1989年、52歳という若さでこの世を去った歌手、美空ひばりさん。
その歌唱力は他の追随を許さず、1946年、弱冠9歳でのデビュー以来、日本歌謡界の文字通りの“女王”として、歌のみならず映画・舞台においても多くの人々を魅了し、そしてその遺した歌の数々と共に、今もなお愛され続けているスーパースターです。
演歌をベースにしながら、様々なジャンルの歌を歌い続けた美空ひばりさんが、その生涯でレコーディングした曲は1,500曲、オリジナルの楽曲も517曲を数えます。
その数多くの名曲の中から12曲を選び、生前の美空ひばりさんと親交の深かった森光子さんが、メロディをバックに詩を朗読するCD「森
光子が読む美空ひばりの詩(うた)」が2005年6月17日にリリースされる事になり、その公開レコーディングが2月2日に行われました。
レコーディングが行われたのは、美空ひばりさんが大半の楽曲を録音し、通称「びばりスタジオ」とも呼ばれるコロムビア第1スタジオ。
40年前に建設され木の温もりが優しいこのスタジオも、コロムビア本社の移転で6月には取り壊される予定だそうですが、そこに美空さんが愛用されたのと同型のマイクがセットされ、着物姿の森さんがレコーディングに臨みます。
この日朗読されたのは、収録曲のうちの2曲。まず1988年1月に発売されて大ヒットを記録した「川の流れのように」(作詞:秋元康)。これはひばりさんの歳後のシングルであり、2000年には森光子さんの主演、秋元康氏の監督で映画化もされています。
そして1976年4月にシングルとして発売された「雑草の歌」。この歌の作詞は加藤和枝さん、つまり美空ひばりさん本人の作詞になる曲です。
朗読を終え、今回の選曲・監修にあたった音楽プロデューサーの加藤和也氏と会見に臨んだ森さんは「緊張しました。歌に関する仕事は、何もしなくても一遍に新人に戻れるんです。」とホッとした様子。長年に渡って公私共に親しかったという美空さんとは、映画、テレビなどでの共演を含め数々の思い出が有るそうですが、「病後の歌番組で「みだれ髪」の最後に思わず抱きしめた肩が細くなっていた」という話には、加藤氏が目を潤ませる場面も見受けられました。
美空さんとの色々な思い出の詰まったレコーディング・スタジオでの収録に「母はとても歌詞を大事にしていました。今回の朗読は、歌の中身がきっちりと解かって貰える機会だと思います。」と語る加藤氏。
「私でいいのかしらと初めは思ったのに、スタジオに入っているとドキドキも少し治まってきました。全国には沢山の美空さんのファンがおいでになりますけれど、一生懸命やらせていただいておりますので、どうぞお聴きになってください。」とコメントする森さん。
本年、2005年6月24日は美空ひばりさんの17回忌にあたります。多くのファンに愛され続け、永遠に輝き続けるメロディと言葉に、森光子さんが“朗読”というコラボレーションで新たな息吹を与えるこの試みは、ひばりさんの歌のまた新たな一面を私たちに見せてくれると言えそうです。