シアターフォーラム    
シアターフォーラム 上方の若手俳優が初の東京公演に挑む 平成若衆歌舞伎『大阪男伊達流行』

 歌舞伎界のホープ片岡愛之助を中心に、松竹・上方歌舞伎塾出身者など上方ゆかりの若手俳優が集結して、大阪の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで2002年より毎年公演を続け、関西演劇界の新しい波として注目を集める「平成若衆歌舞伎」。

 これまでの大阪での人気をひっさげ、東京初進出となる公演『大阪男伊達流行』(おおさかおとこだてばやり)が、5月19日から21日までの3日間(5公演)に渡り東京・銀座のル テアトル銀座で行われます。


 この「平成若衆歌舞伎」の土台ともなった上方歌舞伎塾とは、1997年春に上方歌舞伎復興のため、「上方のにおいのする」俳優を育てようと松竹が設立したもので、中村雁治郎丈を代表とする現役第一線の講師陣により37科目に及ぶ密度の濃い内容を2年間、大阪・道頓堀の大阪松竹座内の稽古場で学んでいます。

 そして、「その卒業生たちに若いうちから活躍できる場を」という主任講師の片岡秀太郎丈の熱い思いに、松竹株式会社が特別協力、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティを会場に、江戸時代に一世を風靡した「若衆歌舞伎」より名を取った「平成若衆歌舞伎」が350年ぶりに復活することとなりました。

 「平成若衆歌舞伎」はこれまでに、若い役者が縦横無尽に大活躍を見せた旗揚げ公演の2002年『新 八犬伝』、ミュージカル風の序幕から、クライマックスまでをエネルギッシュに駆け抜けた第二弾『新・油地獄 大阪純情伝』、名作『義経千本桜』より、海で壮絶な死を遂げる勇将・平知盛にスポットを当て、時代物の重厚さに若衆歌舞伎らしい解釈を加え、古典歌舞伎の魅力を新しい切り口でみせた『義経と友盛』、そして昨年2005年には史上初となる平成若衆歌舞伎と宝塚月組の霧矢大夢を始めとする現役タカラジェンヌとの共演で、出雲の阿国率いる女歌舞伎から若衆歌舞伎への移り変わりをせつなくも華やかに魅せた『花競べかぶき絵巻』と、毎回古典に題材を採りながら新鮮な舞台を創り出し、今や大阪の暑い夏を彩る風物詩となりつつあります。

 また、「平成若衆歌舞伎」が上演される梅田芸術劇場シアター・ドラマシティは、ミュージカル・ダンス・演劇などの公演でお馴染みの劇場ですが、本格的な歌舞伎公演を手掛けるのはこの企画が初めてで、花道も廻り舞台もセリもありません。
 しかし、通常の歌舞伎公演ではあまり観られない照明や音響、出演者が客席を練り歩くなど劇場の特徴を生かした演出の工夫で、歌舞伎ファンはもとより、初めて歌舞伎に触れる方にも親しみやすい舞台となりました。
 東京公演の会場となるル テアトル銀座も演劇・ダンス・パフォーマンスなど、スタイリッシュな舞台空間が多くの舞台ファンに愛されている770席の中劇場であり、シアター・ドラマシティでの高いクォリティがそのまま生かされる、新たな上方歌舞伎の発信地としてふさわしい劇場と言えるでしょう。


 「平成若衆歌舞伎」第五弾となる今回の公演ですが、演目はこれまで同様にオリジナル新作となる『大阪男伊達流行』(おおさかおとこだてばやり)。音楽劇のエッセンスを加えた新作歌舞伎で、江戸時代の大阪を舞台に、エネルギーのやり場を探して生きている若者たちの熱い生き様が描かれます。

 東京公演に向けて行われた制作発表会見では、監修の片岡秀太郎丈から「これまで古典から採って解りやすい新作創り、そして毎年違った舞台創りをしてきました。役者は舞台に立たないと、稽古だけでは上達しません。若い上方の役者のエネルギーを観て欲しいですし、上方歌舞伎の楽しさを東京の観客にも喜んでもらえる舞台創りをしたいです。」と力の入ったご挨拶があり、今回の公演に対する意気込みが感じられます。

 また、第二弾の公演より作を担当している岡本さとる氏は今回の作品について、
「赤穂浪士義士外伝をベースに、市井に下りた18歳の橋本平左衛門を中心とした青春群像を描いた若い汗がほとばしるような芝居、歌舞伎版ウェストサイド物語にしたい。」と語り、若手俳優のパワーとエネルギーが溢れる舞台が展開されそうです。

 さらに報道陣から上方歌舞伎の魅力に質問が及ぶと、
 「これは実際に観ていただきたいのですが、「格好良さ」や「荒唐無稽なストーリー」が江戸の歌舞伎ならば、上方は、「義理人情」「世話物」の柔らかい歌舞伎でしょうか。特に上方訛りの情感や柔らか味、美しさ、悲しみ、可笑しさを観ていただきたい。」と答えた秀太郎丈。
 「今回の公演もウェストサイド的なものに、独特の遊びを取り入れ、可愛さを大事に、言葉を大事にしていきながら、でも現代劇にはならないで、あくまでも歌舞伎として、観て楽しい、聞いて楽しい舞台にしたいと思います。」と、公演に向けて色々なアイデアを考えているようです。


 今回は橋本平左衛門を演じることになる片岡愛之助さんも「上方の役者の底力を東京のお客様に観ていただきたいと思って頑張ります。」と力強いコメント。最近では歌舞伎での高い評価はもとより、歌舞伎以外の舞台や、テレビ、映画などにも活躍の場を広げている愛之助さんですが、自ら「同窓生のよう」と語る平成若衆歌舞伎には、一段の思い入れがある様子。

花競べかぶき絵巻 片岡愛之助 霧矢大夢
昨年公演『花競べかぶき絵巻』より
左より:片岡愛之助、霧矢大夢

片岡秀太郎
片岡秀太郎

岡本さとる
岡本さとる

片岡愛之助
片岡愛之助

 昨年までも東京から観に行くファンの方も多かったとの事で、今年は大阪公演が未定という事もあり、多くの上方ファンが押し寄せる事が予想されるなど、関係者ならずとも大きく期待が膨らむ今回の東京公演。

 「歌舞伎の古典は素晴らしいですが、歌舞伎はそれだけではありません。色んな形で歌舞伎が栄えていったらいいと思います。ただし基本を身に着けて、上方の芸の基本を継承していく形の上でやっていきます。」とあくまで芸には厳しい秀太郎丈。

 今回、5年目にして東京初公演となる「平成若衆歌舞伎」。シアターコクーンやパルコ劇場など、新たな空間で様々な新作歌舞伎の上演が行われている中、新しい上方歌舞伎がいよいよ東京にやってきます!


 


平成若衆歌舞伎 第五弾
  『大阪男伊達流行』 (おおさかおとこだてばやり)

  監修:片岡秀太郎  作:岡本さとる  振付:山村 若
  出演:片岡愛之助・平成若衆歌舞伎  / 片岡秀太郎

日程  2006年5月19日(金)〜5月21日(日) <全5回公演>
会場  ル テアトル銀座
料金  8,800円 (全席指定・税込)
お問合せ  梅田芸術劇場  06-6377-3888

 

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