7・8月の芸術座公演は、浅田次郎氏の小説「椿山課長の七日間」(朝日新聞社刊)を原作に、堀越真=脚本、西川信廣=演出のハートウォーミング・コメディ、『舞い降りた天使』。
男が女に生まれ変わってしまうというコミカルな設定を軸に、家族愛、友情、そして「本物の恋」を描く物語です。
出演は、「オヤジ」椿山課長から生まれ変わった美人スタイリストに芸術座初座長となる萬田久子さん。家族のために一生懸命働くが、46才にして過労で命を落とす中年デパートマン・椿山に平田満さん。椿山と同期入社の親友で、20年以上、密かに椿山を愛し続けるキャリアウーマンに加賀まりこさん。ヒットマンに狙われて突然命を落とし、大学教授に生まれ変わるテキヤの親分に山下真司さん。ボケて鉄道唱歌を歌っているが、実はボケたふりをしていただけ、という椿山の父親役に藤村俊二さん、などなど多彩な顔ぶれ。
ものがたりは、過労で死んだ椿山和昭が、生前の罪を審査するSAC(スピリッツ・アライバル・センター=昔は冥土と呼ばれていた)に送られ、あの世行きの講義を受けるところから始まります。
しかし、残してきた家族が気がかりの上、言い渡された「邪淫の罪」にも納得できない椿山は異議を申し立てて、初七日までの数日間だけ現世に戻る「特別措置」を許されます。
かくして、美人スタイリストとして生まれ変わった椿山は、家族や友人との再会を果たしますが、その再会によって生前は全く知らなかった数々の秘密が明らかになってゆき・・・
舞台稽古の合間に記者会見に臨んだ萬田さん、平田さんらは「稽古は良い感じでいってます。」と笑顔のコメント。原作と違い萬田さんと平田さんが同時に舞台に登場しますが、平田さんは萬田さん以外の人には見えないという設定のために、他の方にとっては目線が難しい、とか、つい「あなた方」と言ってしまう、などのエピソードも披露され、皆さん和気藹々の様子。
平田さんを一途に慕う役の加賀さん。浅田さんが理想的なオヤジ像として描いたという父親役の藤村さんなど、人物設定も暖かいハートウォーミングなストーリーで、「中年の男性がホロリと身につまされ、涙して帰る芝居」になったと話す出演者の方々。
まもなく梅雨も明け、暑い夏がやってきます。
涼しい劇場で、笑って泣いて心は暖かくなる、そんな過ごし方はいかがでしょうか。
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