ゴルフは通常、1ラウンド18ホールを4人が組になってプレイを行い、その打数の少なさを競うゲームです。コースには距離の長いものから短いものまであり、山あり谷ありの障害が待ち構えていて、まるで人生のよう。
そして同伴者にも、心優しい人もいれば、どうしてもウマの合わない人も居るし、自分の世界に浸りきっている人も居れば、他人に気を使ってばかりの人も居る。
そう、ゴルフコースは、まさに「人生の縮図」なのです。
そんなゴルフのエピソードに絡めて人生の様々なドラマを描き、オフ・ブロードウェイでスマッシュ・ヒットしたレビュー・ショーを日本語版ミュージカル・コメディにブラッシュ・アップ。
大声で笑いながら、思わず「そうそう」とうなずいてしまう。そんな素敵な舞台『ゴルフ・ザ・ミュージカル 〜ゴルフなんて大嫌い!〜』が10月8日に東京・渋谷のPARCO劇場で幕を開けました。
舞台は日本アルプスを望む山奥にありながら、都心からも2時間弱で来られるという“鬼の里カントリークラブ”(全長2813ヤード、パー72)。
「日本にもまだこんなところがっ?」と思わせるほど渓谷あり、ジャングルあり、砂漠ありの難コースで、プロでも初めてのラウンドでは90を叩くのも珍しくないと言う。
どうやら、ゴルフ好きの大金持ちが道楽で、ゲームのようなコースを作ったらしい。
この“鬼の里カントリークラブ”にやって来た4人。フリーのコピーライター兼CMディレクターのワッキー(川平慈英)、中堅広告代理店・マンツーエイジェンシーの営業マン、クロちゃん(相島一之)、マンツーマンエージェンシーのOLでクロちゃんの部下、サカシタちゃん(堀内敬子)、食品会社「南国かいわれ」の次期社長、カラクサギさん(池田成志)。
今日はカラクサギさんのための接待ゴルフにやってきた4人だが、ワッキーはこれがコースに出るのが初めてで、実はゴルフは大嫌い。クロちゃんはゴルフ暦10年だが中々上達せず、サカシタちゃんは最近始めて、めきめきと上達中。カラクサギさんは学生時代からのゴルファーでシングル目前という腕前。
こんな4人のパーティに無愛想だが仕事はてきぱきとこなす美人のキャディ、糸満ルリ(高橋由美子)が加わって織り成す、1ラウンド18ホールのドラマ。マイケル・ロバーツ作曲のナンバーに合わせて、日本オリジナルのストーリー台本を福島三郎が作成。キャディや接待ゴルフなど日本のゴルフ文化を交えて、18曲のご機嫌なナンバーを歌い上げます。
初日前日の舞台稽古を前に行われた記者会見では、「非常に音楽が素晴らしいので、その音楽を殺さないようにお芝居を創りました。この舞台でゴルフの楽しさを伝えたい。」と語る台本・演出の福島三郎氏。
来日して稽古を見たという脚本・作詞・作曲のマイケル・ロバーツ氏も「何も心配することもない、本当に素晴らしい出来で、初日が楽しみです。歌も踊りも演技も素晴らしい。」と絶賛します。
そして出演者たち。役柄同様これまではゴルフは大嫌いだったという川平さんは、「何が面白いのか、と思っていて、大嫌いなままで稽古に入り、実際にこのメンバーでコースを廻ったら、スコアは酷かったけれど楽しかったんです。コースを気の合った仲間と廻ると楽しいし、稽古で毎日クラブを振っていると、球が打ちたくなるし、コースに出たくなるんです。」と、その魅力にハマってしまった様子。
この舞台が決まってからゴルフセットを買い揃えたという相島さんは「男女関係や人間関係など、様々なドラマが絡まりながら結末へと向かいます。僕はミュージカル初心者なので緊張していますが、楽しみにもしています。」とコメントします。
さらに、出演者の中ではゴルフが一番上手いと言う池田さんが「スコアが良くなくても、また行きたくなるのがゴルフの魅力。そんな雰囲気が出ればいいと思いますし、ゴルフ好きな方に観て欲しい。」とアピールすれば、堀内さんも「見所は日本オリジナルのストーリーで、逆にアメリカで上演して欲しいくらい。ゴルフが好きでミュージカルを観たことの無い人にミュージカルの楽しさを知って欲しいですね。」と、ゴルファーへラブコールを送ります。
また、今回はキャディ役の高橋さんは「舞台に出ているのに何故か楽しんでいる自分が居て、それがお客様に伝われば良いと思っています。凄く柔らかいミュージカルです。」と控えめなコメント。しかし、出演者とのゴルフに話が及ぶと「もう一回行ってみたいという気持ちはあります。」と、こちらも興味を持ち始めたようです。
ゴルフなんて全く興味のないすべての人と、ホントは気になって仕方がないすべての人々へ贈る、ゴキゲンなミュージカルコメディ。
このミュージカルを観終わった後は、ゴルフが今より少し好きになって劇場を後にすることになるかも知れません。
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