「平成若衆歌舞伎」はこれまでに、若い役者が縦横無尽に大活躍を見せた旗揚げ公演の2002年『新
八犬伝』、ミュージカル風の序幕から、クライマックスまでをエネルギッシュに駆け抜けた第二弾『新・油地獄 大阪純情伝』、名作『義経千本桜』より、海で壮絶な死を遂げる勇将・平知盛にスポットを当て、時代物の重厚さに若衆歌舞伎らしい解釈を加え、古典歌舞伎の魅力を新しい切り口でみせた『義経と友盛』、そして昨年2005年には史上初となる平成若衆歌舞伎と宝塚月組の霧矢大夢を始めとする現役タカラジェンヌとの共演で、出雲の阿国率いる女歌舞伎から若衆歌舞伎への移り変わりをせつなくも華やかに魅せた『花競べかぶき絵巻』と、毎回古典に題材を採りながら新鮮な舞台を創り出し、今や大阪の暑い夏を彩る風物詩となりつつあります。
また、「平成若衆歌舞伎」が上演される梅田芸術劇場シアター・ドラマシティは、ミュージカル・ダンス・演劇などの公演でお馴染みの劇場ですが、本格的な歌舞伎公演を手掛けるのはこの企画が初めてで、花道も廻り舞台もセリもありません。
しかし、通常の歌舞伎公演ではあまり観られない照明や音響、出演者が客席を練り歩くなど劇場の特徴を生かした演出の工夫で、歌舞伎ファンはもとより、初めて歌舞伎に触れる方にも親しみやすい舞台となりました。
東京公演の会場となるル テアトル銀座も演劇・ダンス・パフォーマンスなど、スタイリッシュな舞台空間が多くの舞台ファンに愛されている770席の中劇場であり、シアター・ドラマシティでの高いクォリティがそのまま生かされる、新たな上方歌舞伎の発信地としてふさわしい劇場と言えるでしょう。
「平成若衆歌舞伎」第五弾となる今回の公演ですが、演目はこれまで同様にオリジナル新作となる『大阪男伊達流行』(おおさかおとこだてばやり)。音楽劇のエッセンスを加えた新作歌舞伎で、江戸時代の大阪を舞台に、エネルギーのやり場を探して生きている若者たちの熱い生き様が描かれます。
東京公演に向けて行われた制作発表会見では、監修の片岡秀太郎丈から「これまで古典から採って解りやすい新作創り、そして毎年違った舞台創りをしてきました。役者は舞台に立たないと、稽古だけでは上達しません。若い上方の役者のエネルギーを観て欲しいですし、上方歌舞伎の楽しさを東京の観客にも喜んでもらえる舞台創りをしたいです。」と力の入ったご挨拶があり、今回の公演に対する意気込みが感じられます。
また、第二弾の公演より作を担当している岡本さとる氏は今回の作品について、
「赤穂浪士義士外伝をベースに、市井に下りた18歳の橋本平左衛門を中心とした青春群像を描いた若い汗がほとばしるような芝居、歌舞伎版ウェストサイド物語にしたい。」と語り、若手俳優のパワーとエネルギーが溢れる舞台が展開されそうです。
さらに報道陣から上方歌舞伎の魅力に質問が及ぶと、
「これは実際に観ていただきたいのですが、「格好良さ」や「荒唐無稽なストーリー」が江戸の歌舞伎ならば、上方は、「義理人情」「世話物」の柔らかい歌舞伎でしょうか。特に上方訛りの情感や柔らか味、美しさ、悲しみ、可笑しさを観ていただきたい。」と答えた秀太郎丈。
「今回の公演もウェストサイド的なものに、独特の遊びを取り入れ、可愛さを大事に、言葉を大事にしていきながら、でも現代劇にはならないで、あくまでも歌舞伎として、観て楽しい、聞いて楽しい舞台にしたいと思います。」と、公演に向けて色々なアイデアを考えているようです。
今回は橋本平左衛門を演じることになる片岡愛之助さんも「上方の役者の底力を東京のお客様に観ていただきたいと思って頑張ります。」と力強いコメント。最近では歌舞伎での高い評価はもとより、歌舞伎以外の舞台や、テレビ、映画などにも活躍の場を広げている愛之助さんですが、自ら「同窓生のよう」と語る平成若衆歌舞伎には、一段の思い入れがある様子。
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