シアターフォーラム    
シアターフォーラム 謝珠栄、新作オリジナルミュージカル『AKURO <悪路>』を語る

 演出家・振付家である謝珠栄が主催する“TSミュージカルファンデーション”では、これまでにも『天翔ける風に』『風を結んで』など、歴史の1ページを題材にして、表舞台には登場しない、歴史のうねりの中で自ら進んで捨石になっていった多くの人々を描き続け、その舞台成果は高い評価と熱い支持を受けてきました。

 そして2006年秋、古の大和朝廷の陸奥攻略を背景に、坂上田村麻呂と、アテルイの治める蝦夷(えみし)の地で美しい故郷をこよなく愛し故郷を守るために立ち上がった、歴史には名前の残らない本当のヒーローたちの姿を描いた新作ミュージカル『AKURO <悪路>』が上演されます。

 その稽古開始に向けて、現在は脚本・音楽などの準備で忙しい謝珠栄氏ですが、その合間を縫ってシアターフォーラムのインタビューに応じていただき、今回の作品について語っていただきました。

 「アテルイの話は劇団☆新感線の芝居(2002年:新橋演舞場 市川染五郎主演『アテルイ』)で初めて知って興味を持ったのですが、大和の逆賊だと言われていた伝説があったのが、徐々に伝えられている話と違うという説が出てきたんですね。御伽草子などに描かれている話が本当がどうか興味を持って、アテルイと坂上田村麻呂の英雄伝説を調べていた時に脚本の大谷氏から別の切り口が提示されたのが、「歴史は勝者側から作られている。」という事でした。ベトナム戦争、イラク戦争など、真実が隠蔽されているのではないか、同じ真実でも見え方が違うのではないか、歴史で教えられているものを鵜呑みにしてしまうよりも、違う見方で歴史を探訪するという視点が面白いと思いました。御伽草子は大和朝廷が作ったもので、現在伝わっている琵琶の語りも大和朝廷の言い分だけで綴られていて、蝦夷(えみし)の人々は“鬼”に変えられている。それをそうでない見方で描く事に惹かれた時、高橋克彦氏の「国は土地ではない、そこに住む人の心だ」と言う言葉に出会って、それに打たれてアテルイを演ろうと決めました。」と今回の企画に至った経緯について語る謝氏。

 「自分の毎回のテーマに「自分の母国はどこか」「私は何人か」というのが在りますが、侵略する側、強い側の論理が通る世界になっているのではないか、という面で、逆賊=鬼にされてしまった人々を描いてみたい。」と新たな舞台に意欲を燃やします。

 「いつも恵まれない人間像、ひたむきに生きている人たちが好き」という謝氏は、自分自身も24時間、仕事と勉強だと言い、「お客さまが2〜3時間納得出来るものが提供出来るか、私たちが何を出来るかを考えたい。芸人が芸を磨いてこそお金が取れるように、演劇は技術だけでない、観たいと思わせるものを丁寧に創っていかなくてはいけないと思っています。面白かった、楽しかったという娯楽だけではなく、糧にもなって、二つ観客に得して欲しいんです。」と常に前を見据えて、エンターテイメントとテーマ性の両立した舞台を創り続けてきました。

 今回の『AKURO <悪路>』は既にチラシも完成していますが、そこに扮装写真で登場している出演者は6人。彩輝なお駒田一今拓哉坂元健児平澤智吉野圭吾(50音順)という実力派揃い。
 この中で大和朝廷側の人間は2人(坂上田村麻呂・安部高麿)、蝦夷側が4人とのことですが、誰がどの役を演じるのかは、まだヒミツなのだそうです。
 そして、彼らを含めた全キャストは総勢33人という、TSミュージカルファンデーション始まって以来の大人数が揃います。

 「舞台は基本的にビジュアルや音楽よりも人の力。若者たちが舞台に挑む姿が、私たちが忘れているものをもう一度思い出させてくれるかも知れないし、その若いエネルギー、思い、心の強さが舞台に出るかが楽しみですね。自分の土地・故郷を守るために大物にぶつかっていくエネルギーを出して欲しいし、精神力と忍耐力で歯を食いしばってやっている人たちを見せたいと思う。」という、そのパワーの集積には大いに期待が膨らむところです。

AKUROキャスト 後列左より:平澤智、彩輝なお、駒田一
前列左より:吉野圭吾、坂元健児、今拓哉

 そして舞台を支えるもう一つの柱である音楽。
 今回も玉麻尚一氏が作曲するオリジナルの楽曲が使用されますが、そのコンセプトについて「日本の昔の話だからといって、日本風にはしたくないですね。旋律的には昔の日本古典音楽を意識しなくてもいいと思うし、日本の旋律に縛られたくもないですが、邦楽を基本にして、プラス洋楽のエッセンスを入れたオリジナリティの有るものを創っていきたいと思っています。言葉で出来ないものを音楽で伝えたいし、作曲家のための音楽ではなく、役者の個性を最大限良くするような音楽にしたいので、作曲家と芝居の音楽を話し合いながら創るのが好きです。」と妥協を許さない姿勢がここにも伺えます。


 最後に「日本のオリジナルミュージカルというと、浅いもので安っぽく思われているかもしれませんが、内容の有る作品を創って観客と一緒に成長したいと思っています。最近は舞台も気軽に観に行けるようになってきたと思いますが、その中から本当の愛好者が多くなり、視点が高くなってくれれば、役者もスタッフももっと育つと思います。」と締め括った謝珠栄氏。

 その創り出す世界には多くのファンが共鳴している、“TSミュージカルファンデーション”のオリジナルミュージカルですが、この秋、さらに熱い風が吹くことになりそうです。


   

ミュージカル
  
『AKURO <悪路>』
 演出・振付:謝珠栄  脚本:大谷美智浩  音楽:玉麻尚一

日程  2006年10月19日(木)〜10月29日(日)  全15回
会場  サンシャイン劇場
料金  SS席 9,000円 S席 8,000円 AA席 6,000円 ※A席 5,000円
  (全席指定・税込)

※A席は、TSミュージカルファンデーションのみでの取り扱いとなります
<シニア(65歳以上)割引・学生割引>
S席を6,500円、A席を3,500円にて販売いたします。
チケットは当日受付にて年齢が証明できるものを確認の上、お渡しいたします。
前売開始  2006年7月8日(土)
お問合せ  キョードー東京 03-3498-9999
TSミュージカルファンデーション 03-5738-3567

公式サイト  TSミュージカルファンデーション
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