
村松梢風原作『残菊物語』は、五代目尾上菊五郎の養子菊之助と、六代目菊五郎の乳母お徳との、華やかな歌舞伎の影に咲いた禁断の恋を描いた物語で、元は昭和十二年に発表された短編小説でしたが、巌谷槙一が脚色して「新版残菊物語」として劇化、それを潤色して同年初演されました。

爾来、多くの作家が手がけて映画化、舞台化がなされてきましたが、今回は川口松太郎=脚本、堀越真=潤色、佐藤浩史=演出での上演となります。
出演は、お徳に今春菊田一夫演劇大賞を受賞した十朱幸代、菊之助に市川猿之助一門の花形市川右近。また五代目菊五郎に杉浦直樹、菊之助の盟友福助に市川春猿、その他藤間紫、遠野凪子など歌舞伎界と現代演劇界の華麗なる競演となりました。
初日前日に行われた舞台稽古では、舞台上に展開するその至純の愛の姿に、そっと涙する姿が見受けられました。