トークショー形式で行われた今回の製作発表会見。最初に今回の公演に対する意気込みを問われて
「足掛け7年で4回目になりますが、この作品は人間の中身を扱っていて、音楽も重厚で心の叫びをそのまま音楽にしたような激しい音楽なので、毎回毎回「これ以上の意気込みは持てないだろう」というような気持ちで演っています。丁度1年おきに演っていますが、これまでの3回の経験を生かしつつ、少しでも新しい所を見つけて、層の厚い、深みのある作品にしたいなと思っております。」(鹿賀さん)
「また心を白紙にしてゼロから創り直したいなと言う気持ちと、4回目なので重ねて来たものもございますので、更にステップアップ目指して、ちょっと幸せなルーシーも演じたいなと思います。今までも努力はしてきましたが、もっとハッピーなルーシーにチャレンジしたいという気持ちもございます。」(マルシアさん)
「同じ舞台を踏むというのは私にとって初めての経験なので、どんな風に自分が変わるのか未知のところですが、皆さんとまた創って行く中で新しい発見をしながら、新しいエマをまた演らせていただきたいと思っています。一つ私も歳を取っていますし、少しは大人になっていると思うので、もう少し皆さんと対等な感じで(笑)、接せられるかな、と思います。」(鈴木さん)
と、それぞれに新たなステップに向かって意欲を燃やす出席者たち。
特にマルシアさんにとっては、ミュージカルスターへの第一歩となったこの作品。初演時を振り返って
「丁度30代に入ったところで、何か30代で自分の人生の中で大きな変化を起こしたかった時に、ミュージカルと言う世界の大きなチャンスが目の前に現れて、――日本に来た時もそうでしたが、――チャンスは自分で掴むしかないし、そのチャンスを大きくするか、ダメにしてしまうかも自分の力と運だと思います。そこでミュージカルと出会って、「こんな世界があるのか!」と思うくらい音楽の魅力に取りつかれて、――音楽のレベルも高くて当時の自分にはとても手の届かない存在でしたが、――勉強させていただいた、30代の大きな1ページを創ってきたのがこの作品ですので、今回最後と言うのは寂しいけれども、心に残るものにしたいです。」と感慨深げなコメント。
また鈴木さんも再演に向けて「率直に言ってとても嬉しいです。結構上がり症の所があって、去年は30ステージもあったのにいつも上がっていて、いつも「どうしようかな」と考えている自分が居たんですね。なので、今回は本当にもっとリラックスして自由に演って行きたいな、というのがありますね。」と、新たな課題に向かい合います。
そして今回、ジキルの親友アターソン役に初挑戦の戸井勝海さんはビデオでのメッセージを寄せて、
「僕も何度か舞台を拝見させていただいて、自分の人生とか、人とはとか、色んな事を考えさせていただいた舞台です。新たに役者も何人か変わりまして、また新しい『ジキル&ハイド』が生まれると思います。是非それを客席で感じていただけたら、最高に幸せです。」と、これまで段田安則さん(2001年)、池田成志さん(2003年)、石川禅さん(2005年)と引き継がれて来た役へのチャレンジに意欲を見せていました。
この『ジキル&ハイド』は、鹿賀さんが上演を強く望んだ作品ということで、その出会いについて、
「21世紀になる前でしたが、本当に素晴らしい音楽で、――その時は舞台になっていなくてCDだけでしたが、――それを聴いて「何て凄い音楽なんだろう。」「何とドラマ性が有る音楽なんだろう。」「人の心の思いというのが、これだけストレートに感動的に、よく音楽に乗るものだな。」という思いで、一刻も早く演りたいと思っていたが、中々話が進まなくて、50才を過ぎてしまったんですね。「ジキルといったら30代後半くらいだろうな、50才になって演るのはちょっとキツイけれど」みたいなところもあったのですが、とにかく演ってみようということで、50才の時に初演を開けました。」と話す鹿賀さん。
「やってみますと聴くと演るとは大違いで、本当にこちらがエネルギーを出せば出すほど、お客さまがそのエネルギーを吸い取っていくようなお芝居なので、一回終わるとカス状態と言いますか、その位エネルギーを使うんですね。ですから、この間演った時も「もう少し楽に演った方がいいんじゃないの」と仰る方も沢山居られたのですが、なかなかそうはさせてくれない舞台なんですね。そこが『ジキル&ハイド』の面白さ、魅力ではないかと思っていますので、来年4月に向けて身体を鍛えなおして、発声練習をして、歌の勉強を一からやって、また創り直そうと思っています。」と、新たな気持ちで4度目の公演に臨む姿勢を語ります。
「ミュージカルのCDも沢山聴くが、『ジーザス・クライスト・スーパースター』『レ・ミゼラブル』そして『ジキル&ハイド』の3本は、自分の中で突出した作品であり、その3作品に関われた事を俳優として幸せに思う。」という鹿賀さん。
それだけ思いのある舞台に今回でピリオドを打つことについて問われると
「別に止めなくてもいいんじゃないか、続けた方がいいんじゃないか、という声もいっぱいありますし、俳優にとって一つの作品を長く演ることも非常に大事な事で、努力の要る、力の要ることだと思うんですが、ひとつ自分で在る意味納得したと言いますか、自分でやれるだけの事はやったな、と思った時に、次のステップに行ってみようかという決断も俳優にとって非常に大事なのかな、と思っています。
前回の公演時に作曲者のワイルドホーンさんが楽屋に来てくれまして、――非常に誉めてくださったのですけれども、――彼の作曲で新しく、スケールの大きい『シラノ・ド・ベルジュラック』というミュージカルを書いたんですね。それをやってみないか、という話が出まして、――これはまだ音楽だけで舞台になっていませんし、来年になるか再来年になるか解りませんけれども、――そういうモノも控えているというか、そういうモノに向けても『ジキル&ハイド』はここで一区切りにしようかな、と言う風に思ったのが正直なところです。」と、サプライズな告白。
これにはオーディエンスをはじめ、司会の軽部さんも「鹿賀さんの口から、ひとつ大きなニュースが明らかにされました。」と興奮を隠せない様子で、会場は一段と熱気に包まれました。 |