは無いですね。むしろ楽しみの方が大きく上回っています。5年間経ったので、お饅頭で言うと、皮は一緒だけど、アンコはきっと変わっていると思うんです。ですから口にして頂ければ。きっと違った味わいになると思います。」

●20周年を振り返ってと、これからへの思いを
成井氏「19年前にキャラメルボックスを作った時は、大学を卒業して教員になって県下でも有名な教育困難校に赴任を命じられ、その世界であまりにストレスが溜まってしまったので、一度諦めた演劇を週一回の社会人サークルとして、大学の後輩の加藤と、阿佐ヶ谷と荻窪の地域区民センターを借りてお芝居の練習をすることから始めました。23、4歳で、未来とか野望とか何も無い、ストレス解消の趣味でした。それが、あれよあれよと大きくなって、19年前には全く想像もしないし夢見てもいなかった場所に今、私は立っています。このような記者発表が出来る、サンシャイン劇場で一ヶ月の公演が出来るという事は19年前どころか10年前でも想像していませんでした。ありきたりですけれども、本当にやりたいことが職業になったので、もしかしたら色んな苦労が有ったのかもしれませんけれども、辛いとか止めたいと思った事は過去に一度も無くて、辛いこと苦しいこと全てが演劇を、劇団をやって行く上での悩みでしたから、別に辛くもなんとも無いんですね。何か困難や事件が起こるたびに、「ようし、どうやって乗り越えてやろうか」ってほくそえんでいて、困難が起きない時期は、「俺たちで困難を仕掛けてやろうぜ」って東北新幹線の中でお芝居をやったりとか、役者が嫌がりそうなことを進んで仕掛けてきました。そんな風にして過ごして来た19年ですので、振り返ってみて、悲しい辛いという事は無いし、良くやってきたとも思わない。楽しいことをやって来たに過ぎないですね。
これから・・・東京に2000の劇団が有るといわれている内、プロデュース公演を除く劇団では、キャラメルボックスは一公演にお客様に来て頂く人数はかなり多い方の劇団になれたのですけれども、それでも『TRUTH』の初演は4万4千人で、首都圏にお住まいの2000万人のほんの一部に過ぎない。そう考えると、もっと多くの人に観て頂きたい。キャラメルボックスを未だにご存じない方が殆どで、その方が劇場に足を運んで頂けたら楽しんで頂けると思うので、その人たちとこれからもっともっと出会って行きたいと思います。そのためには、今までは宣伝をしてこなかった、口コミでお客様が広がってきましたが、これからは宣伝と言うかもっともっと色んなところに劇団員が飛び込んでいきたい。上川は既にやっていますが、他のメンバーも外の世界にどんどん飛び出して行きたい。そういう風に考えています。」
上川さん(15年目)「直接経営に関わっていた訳ではないので(場内笑)その大変さみたいなものは全然身に染みていないのですが、僕が入団した当時は観客動員が倍々ゲームのように増えていった時期でもありましたし、この劇団にいることを心底誇りながら在籍していた覚えがあります。その劇団が20周年を迎えられたことは、劇団員として心から嬉しく思いますし、その時に自分が居ることも、何となく誇らしいです。
これからは、これからの話で、何が有るか分らないのが本来でしょうし、それを真正面から見据え続けるしかないと思っています。」
岡田さん(13年目)「僕は20年の中の13年なので、振り返る程のことは無いんですけれども、ただ一生懸命、劇団の走っているスピードに付いて僕も走ってきた、ということでしかないんです。この劇団は止まると死んじゃうんじゃないか、と思うくらい走り続けるんですよ。あまり息を吐いている暇が無くて、「気が付いてみれば10年以上自分もやったんだ」というのが正直な感想です。
これからもこの劇団は走っていくでしょうし、――どこまで付いて行けるか解らないんですけれども、――出来る事なら20周年と言うのはただの通過点になると良いな、と思っています。30周年、40周年を迎える日がくれば幸せだと思います。僕は基本的にお芝居は次の公演を観たいと思って貰えるものを演りたいと思っているので、それがずっと続けていければ30年、40年は不可能な数字ではないと思っています。これからも今と変わらず走っていけたら良いと思います。」
大内さん(9年目)「(来年が)10年目で僕も半分なんですが、前の発言の間に、劇団に居ての自分とか、これからの劇団と自分とかを考えていたのですけれど、――振り返るのも好きなのですけれど、――意外と振り返っていなかったり、今後のことも――結構僕は考えるのは好きなんですけれど、――意外と考えてなかったりするという、つまり、今、真剣に一生懸命生きて、――不可能なんですけれど、――一日一日、「ああ、今日も頑張って生きたんだよね」とういう勢いが有れば、劇団も芝居も含めて、自ずからガンガンいけるんではないかと思いました。」
加藤氏「私は特に有りません。一応20周年が来たからやるだけなので、特に20年やったからどうこうと言うのは無いのです。毎日同じ事をやり続けているだけで、お客様と接して芝居をやり続けていくことの通過点に過ぎないものですから、何かこうやってはしゃいでいるのが不思議な気分です。自分でこんなことをしておいても、不思議な気分です。これからも同じペースで進んでいきます、と言うか、もっと凄いスピードで進んでいきます。」

