シアターフォーラム    
シアターフォーラム 特殊メークで92歳の老婆に。『幸せの背くらべ』公演中


黒柳徹子



阿知波悟美

真堂藍

青木要
 『幸せの背くらべ』(原題:THREE TOLL WOMEN)は、アメリカを代表する劇作家エドワード・オールビーが自身の母親をモデルに創作し、1994年ピュリツァー賞を受賞した傑作戯曲。日本では1996年に高橋昌也演出・黒柳徹子主演で1996年に初演され、この演技により黒柳さんは第38回毎日芸術賞、第4回読売演劇大賞の大賞と最優秀女優賞を受賞した名作です。

 その後、この作品は97年に再演、以来「劇団NLT」公演として全国各地で隔年上演されてまいりましたが、今回、初演と同じ「ル テアトル銀座」(初演時は銀座セゾン劇場)、そして「シアター・ドラマシティ」で上演されることとなり、その舞台稽古が公開されました。

 黒柳さんと言えば、トーク、クイズなどのテレビ番組での活躍、ユニセフ親善大使としての活動、ろう者劇団へのサポートなど様々な方面で精力的に行動されていますが、舞台俳優としても銀座セゾン劇場(現:ル テアトル銀座)で1989年の『レティスとラベッジ』から1999年の『マレーネ』まで11演目、13公演に主演。その後、パルコ・プロデュースとなってからも、『レティスとラベッジ』(2000年)『ポンコツ車のレディ』(2001年)『ブロンドに首ったけ』(2002年)と、毎年主演の舞台を演り続けています。

 この作品で黒柳徹子さんが演じるのは、92歳の大金持ちの未亡人。特殊“老け”メイク(デザイン:江川悦子)を行って、裕福だが独善的、傲慢な老婦人に扮し、自慢話や愚痴話、死んだ両親や夫のこと、家出してしまったひとり息子のことなど、とめどもない長広舌を語り続けます。


 舞台稽古の後で会見に臨んだ黒柳さんは「若い恋人同士の方にも来ていただきたい。幸せが何時かが分りますから。」とアピール。ご自身では「やっぱり、人生で最高の時は今。仕事が有って健康なので「あと10年・20年若かったら」と思うことは無い。」と、充実した現在に満足の様子。目標は「100歳まで生きて、芝居をすること。」だそうで、「健康で歩けて、元気で前向きで居たい。」と意欲を見せます。

 顔と手に施す特殊メイクは、本人の型を取って作られたそうで、近くで見てもリアルなもの。黒柳さん自身も「出来るだけそれらしくしたいし、この手や顔を見ると、92歳の役に入れます。」と、その出来栄えには満足気。また声や役作りについても、「ドキュメンタリーなどを参考にしました。また、声帯にも皺が寄るので声も変わりますが、テレビでつい老け声になってしまったこともあります。」とエピソードを明かします。

 喋り続ける科白についても、「どんな人か、何を考えているか。そういう積み重ねが大切で、科白を覚えるのは最後の作業。氷山と同じで下に役創りが有って、科白は上の一部分なので、役が創ってあれば科白覚えは大変じゃありません。」と、一幕だけでも500行は有るという膨大な科白も、脚本通りだという黒柳さん。
 テレビのドラマには出ないと30年前に決めたそうで、女優・黒柳徹子を観たい方は劇場に足を運ぶしかないようです。


 共演は、婦人の世話をする中年女性に、ミュージカル『レ・ミゼラブル』『エリザベート』『モーツァルト!』などでも強烈な印象を残した阿知波悟美さん。弁護士事務所から派遣された若い女性には、劇団NLTの新進女優で『マダム・バブル』『カラミティ・ジェーン』で黒柳さんの娘を演じた真堂藍さん。そして初演にも出演の青木要さん。

 

 人生の最高に幸せな時はいつなのか・・・。いかに老い、いかに死ぬか・・・。
 決して避けて通ることの出来ないテーマを問う、心に響く珠玉の舞台は、この秋の注目と言えそうです。



『幸せの背くらべ』

10月8日(水)〜10月26日(日)
  東京・ル テアトル銀座
    お問合せ:パルコ劇場(03-3477-5858)
11月6日(木)〜11月9日(日)
  大阪:シアター・ドラマシティ
    お問合せ:シアター・ドラマシティ(06-6377-3888)


   

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