“Vampire”、日本語では吸血鬼(きゅうけつき)、古くからヨーロッパの民間伝承・伝説として伝わるこの怪物にまつわる話は、1897年にブラム・ストーカーによって書かれた小説「吸血鬼ドラキュラ」と、その後に数多く作られた映画などにより世界的な知名度を得ることになります。
近年でもフランシス・コッポラ監督が「ドラキュラ」(1992)を撮影してハリウッドにゴシックホラーのリバイバルブームを起こしましたが、これまでにも吸血鬼を題材にしたドラマ、小説、漫画、舞台などは数多く作られ、ホラー、コメディ、悲劇など様々なアプローチが行われてきました。
その中でも1967年に公開された、ロマン・ポランスキー監督・出演による「ポランスキーの吸血鬼」は、原題の「The
Fearless Vampire Killers. Or: Pardon me. But Your Teeth are
in My Neck」、(恐れを知らぬヴァンパイア・キラーたち:すみません、あなたの牙が私の首にくいこんでいるんですけど」で窺い知れるようにコメディタッチの作品。
しかしポランスキー自らの演出によるミュージカル版はコメディの要素に華麗な舞台装置、リアルかつ不気味なヴァンパイアのメイクと扮装で映画のイメージを払拭。
脚本・歌詞を、日本にウィーン・ミュージカルの大ブームを巻き起こした『エリザベート』『モーツァルト!』のミヒャエル・クンツェ、音楽をハリウッド映画「ストリート
オブ ファイア」「フットルース」で有名なジム・スタインマンが担当し、1997年10月4日にウィーン・ライムント劇場でスタートした公演は2000年1月15日までのロングランを記録しました。
さらにウィーン上演後はドイツのシュツットガルト、ハンブルグでも上演が行われ、2002年12月9日よりはブロードウェイでの上演も果たしています。
そんなウィーン発ネオゴシックホラーミュージカルが、2006年7月〜8月に日本で上演されることになり、演出の山田和也氏を始めとしたメインキャストが揃っての製作発表会見が行われました。
数百年を生きながらえ、愛と血を求める孤高のヴァンパイア=クロロック伯爵を演じるのは山口祐一郎、その伯爵に魅せられる娘・サラには大塚ちひろ、剱持たまきのダブルキャスト。一方、ヴァンパイア研究の第一人者でそれに生涯を捧げるヴァンパイア・ハンター、明晰な頭脳でクロロックに近づくアブロンシウス教授には市村正親、その助手で頭はいいがドジな若者アルフレートは泉見洋平と浦井健治のダブルキャスト。
出演者6人が出席したこの製作発表会見には、東宝サイトでの募集に応募した2643通の中から選ばれた100人のオーディエンスも参加。関東近県はもとより関西圏や青森などからも熱心なファンが集まり、出席率は99%という熱気の篭った会見となりました。
会見の壇上には「ヴァンパイアがオーディエンスを襲わないように」ということで、ニンニクがぶら下げられており、左右には大型のスクリーンが設置されています。
このスクリーンには出演者のご挨拶の時にはそれぞれの扮装写真が投影され、オーディエンスは勿論、壇上の出席者も興味津津で覗き込みます。写真が変わるたびに感嘆のため息や、大きな笑いなどが起き、その反応に壇上から出席者が応じるなど会場が一体となって会見は進行します。
出演者のご挨拶が済むとウィーンの舞台の映像が流され、その後は会場との質疑応答となり、報道陣だけではなく参加したオーディエンスの方からもやりとりが行われます。
そして会見の最後にはアンサンブルの方々によりフィナーレの合唱が披露されました。今回は壇上で披露されたのは歌だけでしたが、左右のスクリーンにはウィーンの映像が流され、その躍動感溢れるステージに、公演がいっそう楽しみとなる一幕でした。
また、オーディエンスには棺の形をしたケースに入ったヴァンパイアの牙がお土産として配られ、充実した1時間の会見は瞬く間に終了となりました。
本来のヴァンパイアのイメージである、ゴシックホラー&退廃的な世界に、コメディのエッセンスをたっぷり入れたミュージカル。今まで誰も見たことも無いヴァンパイアの世界! 躍動感溢れるダンスとロックンロールの融合! この興奮は舞台上だけでは収まらない!
なお、この製作発表会見の模様は動画での掲載を予定して作業を進めておりますので、どうぞお楽しみにお待ちください。
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