シアターフォーラム    
シアターフォーラム 森光子さん、文化勲章を受章

 『放浪記』『おもろい女』などに代表される数々の舞台を初め、今年はNHK80周年大型ドラマ「ハルとナツ 届かなかった手紙」のハル役でその存在感を示した女優の森光子さんが、平成17年の文化勲章を受章されることとなり、喜びの会見が行われました。


 文化勲章とは、科学技術や芸術などの文化の発展や向上に関して顕著な功績のあった者に対して授与される勲章で、昭和12年に第一回の発表があり、その後昭和23年第六回からは毎年の発表となりました。毎年11月3日の文化の日に、皇居宮殿松の間において天皇陛下より親授されます。

 受賞者は毎年おおむね5名ほどで、舞台関係では、昨年(平成16年)に歌舞伎俳優の中村雀右衛門丈が受章されたのを初め、近年では、山田五十鈴さん(平成12年)、森繁久弥さん(平成3年)、井上八千代さん(平成2年)などが受章の誉に輝いています。

森光子
喜びを語る森光子さん


 現在、東京・帝国劇場で上演中の『ツキコの月 そして、タンゴ』に出演中の森さんは、「いただけるとは本当に露程も思っておりませんでしたので、――どんな方でもお喜びでございましょうけれども、――「嬉しい」とか「素晴らしい」とか、形容詞を今探しておりますが、ひとつも見当たりません。何でなのかと思います。」と、受章の報には戸惑った様子。
 そして、「とにかく私は正規の演劇を最初から勉強したこともございませんし、学校も昔の小学校を出て中学に入って、夏休みに母が亡くなりまして一学期しか行っておりません。私の年齢でございますから、――当時はまだ敵国では無かったのですけれど、――英語なども殆ど習っておりませんし、本当にどこに私が当てはまる資格があるのだろうと、――内示をお受けいたしましてから日にちがございましたので、――ずっと悩んで参りました。そして親しい方にお話したかったのですけれど、「発表までは」と口止めをされておりましたので、それが一番辛いと言うか、嬉しい辛さではございましたが、今日の日を迎えまして一番今ほっとしております。今一緒に出ております帝劇のお芝居の仲間、共演者にも申しておりません。それもちょっと辛いことで、私が今日芝居が終わりまして、この発表の為に用意致しました着物を着ておりましたら、「何? 何?」と皆さんが聞いて参りました。明日、大入りパーティをしていただくので、その席で多分夕刊を見たりして皆知ると思いますので、それまでは言えません。こんな思いは本当に少女の時、学芸会で主役を演らせていただけると聞いて、「今は黙っていて」と言われた時くらいからでしょうか。嬉しい事でございますけれど、それ以上に誰方にも申し上げられなかったことを、今、その皆様に申し訳無いと心の中で謝っております。今日はすっきりいたしました。ありがとうございます。」と、常に周囲を気遣う森さんらしいコメントが続きます。

 「受章は私一人のものではないという気持ちが深くて、特に舞台に出ていると観てくださるお客様も前にいますし、共演者、スタッフ、お客様が一緒になって創ってくださる、その仕事で頂戴するのは申し訳無いと言う気持ちがします。でも、明日帝劇に行くと皆が喜んでくれると思うので、とても張り合いがあるし、素晴らしい事で嬉しいです。」と笑顔を見せた森さん。


放浪記、森光子
『放浪記』より
放浪記、森光子 『放浪記』より
『おもろい女』 段田安則、森光子
『おもろい女』


 この受章を知らせる電話を受けた際の事を、「その時に「発表はまだ先でございますので」と口止めをされて、「もしかして口が滑って喋ったりしたらお受けできなくなるんでしょうか。」とお聞きしたら、「いやあ、そんなことは」と電話の向こうで笑ってらっしゃいました。」と振り返って、「その時が一番嬉しかったですね。」という森さん。
 実は、今回の共演者の東山さんには、つい受章の報を漏らしてしまったそうですが、「「あ、そうですか」で終わりで、お祝いの言葉も無かったのはもしかしたらライバルだからでしょうか(笑)、でも、あの方が貰うにはまだ当分年月がございますね。そういう方ですから、さっぱりして宜しいんじゃないでしょうか。」と語る言葉からも、お二人の深い信頼関係が感じられます。


 今年は、約10年ぶりとなるシングル「♪月夜のタンゴ」が、『ツキコの月 そして、タンゴ』の初日でもある10月5日に発売され、オリコンチャートで初登場45位にランクインした森さん。歌手デビューして以来65年目にして初のチャートインや、85歳5ヶ月での初登場トップ50入りなど、史上最年長記録となりましたが、先日の会見でも「紅白歌合戦の行われる12月31日のスケジュールは空いています。」と語るなど、まだまだ衰えぬチャレンジ精神も、衰えぬ若さの秘訣の一つなのでしょう。


 なお、現在公演中の舞台『ツキコの月 そして、タンゴ』は、10月30日(日)まで東京・有楽町の帝国劇場での上演が行われた後、11月5日(土)から11月30日(水)までは名古屋・中日劇場にて公演が行われます。

 そして、既に発表されている、2008年1月〜3月の『放浪記』公演(“芸術座”の跡地に現在建設中の新劇場にて)に加え、『おもろい女』が、2006年3月に福岡・博多座、4月大阪・梅田芸術劇場、富山オーバードホールで上演、そして、『放浪記』が同じく2006年の9月に東京・帝国劇場、10月に名古屋・中日劇場で上演される事が、この日発表されました。

 いよいよ前人未到の『放浪記』2000回公演も視野に入って来た感の有る森さんですが、「舞台は演る度に新しい発見があり、まだまだ沢山の宿題を抱えています。」という前向きの姿勢と、「筋肉は鍛えていれば衰えを防げますから」と、毎日のスクワットとエアロバイクで維持しているという肉体で、まだまだ多くのファンに素晴らしい舞台を観せ続けてくれそうです。


『ツキコの月 そして、タンゴ』森光子
『ツキコの月 そして、タンゴ』より
森光子


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