主演は、これが退団公演となる専科の樹里咲穂さん。歌唱力、ダンス力に秀で、また女役までこなす幅広い演技力を持つ実力派男役として様々な名舞台を見せてきた樹里さんが、これまでの宝塚生活の集大成として挑みます。
相手役には数多くのヒロイン経験を通して進境著しい遠野あすかさん。
この二人を中心に、蘭寿とむさん、桜一花さん他、花組選抜メンバー26名、そして専科から特別出演の出雲綾さんが加わり、ユーモア溢れるオスカー・ワイルドの軽妙洒脱な世界を、日生劇場の舞台で華やかに、またコミカルに展開します。
製作発表会見の冒頭、挨拶に立った歌劇団の小林公一理事長は、「日生劇場では『風と共に去りぬ』から数えて4回目の公演になります。この『Ernest
in Love』は歌劇団が見つけ出してきた作品で、日生劇場では梅田とは違う雰囲気の作品としてお届けできると思っています。9月には日比谷界隈を宝塚一色で埋めたいと思います。」と力の入ったコメント。
また今回の脚本・歌詞・演出を担当する木村信司氏は「原作はオスカー・ワイルドの絶頂期に書かれた作品なのですが、19世紀のロンドンと言うのが分かり難いし、それを1960年にアメリカ人がミュージカルにしているということで、さらに分かり難い所がありました。しかし脚本や音楽を変えても構わないという事で、広い世代に分かりやすく受け入れられるミュージカルにしました。」と、今回の上演に至る経緯を語ります。
そして、「5月30日から月組の稽古が始まって、ストレートプレイの様に一場ごとに止めての本読みに時間を掛けてやっていますが、普通のリアリティを持って芝居をすると通過出来ない科白が有り、いろいろとやってみて、この原作は元々エリザベス朝演劇のように、男性が全部の役を演じても大丈夫な形で書かれていたのではないかと思い当たりました。つまり男性はより男性らしく、女性はより女性らしく演じる様に書かれているのがこの作品の魅力ではないか、と思いつきました。
「これはまさに宝塚歌劇ではないか!」と。女性が演る男役は男性よりも男らしく、娘役はより女性らしい理想像をとことん演じる事にこのミュージカルの面白さがあると思い、宝塚の正攻法でこのファンタジーに臨みたいと思っています。」と、雄弁に語る木村氏は、既に手応えを感じているようです。
次に挨拶に立った主人公アーネスト役の樹里咲穂さんは「この『Ernest
in Love』日生劇場公演が私の宝塚生活最後の舞台と言う事で、宝塚に居て今まで色々と沢山の海外ミュージカルに出させていただいたのですけれども、最後の最後にこのような、「私の個性に合っているかな!」みたいな、ちょっと明るくて軽いタッチのミュージカルに出会えたというのは本当に運がいいな、と自分で思っております。最後の日まで男役・樹里咲穂、そしてアーネスト・ジャックとして生きられればいいかな、と思っております。頑張ります。」
と、退団公演で適役を得て気合も充分な様子。
その相手役、グヴェンドレンを演じる遠野あすかさんは「私は木村先生とは御縁がありまして、昔も御一緒にやらせていただいたり、樹里さんとも御縁が本当にありまして、良くご一緒させていただいたので、とても幸せです。この幸せ感がお客様にも伝わる様に、毎日楽しんで演じられたらいいな、と思っております。宜しくお願いします。」
と、こちらは娘役らしいコメント。
さらに、アルジャノン役の蘭寿とむさんは「こんなにハッピーなミュージカルに出演させていただくのは初めてなので、自分自身とっても楽しみにしております。樹里さんの最後の公演にご一緒させていただけるというのもとっても嬉しいですし、普段からとびっきり明るい樹里さんに付いて頑張りたいと思いますので、宜しくお願いします。」
セシリイ役の桜一花さんは「私も皆様と、明るく楽しんで最後まで付いて参りたいと思います。宜しくお願いします。」
と、それぞれに公演に向けての抱負を語ります。
「チラシの写真を見ていただくだけでも、月組と花組の違いが理解出来ると思いますが、雰囲気と位置だけ決めて撮ったらこうなりました。宝塚はアンサンブル=廻りの雰囲気に合わせてが基本ですが、アンサンブルの中に個性が見えるのがこの写真にも良い意味で反映していると思います。
これはオフ・ブロードウェイの作品を日本でオンのサイズに創り直す冒険ですが、きちんとした喜劇を創りたいし、花組と月組でコピーの様な同じモノを創る気はありません。個性を発揮出来る作品ですし、パワフルな曲、パワフルな出演者の楽しい舞台を、肩の力を抜いて観ていただきたい。」と、熱く語る木村氏。
「如何に自分がこの物語を信じて出来るかがポイントですね。個性にあっているのは、パワフルで物事に対して積極的な感じが自分の個性に合っていると思いますし、観せるパワー、使うためのパワーに自分では共感出来るので、お客様にも観ていただいて共感していただきたい。」と、意気込みを語る樹里咲穂さん。
大阪に続き、陽気でお洒落なミュージカルの東京上演は、また一味ちがった魅力で観客を魅了することでしょう。