2007年11月、新しい日比谷のランドマークとしてオープンする新劇場「シアタークリエ（THEATER CREATION）」。
　「クリエ」は「クリエーション」＝創造を略した造語で、人類の発展の礎である「創造」への挑戦、喜びが込められているとの由。

　この劇場名を発表した東宝の高井社長は「今回の新劇場は、新しい発想で激変する時代のニーズに応えて行きたい。これから演劇界を支えてくださる新しい若いお客様に喜んで、楽しんでもらえるような作品を、ジャンルを問わずに提供して行きたい。」と語り、新たな舞台芸術の発信基地としての新劇場スタートに向けて力を込めます。

　2007年11月に竣工する新しいビルの1階から地下3階を占める新劇場は、1階がロビー、チケットカウンター、そして入場口となり、そこから降りた地下1階と2階がホワイエと客席になります。
　客席は前方がスロープ、後方が階段となっており、中央ブロックでは椅子が千鳥配列され、最後列からの距離も縮まって、観やすく、より舞台との一体感が感じられるほか、音響面でも最新の音響設計（建築音響・電気音響）を基に最適な残響時間を得て、響きの良い、より聴きやすい劇場空間が実現されるとの事。

　そして、ソフト面でもこれまで同地に在った「芸術座」とは方針を転換。
　日本の現代物を中心に上演されてきた「芸術座」でしたが、「シアタークリエ」では、洋の東西を問わず、またシェイクスピアに代表される古典劇から現代の最新作まで幅広い候補の中から良いものを選択して上演。さらにストレートプレイにこだわらず、ミュージカルなども視野に入れて、「多彩で喜んでいただける演目を提供していきたい。」と新たなスタートを目指します。

　そうした東宝の新しい劇場に託す新鮮な気持ちが象徴されているのが、新劇場の運営スタッフ。
　新しく支配人となる山崎奈保子氏はオープン時に20代という若さ。そして彼女と共に新劇場を支えて行くプロデューサーも、小林香氏、小嶋麻倫子氏、横田優希氏と全て女性スタッフが登用されました。

　この点については、「団塊の世代が芝居を観られる時代になり、幅広く老若男女に観ていただける芝居を創っていきたいが、現実には観客もスタッフの応募者も女性比率が圧倒的に高いので、「女性の女性による女性のための劇場」をちゃんとより前向きに考えるべきではないか、男性が考えるのも良いが、ストレートに女性が自分たちの観たいものを創っていくのも大事だと考えて今回の人選となった。」そうで、これから観客と同じ目線で舞台を創って行く彼女たちには大いに期待をしたいところです。

　そして気になるラインナップですが、オープニング・シリーズ第一弾で柿落としとなる2007年11月〜12月の三谷幸喜作・演出『恐れを知らぬ川上音二郎一座　The Fearless Otojirou's Company』に続き、第二弾として、2008年1月〜3月には、東宝のみならず日本演劇界の財産と言える森光子主演『放浪記』の上演が決定しています。

　その後の展開については「今度の新しい劇場は、上演期間も6ヶ月、3ヶ月、２ヶ月、１ヶ月、3週間など演目によって自由に使い分けていきたい。さらに上演開始時刻や料金なども作品ごとに自由に設定していきたい。」と語る演劇担当の増田取締役。

　「（客席数2000弱の）帝劇には帝劇に相応しい作品があり、現在はミュージカルが流行っているが、ミュージカルだけでは演劇の発展はない、ストレートプレイがきちんと出来る人間を育ててて、その延長にミュージカルがある。ミュージカルとストレートプレイは芝居の両輪であると主張している。」と語る増田氏は
　「「シアタークリエ」は、帝劇よりストレートプレイに相応しい劇場で、ストレートを修練する場と考えているが、ミュージカルも入れて行きたい。東宝ではこれまで大劇場ミュージカルを中心としてやってきたが、もう少し小さな劇場が無かったために出来なかったとても良いミュージカル作品もたくさんあり、新劇場はミュージカルの設備も整っているので、小劇場、中劇場用の優れたミュージカルも演って行きたい。」と、今後のレパートリーの拡大を示唆。

　実際にも「オープニングシリーズとなる1年間のラインアップは発売日などを考えて順次発表して行くが、その中にはミュージカルも数本含まれている。」との事で、果たして今後どのような舞台が新劇場「シアタークリエ」を飾って行くのか。演劇ファン、ミュージカルファン共々、当分はその動向から目が離せそうにありません。