ときは江戸時代後期。
行政の行き詰まりから幕府の力は衰え、
関八州一帯は悪の温床と化していた。
暴力が全てを支配する無法地帯――。
砂塵吹きすさぶ荒れ果てた宿場町は
二派のやくざの絶えぬ争いに音も無く静まり返る。
そんなおり、ひとりの素浪人がぶらりと現れた――。
黒澤明監督の「用心棒」といえば、1961年に公開され、海外でも様々にリメイクされるなど、黒澤作品の中でも人気の高い痛快娯楽時代劇作品の名作ですが、その『用心棒』が黒澤プロダクションの協力を得て舞台化され、2002年11月の梅田コマ劇場公演に続いて、新宿コマ劇場11月公演として上演されることになり、制作発表会見が都内で行われました。
この舞台で、映画で三船敏郎が演じた主役の「桑畑三十郎」を演じるのは松平 健さん。
映画同様、豪快でスピード感ある太刀さばきでのリアルで迫力の有る殺陣廻りが一つの見せ場となります。
その敵役・卯之助。着流しにマフラー、拳銃を手にしたキザな男を演じるのは永島敏行さん。映画で仲代達矢が演じた切れ味鋭いキャラクターをどのように見せてくれるのでしょうか。
さらに、対立するヤクザの親分、馬目の清兵衛(映画:河津清三郎)と新田の丑寅(映画:山茶花究)には近藤洋介さんと横内正さん。清兵衛の女房で女郎屋の女主人・おりん(映画:山田五十鈴)に大空真弓さん、棺桶屋の桶重(映画:渡辺篤)には藤村俊二さんと、名作時代劇の舞台化に相応しい豪華で重厚なキャストが揃いました。
記者会見の席に役柄の衣裳・扮装で現れた出演者の面々。
素浪人役は初めてという主演の松平さんは「今までは侍の役が多く、所作事などに気を遣っていたが、今回は意識せずに自然に演ることを心がけて、自分なりに素直に出来たのではないかと思う。映画を何回も見て、野性的な素浪人は参考になったが、舞台ではより人間的な三十郎を見せたい。」と意欲を見せます。
永島さんは「子供の頃から映画と野球が好きで、黒澤作品は全部見ています。自分がその世界に入るとは思いませんでしたが、映画を意識せず、お客さまに「斬られて死んで良かった」と思って貰える芝居がしたい。」と、こちらも敵役としての意気込みの入ったコメント。
また、大空さんは「映画をあまり意識すると手も足も出なくなるので、ただ松平さんに惚れて行きたい。」と語りますが、その姿は既に迫力充分。そして藤村さんは「私は意気込みが無いタイプだし、力を入れてと言われても入らない。科白の無い時は松平さんを「凄い」と思って、観客として見てます。」と周囲を笑わせます。
「最初はプレッシャーが有った。」と松平さん。「しかし、梅田コマの公演を観た(黒澤監督の長男である)黒澤久雄さんに良かったと言われて自信がつきました。今回はさらにパワーを付けて頑張ります。」と語る姿は、既に役柄とダブって見える程の存在感があります。
物語は宿場町の中だけで展開するため、宿場町のセットを舞台上に再現するスケールの大きさも話題のひとつ。臨場感あふれる舞台機構を生かした演出と演技力に圧倒される作品となりそうです。