『オクラホマ!』は、後に『サウンド・オブ・ミュージック』『回転木馬』『南太平洋』などの数々の名作を生み出すリチャード・ロジャース(音楽)、オスカー・ハマースタインII(脚本・作詞)のコンビにより1943年にブロードウェイで初演されて2248回のロングヒットを記録した名作ミュージカルで、1955年には映画化もされ、また主題歌である「♪オクラホマ!」はオクラホマ州の州歌ともなっています、
宝塚歌劇団にとっても、1967年に月・星組合同により海外ミュージカル第一弾として上演されて(出演:上月晃、初風諄、古城都)大成功を収め、現在に至るまでの数々の海外ミュージカル上演の礎となった歴史的な作品であり、1984年の花組でのバウホール公演(出演:大浦みずき、秋篠美帆、瀬川佳英)に続いて、三度目の上演となります。
今回、主役のカウボーイ・カーリーを演じるのは、これまでに幅広い演技力と確かな存在感で様々な役柄を演じ、高い評価を受けて来た専科の轟悠。その相手役ローリーには月組の若手娘役、城咲あい。そして暗い影のある男ジャッドには霧矢大夢が扮し、月組選抜のメンバーと共に、この古典とも言えるミュージカルに挑みます。
20世紀初頭のアメリカ中西部・オクラホマ州の農場を舞台に、カウボーイと農場の娘をめぐる恋の三角関係を陽気に描いたこの作品には、「♪美しい朝」「♪ノーとは言えない」「♪恋仲だと人は言う」、そして終幕の大合唱となる「♪オクラホマ!」など名曲が散りばめられており、ミュージカル本来の楽しさが満喫できること請け合いです。
今回、この作品を上演することについて、宝塚歌劇団の小林公一理事長は「初演ではアメリカから演出家(ジェムジー・デ・ラップ氏)を招いて、本当にアメリカで上演されたそのままの『オクラホマ!』をやりました。それから40年の間に宝塚でも色々なミュージカルをさせていただき、40年経った今、もう一度原点に戻って、「経験を積んだ宝塚がどのようにこの『オクラホマ!』を料理出来るのか」というのがあり、日生劇場ということも考えて選びました。宝塚のミュージカルの原点である『オクラホマ!』が40年経った今、どうなっているかということを皆様にお見せできればと思っています。」と語り、これまで積み上げてきた実績に自信を覗かせます。
また演出を担当する中村一徳氏は、「今回はこのメンバーならではの新しい『オクラホマ!』として皆さまに楽しんでいただけるように、これから演出プランを煮詰めて、稽古を積み重ねて参りたいと思っております。この作品は、今日のミュージカルの原典・基礎と言っても過言ではない作品だと思っております。この『オクラホマ!』が上演された時、当時の観客は「明るく楽しい」に加えて、とても人間が深く描かれていて、人間味溢れる作品として心を打たれ、感動したと聞いております。轟さんを初め、霧矢さん、城咲さんら月組の皆がどのよう西部の人間を描いてくれるのか、期待の気持ちでいっぱいです。」と、こちらも腕を撫します。
そして、7月7日から東京宝塚劇場で幕を開ける月組公演『暁のローマ』『レ・ビジュー・ブリアン』にも出演のキャスト3人はそれぞれに
轟悠「日生劇場は三回目となりますが、由緒正しき劇場で今度は『オクラホマ!』という名作、名曲で綴られたミュージカルを演れるという喜び、期待感で胸がいっぱいです。『オクラホマ!』をバウホールで観ましたのが音楽学校の本科生の時でした。1〜2回しか観られませんでしたが、当時の事を良く覚えております。上月さん初め先輩がたが創られた『オクラホマ!』を上回れるような作品を月組生と共に創って参りたいと思っております。中村先生は既に腕まくりをされて作品に取り掛かっていらっしゃる様子ですが、私たちも負けないように全力で取り掛かりたいと思っております。霧矢さん、城咲さん初め月組生総勢36人で、今の東京の舞台で『オクラホマ!』を完成させたいな、という意気込みでおります。」
城咲あい「私はこの出演が決まってから映画など拝見したのですが、とても素敵なミュージカルで、この作品に出演させていただく事が出来てとても光栄な事だと思っております。今の大劇場公演に引き続いて轟さんとご一緒に出させていただくことも、とても勉強させていただける機会だと思うので、一生懸命轟さんと霧矢さんに付いて行きたいと思っております。」
