シアターフォーラム    
シアターフォーラム 白石加代子『百物語』、第二十三夜「首」「栞の恋」がスタート

 夜、百本の蝋燭に灯を点し、一部屋に集まった人々が順番に怪談噺を語って、語り終える毎に一本づつ消して行く。そして最後の一本を吹き消すと、その暗闇の中で実際に怪異な事が起きる・・・と古来より言われる「百物語」。

 怖い話、不思議な話を集めたものとして、これまでにも多くの「百物語」が綴られて来ましたが、その「百物語」をタイトルとし、明治から現代の日本の作家の小説を中心に“恐怖”というキーワードで作品を選び、白石加代子が朗読するというスタイルで人気を博している公演、白石加代子『百物語』シリーズ。

 1992年6月に東京・岩波ホールで第一夜がスタートして以来14年、幻想文学の傑作作品から現代作家の人気作品まで、毎回2話〜4話ずつが岩波ホールを起点として全国で語られ続け、2006年1月28・29日には第二十三夜が同ホールで初日を迎えて、話の数にして七十九話を数えることになりました。


 今や白石加代子という女優のライフワークとも呼ぶべきステージになった『百物語』ですが、2月9日、10日の両日には東京・北千住にあるシアター1010で、今までの作品の中から人気の高い3作品を選りすぐった〜特別編〜と、最新作である〜二十三夜〜が上演されることとなり、公演を前にした過日、シアター1010内にあるアトリエで白石さんを囲んでの記者懇談会が行われました。

 今回上演されるのは、2月9日(木)の〜特別編〜が、浅田次郎「うらぼんえ」、阿刀田高「干魚と漏電」、和田 誠「おさる日記」の3作品。そして2月10日(金)の〜第二十三夜〜では、人気作家・夢枕獏の 「首」(「陰陽師シリーズ 龍笛ノ巻」より)と、2005年「花まんま」で直木賞を受賞した朱川湊人の「栞の恋」(「かたみ歌」より)」の2作品が朗読されます。


白石加代子 百物語 記者たちに囲まれ、シアター1010の公演チラシを手にして「素晴らしい図案だわ、このチラシ貰って帰ろう。」と嬉しそうな白石さん。まず、この『百物語』シリーズがスタートするきっかけについて、「当時は劇団(SCOT)を離れたばかりで仕事も無いので、「空いた時間に勉強会をしよう。舞台の上で小説を読んだらどうか。」というお誘いがあったのですが、「嫌よ。」と言ったんです。女優だから身体の中に科白を入れて、こなれてから舞台はやるもので、読むとどんなに稽古をしてもロレったりトチったりするだろうな、という思いは今でもあります。それでも、色んな案を出して来て、やることになって演出家・ホールが決まったんですね。
 最初は細々とやるつもりで、お客様もそれほどいらっしゃらないだろうと思っていました。「白石さんだから怖い噺が似合うだろう。」と言うので、怖い噺に的を絞ることになって、以前から有る「百物語」の題目で稽古して、蓋を開けてみたら岩波ホールに沢山のお客様が思いがけずに集まってくださいました。その後は舞台に関しては大過なく、百物語の女神が微笑んでいる感じの企画なんですね。お客様もそうだし、色んな意味で増殖して行くように広がって、立ち上げてからはいつも幸運がこの公演に関しては舞い込んでくる感じでした。」と、これまでの経緯を振り返ります。

 この公演の狙いを問われて、「B級エンターテイメントで行こう、という趣向ですね。演出の鴨下さんも、(製作の)笹部さんもこういうのが好きで、私も芸能・エンターテイメント志向で、日常は能天気おばさん(笑)なので、自分に合うものに巡り合ったんでしょうね。」と笑う白石さん。

 「自分で読みたいと言ったのは数える程しか無いんです。最初は「自分が出来ないものには手を着けたくないから、必ず作品選びには参加させて欲しい」って言っていたんです。けれど勝手に進んでいて、ある時(第七夜、1993年)岡本綺堂の「影を踏まれた女」で、淡いブルーの着物を着て、綺麗な岐阜提灯をぶらさげて、ふわーっと立って提灯を見上げながら喋る場面があって、私はそういうことがとても苦手で、吹き出しちゃう位恥ずかしい事だったんです。それが、演っている時に身体の何処にも力を入れずにふんわり立って、――普通なら隙間風が吹くんだけれど、――そのような事も無く自分が舞台の上で充足して体が不安じゃないことを発見したんですね。こんなもの絶対に出来ないと思っていた作品でそこに辿り着いた時に、「あ、他人さまが選んでくださるものでいいや。」って一編に雪解けしちゃった記憶があるんです。その時にはっきり決めて、今は下駄を預けていい加減です。」

 と語りますが、実は今でもスタッフが百冊以上の本を読んで選んだ作品を「黙読した方が充分面白い。これ以上面白くならないから、朗読したら馬鹿をみる。」と渋る事もしばしばだとか。
 しかし「稽古を始めると「だから良いと言ったじゃない。」となるんです。」と苦笑する関係者からの声も有り、どうやら、白石さんは元よりこの舞台を支えるスタッフの苦労と努力も並大抵のものでは無さそうです。

 「どの作品も、ただ普通に朗読したら、お客様は寝ると思うし、好きな時に自分で読む方が良いと思う。舞台の上でそれをどういうふうに持たせるか、と女優の責任を考えるプレッシャーがいつもあります。それを稽古と共にハードルを上げていただいて、「これほどの見世物に出来上がったか」と毎回思うし、どの作品もちょっとした自信作で飽きずに観ていただけるように出来上がっていると思う。」とこれまで積み上げて来た実績に自信を見せる白石さん。
 今回のシアター1010での公演も、観客の期待に背かない観応え、聴き応え充分の舞台となりそうです。


 「この冬の最中に怪談噺?」と思われる方も居られるかも知れませんが、この舞台、怖さはあくまでもスパイス。朗読という枠を超えた立体的な語りと動きは、他では感じられないインパクトを与えてくれるハズです。
“朗読”ではあっても百聞は一見にしかず。ともかくご自身でその世界を体験なさってはいかがでしょうか。



白石加代子
  
 『百物語』
  出演:白石加代子  企画・演出:鴨下信一

日程  特別編   2006年2月 9日(木) 19:00開演
第二十三夜 2006年2月10日(金) 19:00開演
会場  THEATRE1010
料金  S席 4,500円  A席 4,000円  千住席 1,010円
通し券(特別編+第二十三夜) S席 8,000円 (THEATRE1010チケットセンター・窓口のみ)
チケット THEATRE1010 チケットセンター 03-5244-1011
お問合せ  THEATRE1010  03-5244-1010


THEATRE 1010 サイト 
白石加代子 公式サイト 


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