谷崎潤一郎作『恐怖時代』。大正五年に発表されたこの戯曲は、当時そのあまりに耽美的かつ残酷な表現のために発禁処分となった異端の作品です。
その『恐怖時代』に、今から18年前に取り組んだのが蜷川幸雄氏。絢爛たる美意識で貫かれたその舞台はセンセーションを起こしましたが、蜷川氏は「ちょっと早すぎたかもしれない」と当時を振り返って語ります。
今回演出を担当するのは、蜷川幸雄の右腕として数多くの蜷川作品をサポートしている若手演出家井上尊晶。
今回の上演に際し、「時代よりもちょっと先に進みすぎていたけれど、やっと時代が追いついた」との蜷川氏の言葉は何を意味するのでしょうか。
その答は、2月の日生劇場にあるのかもしれません。 出演者は、大名家の乗っ取りを企てる究極の悪女=お銀の方に、初演と同じ浅丘ルリ子。そのお銀の方と深い関わりを持つ悪徳家老・春藤靭負に西岡徳馬。お銀の方の奥女中、悪知恵の働く梅野に夏木マリ。梅野と、そして実はお銀の方とも恋仲のお小姓、正体不明の美少年・磯貝伊織之介に、ロックバンド・リュシフェル解散後、新境地に挑むMAKOTO。そして「ワル」というより「小心者」ゆえに、悪事に巻き込まれる茶坊主・珍斎に木場勝己(第10回読売演劇大賞・最優秀男優賞)と、色濃い顔ぶれが揃いました。
今回の役柄を「今まで演じた中で、一番の悪女」と語る浅丘さん。「悪女を演じるのは楽しい」と笑顔を見せます。他のキャストも悪人役ばかりということで「実際とは逆のほうが演りやすいんだよ」との声に、皆さんが笑顔でうなずきます。
舞台装置は百合の花で飾られ、ハーフミラー張り、アールデコ様式で飾り立てられた大名屋敷。
流れる調べはバッハ、それもジャズ・カルテットの生演奏。
この美しい舞台で究極の悪女がしかける、殺戮のドラマの幕が開く。
公演は2月5日(水)〜28日(金)
東京・日比谷の日生劇場にて
チケットの予約は
東宝テレザーブ 03(3201)7777
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