シアターフォーラム    
シアターフォーラム 瀬戸内寂聴/訳 朗読劇『うき身を醒めぬ ゆめになしても』舞台稽古

 「小学校高学年から90歳まで読める」ことを目指して、1996年に完結した『瀬戸内寂聴現代語訳 源氏物語』(講談社刊行)。
 その瀬戸内源氏を、「朗読」という手法に照明や音楽で演出を施して舞台で表現するという『源氏物語・朗読T』がスタートしたのは1999年5月のこと。

 当初は、瀬戸内氏自身が「朗読で果たしてお客様が来てくださるのか」と懸念したというこの試みも、出演者・関係者の尽力で大好評となり、以降毎年のように回を重ね、合わせて、世に巻き起こった「源氏ブーム」「朗読ブーム」の火付け役ともなってきました。

 その7回目となる今年は、瀬戸内氏の作家生活50周年記念として、10月15日より行われた、過去の上演で好評を得た作品を再度上演する第壱部のアンコール公演に続き、11月1日からは第弐部として、シリーズ初めての試みとなる複数の出演者による朗読劇『うき身を醒めぬ ゆめになしても』が上演されます。

 これは、瀬戸内寂聴訳の「源氏物語」と、2004年に刊行された創作小説「藤壺」の内容を織り交ぜ、朗読と演劇の新しい融合を目指したもので、フルート・笛奏者 西川浩平と、イランより招いた声音楽家 バーラム・サーランギによる音楽、そして現代的な照明と衣裳を取り入れた新たな試み。


 そして今回、その初日を直前にして、平成18年度の文化勲章受賞者に瀬戸内寂聴氏が決定したという嬉しいビッグニュースがもたらされました。
 文化勲章とは、科学技術や芸術などの文化の発展や向上に関して顕著な功績のあった者に対して授与される勲章で、昭和12年に第一回の発表があり、その後昭和23年の第六回からは毎年の発表となりました。毎年11月3日の文化の日に、皇居宮殿松の間において天皇陛下より親授されるもので、昨年は女優の森光子さんが受章されています。


 前日に行われた舞台稽古の後、出演者と共に会見に臨んだ瀬戸内氏は「想像していた以上に美しくて楽しくて、セリフがはっきり解ってとても良かったし、音楽効果も良くて、これまでは朗読だけで、こうして劇に構成されたのは初めてでしたし、私の訳は上手いなあ(笑)と感心しながら観ていました。」と、その出来栄えに満足気のコメント。

 そして、出演者から改めて文化勲章受章のお祝いを受けると「今回の舞台に、文化勲章受章が思いがけず重なって、皆さんが薔薇の本当に大きな花束を一番に届けてくださって、とても嬉しかったです。それは寂庵に飾ってありますが、ここに来て薔薇の花より美しい方々に囲まれ、イランの素晴らしい音楽も聞かせていただいて、とても幸せです。」と、さらなる笑顔をみせます。


 そんな記念となった舞台に、出演者も改めて気合が入る様子で、光源氏を演じる初風緑さんは「こういう貴重な作品に出させていただいて、私自身もまだまだ自分の中に入り込んでいない部分もありますけれども、自分の中で出来る精一杯の素敵な源氏、先生の理想とされている源氏になれるように努力していきたいと思います。」と力を込めたコメント。

また、紫式部と瀬戸内寂聴の分身となる語り手を演じる松本紀保さんは「全くどういう作品になるか想像がつかないところからひとつひとつ積み重ねて来て、初日を前に緊張と興奮でとてもよい高揚をしています。作者でありながら、その人物が目の前で生まれて動いていく事が同時進行していくので、読み手の感情と登場人物の感情をシンクロさせていくのが難しくて緻密な作業だが面白いですね。」と、新たな試みに闘志を見せます。


 そうした出演者に囲まれ「受章の実感は沸かないのですが、皆さんとお会いすると徐々に実感が出てきます。こんな晴れやかな方々にお祝いしていただくと嬉しいです。」という瀬戸内氏。

 「ペン一本にすがって50年生きて来た事を認めて頂けたのがとても嬉しいですし、どの民族でも文化を大切にしない民族は滅びると思っておりますので、日本の文化という名の付いた章を国民の皆様から頂けたということはとても光栄な事だと思います。これからも、この章の重さに負けないような仕事をして行きたいと思いますし、もっと小説を書きたいという意欲が沸いて参りました。そしてまたこのように美しい方に演じていただければと思います。」と、今後の活動にさらなる意欲を見せていました。


 7回目を迎え、新しく進化したステージとなった「源氏物語・朗読」。
 銀座・博品館劇場で平安大河絵巻の幕が華やかに開きます


左より:初風緑(光源氏)、松本紀保(紫式部)
初風緑
左より:初風緑(光源氏)
松本紀保
左より:松本紀保(紫式部)
汐風幸
左より:汐風 幸

瀬戸内寂聴 作家生活50周年記念
  
朗読劇『うき身を醒めぬ ゆめになしても』
 出演:初風 緑・松本紀保・月影 瞳・汐風 幸

日程  2006年11月1日(木)〜11月5日(日)  全9回公演
会場  銀座・博品館劇場
料金  一般 7,000円 (全席指定・税込/パンフレット付き)
学生券 3,500円 (全席指定・税込/劇場でのみ販売)
お問合せ  博品館劇場  03-3571-1003
インターナショナル・カルチャー  03-3402-2171

寂庵へようこそ 


左より:バーラム・サーランギ(演奏)、月影 瞳、汐風 幸、瀬戸内寂聴、初風 緑、松本紀保、西川浩平(音楽)


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