登場人物は男と女の二人だけ。時間も場所も限定された中で、脚本と演出と役者がぶつかりあう“30分1本勝負”の新しいドラマとして、朝日放送で現在3シリーズまでオンエアされて評判を呼んでいる「女と男と物語」。

　そのドラマシリーズを元に、ワンシチュエーションで30分の男女二人芝居、異性を意識した感情の絡んだストーリー、3話オムニバス形式の舞台、『LOVE 30 〜女と男と物語〜』が、11月3日に渋谷・PARCO劇場で幕を開けました。

　今回、脚本を担当したのは、劇団「モダンスイマーズ」で作・演出を手掛け、最近では『第32進海丸』『世界の中心で、愛を叫ぶ』』など外部の舞台でも引っ張りだこの若手実力派、蓬莱竜太。劇団『東京セレソンデラックス』代表で、作家・演出家、そして俳優でもあり、ＴＶドラマ「花より男子」「アタックＮＯ．１」などでも、そのコミカルで温かい作風が人気の、サタケミキオ。そしてＮＨＫディレクターとして数々の人間ドキュメンタリーを制作、退社後は劇団「カッパドキア夫人」のリーダーとして、またテレビドラマの脚本、助監督として活躍する三島ゆき。
　まさに、これからの活躍が期待される若手有望作家が揃い踏みとなりました。

　その書き下ろし脚本を演じるのは、いずれも個性派として実力に定評のある6人のキャスト。それぞれが初共演となる今回、そのぶつかりあいも興味深いところです。

　まず、三島ゆき作『スパイス・イン・ザ・バスケット』
　別れた妻が元夫を訪ねての再会。何事にも段取りを重要する元夫と、行き当たりばったりとも思える性格の元妻。微妙な空気の中で、彼女が訪ねて来た訳は・・・。

　演じるのは、近年、「劇団☆新感線」への出演や、パルコ劇場公演『開放弦』で、確かな演技力と瑞々しいセンスを見せている水野美紀と、声優として、ラジオＤＪとして、バラエティタレントしても活動する山寺宏一。

　果たして、離婚した男と女の、表面に現れる顔と、その奥に隠されている微妙な感情の揺れをどう表現してくれるのでしょう。

　続いて、サタケミキオ作『結婚相談所』
　結婚相談所のカウンセラーを勤める女のところに相談に来たのは、中学時代に憧れていた先輩。胸をときめかせる彼女と、何も気づかない彼、二人の行く末は・・・。

　バラエティで注目を浴びた後、女優としての才能も開花。2003年の初舞台『OVERSEAS』以来、着実に舞台での成長を見せる真中瞳と、コントグループ「ラーメンズ」での活躍はもちろん、彫刻家としての一面も持ち、最近では舞台出演も増えた片桐仁。

　中学校卒業以来、偶然の出会を果たした二人。賑やかで軽やかで、そして爽やかな感情の触れ合いを見せてくれます。

　そして、蓬莱竜太作『兄への伝言』
　急死した弟の葬儀に故郷に戻った兄。幼馴染でもあった弟の妻との再会。二人で静かに向き合う通夜の席で、思い出話から出てきたものは・・・。

　出演は軽妙洒脱で辛口なトークで、バラエティにひっぱりだこの一方、女優としても卓越した演技力で映画、舞台などで活躍のＹＯＵと、舞台、テレビドラマ、映画と幅広いフィールドで活躍、その個性的な役作りには定評のある生瀬勝久。

　普段は賑やかなキャラクターで知られる二人が、今回はしっとりとした大人の会話で男女の感情のひだを演じます。

　休憩無しで連続上演されるこの3本の「女と男の物語」。演出はテレビドラマ版も手掛けた宮田慶子。男女の一瞬のすれ違いに見せる様々な表情・・・情熱、純情、苛立ち・・・男女の繊細な心の触れ合いを切り取り、浮かび上がらせます。

　30分の凝縮したドラマの中に込められた、何時でもどこでも変わらない、もどかしくもちょっと切なく、そして微笑ましい女と男の恋愛模様。
　見終わった後で、心の底にふっと小さな灯のゆらぎを感じるような、そんな舞台と言えそうです。