●役柄とストーリー、時代背景を教えてください
成井氏「舞台は幕末の江戸ですね。信州の上田藩の江戸藩邸が舞台で、そこに勤めている上田藩士6人が主人公です。その6人は同じ道場に通っている道場仲間でも有るんですけれど、――この席に居る3人もそのメンバーです。この男たち6人が、勝海舟の暗殺を狙っているという噂を聞いて、その暗殺を未然に防ごうと動き始める。その中で友情とか裏切りが有るという物語ですね。」
岡田さん「上田藩士6人の中で、簡単に言ってしまえばリーダー格というのが弦次郎と言う役なんですけれども、6人がこれからの日本の事や勝先生の事などを話しながら日々暮らしている中で、とある事故がおきて弦次郎は聴力を失ってしまいます。で、その事を引き金に6人の関係と言うものが違う方向に走ってしまうということです。基本的には6人の中のリーダー的役回りを演じているのが弦次郎です。」
上川さん「「友情や裏切り」の中の裏切り担当です。その一言に尽きると思います。」
大内さん「僕は弦次郎と幼馴染で、ひょんなことからリーダー格の弦次郎が病気のせいで出来なくなってしまったので、「俺だったら」という事で任される訳ですが、馬鹿正直に無骨に生きている男の役なので、結局リーダー格ではないのに任されて、そこで崩れていくんです。そういう中で不幸にも親友に殺されてしまいます。『TRUTH』は、病気や親友を斬ってしまった重荷を背負った男の話で、その中で最終的に何かしらが有るのですが、英之助はその当時の男の友情と言うか、子供の時からの友情の強さと言うの大事にしている役どころです。」

加藤氏「この3人の役どころというのは日常の3人と似ているところがありますね。当て書きですか」
成井氏「座付き作者だから、当然当て書きですね。稽古場で腹筋とかエアロビクスをやるんですけれど、そのリーダーは岡田達也がやっていて、いつも不機嫌な顔をしてやっているのが大内厚雄で、稽古場でギャグを飛ばすのが上川ですね。だから岡田達也の弦次郎がリーダー、大内の英之助というのがサブリーダー、一番年上なのにふざけたことばっかり言っているのが上川が演じる鏡吾です。」
加藤氏「原作があるわけですよね。」
成井氏「新潮文庫から出ております山本周五郎さんの「失蝶記」が原作ですが、かなり翻案してしまったので、脚色ではございません。原作者の方の許可を頂いて、原案として使わして欲しいという事をお願いしてあります。」

成井豊
成井豊(作・演出)
岡田達也
岡田達也
上川隆也
上川隆也
大内厚雄
大内厚雄
加藤昌史
加藤昌史(製作総指揮)

成井豊、上川隆也、岡田達也、大内厚雄

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「TRUTH」ちらし表
ちらし表
「TRUTH」ちらし 東京公演
東京公演
「TRUTH」ちらし 大阪・神戸公演
大阪・神戸公演

 ということで、キャラメルボックスとしては今まで殆どやってこなかったという製作発表会見は終了し、この後は出席者の写真撮影、そしてインタビュアーによる談話形式の取材が行われました。

 キャラメルボックスでは、この20周年を機に今後も製作発表会見を行って行く、とのことですので、これからもこうした形での公演情報がお届け出来るかもしれません。

 また、インタビューにつきましては、後日、動画での掲載を予定しております。
 こちらもどうぞお楽しみにお待ちください。



演劇集団キャラメルボックス 劇団創立20周年記念公演 (1)
  『TRUTH』

【東京公演】
  日程  2005年2月17日(木)〜3月27日(日)
  会場  サンシャイン劇場
  料金  5,500円(全席指定・税込)
  前売  2005年1月16日(日)
お問合せ  キャラメルボックス 03-5342-0220

【大阪公演】
  日程  2005年3月31日(木)〜4月3日(日)
  会場  メルパルクホールOSAKA
  料金  5,500円(全席指定・税込)
  前売  2005年2月13日(日)
お問合せ  キャラメルボックス 03-5342-0220

【神戸公演】
  日程  2005年4月7日(木)〜4月10日(日)
  会場  新神戸オリエンタル劇場
  料金  S指定席(1・2階) 5,500円  A指定席(3階) 4,500円
  前売  2005年2月13日(日)
お問合せ  キャラメルボックス 03-5342-0220

キャラメルボックス サイト  


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