その最高傑作といわれる『おかしな二人』は、男性二人を描いた物語として1965年にブロードウェイで上演され、1968年にはジャック・レモン&ウォルター・マッソーというコンビで映画化されて(ジーン・サックス監督)大ヒット。その後サイモン自身の手により女性版が誕生しました。
現在でもブロードウェイでネイサン・レイン&マシュー・プロデリックの名コンビでリバイバル上演中(8月4日までの期間限定)のこの作品。日本でもこれまでにも何回も上演され、近年では、2002年にPARCO劇場で男性版(段田安則・陣内孝則)・女性版(小泉今日子・小林聡美)が続けて上演されて話題となりました。
これが3度目の顔合わせとは思えない親しげな雰囲気で、今回の共演について、
浅丘「初めて言われたときに、この人となら絶対大丈夫だと思いました。絶対やりやすいと思います。
渡辺「私は演出家に質問するタイプなのでイライラするんじゃないか、と思います。」
浅丘「大丈夫よ、役柄ではイライラさせる方だから(笑)。」
渡辺「納得するとがむしゃらに演る方なんですけれど、解らないと「ここはどうなんですか」と聞くんです。それで割とせっかちなので、逆にイライラさせてしまうかな、と。」
浅丘「大丈夫です。」
渡辺「役だと、私がイライラさせられるんですけれどね。」
浅丘「こんなに他人をイライラさせる役なんて、生まれて初めてなんです。だから私は全部自分を捨てて、役を創らないとこれは出来ないです。創ると言うのは大変な事で、この役は自分に近いところが余り無いんです。だから一生懸命自分を捨て、恥ずかしいものを捨てながらハジけて演らないと出来ないので、それをやってみようという楽しみがあります。」
渡辺「私は部屋が散らかっているというのはそっくりで、足の踏み場も無いですから、そこは役を創らなくて良いんですけれど、ハイソサエティな感じとか、ニューヨークのキャリアガール、そこはやはり創らないと――山形出身ですから(笑)――色々創ってやって行きたいと思います。」
と、自然と話が役創りに発展するなど、この舞台に掛ける意気込みの強さが伺われます。
さらにお互いの役柄との共通点を聞かれて、
浅丘「私は全然ないのよ。」
渡辺「オリーブはテレビのディレクターでキャリアウーマンで自立して仕事をしていて、割とルーズになってしまった、というところは自分そのものですね。違うのはオリーブは離婚して友達と遊んでいますが、私は離婚していないので、そこは違いますね。」
と答えるお二人。
「浅丘さんはオリーブに近い?」との問いには
浅丘「その方が演りやすいかもしれない。だから「これ反対だったらいいなあ」と思うけれど、でも、見てくれの感じはどうしても、私がフローレンスで、渡辺さんがオリーブだわね。」と答えて周囲を笑わせます。
「『おかしな二人』というのは「おもしろい二人」とは、ちょっとニュアンスが違うと思うんです。「おかしな」と言うと、面白いだけじゃなくて、どこか外れていて、どこか壊れていることですよね。二人とも凄く孤独で、どっちも壊れていて、色んな意味で、どうにかして魂を癒されたいと思っている。それが友達になっているから、どうしても離れられない、嫌なんだけれど離れられない、という感じが上手く脚本の中に出ているので、それをお互いに遊びながら、笑って泣かせてという事が出来ればと思っています。」と熱の入る渡辺さん。
「私は自分勝手に甘えさせていただいて、寄りかからせていただいて、イライラさせながら一緒に居させて頂いているんです。」と涼やかな浅丘さん。お二人の対比の妙がどのように舞台で生かされるのか、期待が膨らみます。
5月12日の名古屋での初日から、7月16日の大千穐楽まで2ヶ月以上の長期に渡る今回の公演。その間の体力維持について、
「(2ヶ月間の公演は)始めてなので、怪我をしないように、これ以上太ると膝にくるので、上手くセーブして半分くらいにして、お酒も飲まないようにして取り組みたい。」と言う渡辺さんに対し、浅丘さんは「私は少しでも食べるようにします。舞台に入ると本当に食べられなくなるので、おうどん一本でも多く食べて、体力をつけないと最後の東京にたどり着けないんじゃないかとそれが凄く心配です。本当に体力、身体だけは気を付けないとと思っています。」と正反対の回答で、「本当にうらやましい。一度だけでいいから「私、食細くて」と言ってみたい。」と洩らす渡辺さんに笑いが起こります。
さらに「10キロ減量したい」という渡辺さんに、「それはしないで。10キロ減量しても解らないから、無理はしないでそのままで。」という浅丘さん。
まさに「おかしな二人」の様なやりとりに、周囲はしばしば爆笑に包まれ、公演が本当に楽しみになる会見となりました。
最後に
「本当にこの『おかしな二人』ははニール・サイモンが良く女の心情みたいなものをとっても良く書いてありますし、若い方から年配の方まで老若男女、楽しんで見ていただけると思うので、是非ご覧になっていただけたら嬉しいです。」(浅丘さん)
渡辺「今回、台本を演出の星田さんが自分の思いを入れて変えているところもありますので、最後は本当にお客様も気持ちが癒されて、また明日も頑張っていこう、という芝居になると思いますので、是非観に来ていただきたいと思います。」(渡辺さん)
と日本全国の観客に向けてのコメントで締め括ったお二人。
私達の身近にいるような登場人物が日常的な問題や事件に直面し、奮闘する姿を巧みなジョークや爆笑を誘うセリフの妙で書かれていて、主人公たちが最悪な欠点をさらけ出しながら火花を散らしていても、なぜか好感を持ってしまう・・・。
そんなニール・サイモンが創り出す人物とストーリーに、日本全国の観客は笑いと共に暖かい涙を誘われることになるのではないでしょうか。