現在、東京・新宿のコマ劇場で上演中の『桜吹雪狸御殿』。
歴代のトップスターを始めとする、宝塚OGが大集結してのこの舞台は、サービス精神が一杯。宝塚が大好きな方も、観た事が無いという方も、大いに笑って楽しめる公演です。
しかし、多少の予備知識が有った方が、折角の舞台をよりエンジョイ出来るというのも事実。そこで、この舞台をこれからご覧になる方のために、ちょっとだけ予備知識をお教えしましょう。
まず『狸御殿』といえば、実は昭和初期にまで遡るニッポン・ミュージカル映画の創世記からの人気シリーズ。時代劇をベースにレビューを取り込んだスタイルは、様々な映画・舞台を生みだし、それらの作品には宝塚や松竹少女歌劇の出身者が数多く関わってきました。
この歴史については、佐藤利明氏(娯楽映画研究家)による貴重な資料を基にした詳細な解説を今公演の舞台写真と共に掲載いたしましたので、是非お読みになってください。
ニッポン・ミュージカルと「狸御殿」 佐藤利明(娯楽映画研究)
そして、今回の劇中劇の元ネタとなっている落語『死神』。
これは「落語『死神』の世界(西本晃二著・青蛙房)」という本が出ている程の有名な噺で、「借金のため首を括ろうとしている男の前に死神が現れて「お前は医者になれ。診察の時に足元に死神が座って居たら呪文で死神を消せば病人は治る。枕元にいたら寿命だからあきらめろ。」と呪文を教えて去ります。その通りにして成功した男ですが、ある時大金に目が眩んで枕元に居た死神を・・・」というのがあらすじ。
さらにミュージカル『エリザベート』。
これはご存知の方も多いと思いますが、オーストリア皇妃エリザベート暗殺犯のルイジ・ルキーニが自殺した後、天国と地獄の間での裁判で「エリザベートを殺せ」と命令したのは「死」を支配する黄泉の帝王・トート(=死)であったと主張。そこからエリザベートの生涯とハプスブルグ家の衰退を描いた回想劇となっていきます。ちなみに“トート”の名はドイツ語の「tod」=「死」から来ています。
この他にも、様々な舞台のパロディや仕掛けが隠されていて、あっと言う間に感じる3時間。一度ご覧になれば、その魅力にハマってしまうかも知れません。
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