霧矢大夢「『オクラホマ!』という素晴らしい作品に出演することが決まって本当に幸せに感じております。また、ジャッドという役も『オクラホマ!』の中では唯一、暗い孤独を背負った男ということで、演技の幅も広げて行けるのではないか、と期待しております。今週から始まる東京宝塚劇場での月組公演に引き続き、轟悠さんとご一緒出来まして、月組の選抜メンバーで精一杯轟さんに付いて、月組のチームワークを皆様にお見せできたらいいな、と思っております。」
と語り、この名作を今演じるに当たって、それぞれ胸に期するところがあるようでした。
宝塚歌劇での初演時はその斬新さ故に、色々と話題になったこの『オクラホマ!』ですが、「この作品は古き良き時代のアメリカ人の純粋さを感じますし、もちろん主役のカーリーとローリー、そしてジャッドも凄く純粋な人間で、現代の人たちが忘れているような優しさも凄くありますので、その部分が新鮮に感じていただける事と、もちろん新しい作品としての部分を観ていただきたいと思います。初演当時には西部の荒くれ男たちを演じるのは宝塚的ではなかったイメージがあったと思うのですが、心の中を考えると非常に宝塚的な作品であるので、あまり世界観を崩さずに行ける作品ではないかと思っております。
リチャード・ロジャースの音楽と、オスカー・ハマースタインIIの脚本、この二人の世界をいかに今の人たちにテンポアップして感じていただけるか、もちろんミュージカルは楽曲の美しさで展開していく部分もありますが、この作品はお芝居があっての楽曲であり、非常にお芝居が占める部分が多くて、その展開部分をお客さまにきっちり解るように組み立てていきたいな、と思っております。今までの経験でしたら、楽曲の長さなども劇場の寸法に合わせて考えていたのですが、この『オクラホマ!』の楽曲は一つ一つがドラマティックに出来あがっていて、今まで創り上げてきたものとは違った非常に苦悩を今感じているところですが、日生劇場ならでは空間を生かしたセットも含めて、宝塚の作品としてにお客さまに観ていただければと思っております。」と、熱を込めて語る中村氏の頭の中には、既にかなりのプランが進行しているようです。
轟さんと霧矢さんは、初共演となる『暁のローマ』に続いての出演となりますが、霧矢さんが「今回の舞台では側には居ても、あまり絡みが無いのですが、『オクラホマ!』ではがっちりお芝居をさせていただくので、轟さんと演じるというプレッシャーはあるのですが、学ばせていただくことが沢山有ると思います。ローリーをめぐる男女間の人間模様の対比は、自分としては難しさを感じて挑戦だと思いますが、とにかく全身全霊でぶつかっていきたいと思います。」
と、力を入れれば、城咲さんも「のびのびとお芝居をさせていただいて、どんなことをしても受け止めていただけるので、自分らしく演じたいと思います。」
と、先輩との共演が楽しみな様子。
そうした二人の言葉と思いを、「ミュージカルをやりたかったのでとても楽しみです。組んだ相手には自由に気を使うことなくやって欲しいし、舞台上では上級生も下級生も関係がないので、楽しく演って欲しいですね。」とがっちり受け止める轟さんとの舞台は、大いに楽しみなものとなりそうです。
会見の後には、出演者により劇中のナンバー「♪美しい朝」「♪恋仲だと人は言う」「♪寂しい部屋」「♪オクラホマ!」がメドレーで歌われましたが、「やはり名曲ですね。名曲過ぎて、こちらがジタバタしている感覚が未だあります。とても綺麗で素直で、観てくださった方が一回観ただけで口ずさんでいただけるような、そういった名曲だと思っておりますので、早く舞台で思いっきり歌いたいですね。」と笑顔の轟さん。
また霧矢さんは、待ち時間の間ず〜っと鼻歌で轟さんと城咲さんの歌ばっかり歌っていたそうで、「オクラホマの主題歌は良く宝塚でもイベントなどで使われておりまして、とても馴染みの有る曲なんですけれども、まだまだ「こんな名曲が沢山織り込まれていたんだ」と改めて作品を観て思いましたので、――私自身はそんなに歌わないと思うんですけれども――他人の曲を聴いて、楽屋で歌いたいと思います(笑)」と会場を笑わせます。
そして城咲さんも「映画を見て、初めて聴いた曲もすぐ耳に残ったりして、凄く印象的な心弾むような曲が多いので、今からとても楽しみにしています。」と語るなど、早くも秋の上演が待ち遠しい雰囲気での制作発表会でした。
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