現在、東京・日比谷の帝国劇場で上演中のミュージカル『ラ・マンチャの男』。
1969年の初演以来の通算上演回数が、同一主演者によるミュージカルの日本最高記録を更新し続けていると言う、文字通り日本を代表するこの舞台ですが、今回は様々な記録、記念に彩られた上演となっています。
・2000回:この舞台で主役のドン・キホーテを勤める松本幸四郎さんは、この公演の千穐楽をもって1965年4月の『王様と私』(梅田コマ劇場)以来丁度40年をかけて、ミュージカル出演回数が2000回となります。
・35年:ブロードウェイ・マーティンベック劇場で日本人としてただ一人主演した『ラ・マンチャの男』から35年が経ちます。
・1086回:6月29日の千穐楽を迎えると、ミュージカルの同一主演者による日本最高記録を1086回まで伸ばすことになります。
・紫綬褒章受章:今春の叙勲で、松本幸四郎さんは紫綬褒章を受章されました。
・カスティーリャ・ラ・マンチャ州栄誉賞受賞:36年もの長きに渡りドン・キホーテを演じ続けた功績に対し、スペイン・カスティーリャ・ラ・マンチャ州政府首相、ホセ・マリア・バレダ・フォンテス閣下より、5月18日に名鉄ホールの舞台上で栄誉賞を授与されました。
松本幸四郎さんはこの作品について「『ラ・マンチャの男』は俳優の人生を語った作品で、僕はいつも「♪見果てぬ夢」の歌に助けられてきました。“人間にとって憎むべきことは、あるがままの人生に折り合いをつけて、あるべき姿の為に戦わないことだ”と言うテーマでもある科白に有るように、戦わなくてはいけないんですね。
そして演じ続けてきて、“夢とはただ語るだけのものではなく、夢とはただ夢見るだけのものではなく、夢とは、夢を叶えようとする、その人の心意気だ。”と言う思いが沸き起こって、それで36年演りつづけてきました。」と、その魅力を語ります。
この『ラ・マンチャの男』ではブロードウェイでも主演を勤めた幸四郎さんですが、「英語でくたくたになり、劇場から戻って眠ると、2ヶ月半の間、いつも目が覚めるのは夕方の4時でした。」と当時のエピソードを明かしながら、「これからもどんどん日本の俳優が進出して欲しい。」と後進にエールを送ります。
また、今回は長女である松本紀保さんが演出助手として幸四郎さんを支えますが、これは「これから10年、20年、50年と日本のどこかで、この『ラ・マンチャの男』を若い世代に受け継いで貰って、いつまでも上演して欲しい。」という思いがあってのこと。
とは言え「いつまで出来るか解からないが、声の出る限りは演じ続けたい。」と、まだまだ自身の意欲は充分な様子です。
「上演を何回もやらせていただけるのは、それだけお客様の支持が有るという事で、嬉しいし有り難いし名誉ですが、役者としては、最高の舞台が何回出来たか、という事が大切。現在の自分を愛さないで、将来の自分を愛する。チャップリンの言葉にもありましたが、次に演る『ラ・マンチャの男』が最高だと思っています。」と自らの心構えを語る幸四郎さん。
今回、スペイン・カスティーリャ・ラ・マンチャ州政府から贈られた栄誉賞では、スタッフを始め、当日のお客様にもドン・キホーテとサンチョの姿のバッジが贈られたそうで、「スペインのワインや料理は大好きなんです。今年の夏にスペインに行く予定があるので、食事の美味しい店を教えて貰いました。」と笑顔を覗かせていました。
この他にも、次女である松たか子さんがこの作品でデビュー(1995年6月青山劇場)して10年を迎え、この作品の原作「ドン・キホーテ」がスペインで出版(1605年1月16日)されて丁度400年という節目でもある今回の公演。
小泉首相が国会での質疑で「ドン・キホーテ」だと言われ、「大好きな話です。」と応じて「♪見果てぬ夢」の一節を引用して答弁を行ったというニュースも新聞を賑わせたほどポピュラーなこの作品。
皆様も劇場に足を運んで、明日の夢を信じる力を舞台から貰われてはいかがでしょうか。