2004年の初頭を飾る日生劇場の公演は、芥川龍之介の多彩な作品群から「羅生門」「河童」「開化の殺人」「偸盗」などの珠玉の名作を選りすぐってドラマ化した新作劇、『羅生門』。
河童たちの住む沼から、シャンデリアきらめく鹿鳴館の夜会へ、また一転して盗賊の横行する荒れはてた平安京へと時間と空間を超えて展開する、美しく、そして少々恐ろしい、激しい恋の物語です。
「女たちのまぼろし」と副題のついたこの作品の製作発表が12月10日に都内で行われ、浅丘ルリ子、仲村トオル、原田美枝子、岩崎加根子、富田靖子、保田圭といった豪華俳優陣に加え、脚本の堀井康明、演出の星田良子が出席して作品に対する意気込みを語りました。
来年がデビュー50周年となる浅丘ルリ子さんは、この舞台で河童のバッグ、羅生門の老婆、沙金の3役を演じます。
河童・四姉妹の次女バッグは人間である北畠義一郎(仲村トオル)を河童の世界へいざない、時には「羅生門」の中の老婆として死人の髪を抜き、又ある時には「偸盗」の女盗賊・沙金として河童たちが演じる幻想の世界に北畠を先導して、人間の本質を見せつけているうちに、彼と恋に落ちていきます。
その相手役となる仲村トオルさんは、北畠義一郎、次郎、多襄丸とこちらも3役。「開化の殺人」「開化の良人」の主人公、医者で詩人で小説家の北畠義一郎は、人妻の満村明子(原田美枝子)という初恋の人への思いを断ち切れないので、三浦勝美(富田靖子)の好意を素直に受け入れられず、思い悩んでいるところをバッグの誘いで、河童が演じる異郷の世界をさまよい、時に「偸盗」の次郎として、あるいは「藪の中」の多襄として人間の本質を垣間見るうち、バックと恋に落ちてしまいます。
原田美枝子さんは河童のラップ、満村明子、小萩、真砂、看護人と5役。河童・四姉妹の三女ラップは、姉のバックが河童の世界に北畠を連れてくることに反対していますが、結局、河童の世界の中で、「地獄変」の小萩や、「藪の中」の真砂、「開化の殺人」の看護人を演じることになります。
岩崎加根子さんは河童のチャック、猪熊の婆、巫女、巡査の4役。河童・四姉妹の長女チャックはしっかり者で、バッグが次第に人間に惹かれていくのを気にしています。他に「楡盗」の猪熊の婆や、「藪の中」で死人を呼び戻す巫女役、そして巡査の役を演じます。
そして、富田靖子さんは他の出演者が様々な役替りを演じるのに比して、三浦勝美の1役のみ。三浦勝美は北畠義一郎のことを好きで追いまわすが相手にされず、また河童を見る事が出来ないので、北畠が河童たちと会話しているのが、冗談を言っているか、気が狂ったかの様に見えてしまいます。
元・モーニング娘。の保田圭さんは河童の末娘ペップ、阿濃、巫女のお供、看護人と4役。ペップは末っ子なので明るく甘えん坊でバックに協力的。また「偸盗」の阿濃役として、妊婦役、母親役もこなし、1幕最後には赤ん坊をあやすために子守唄を歌うシーンもあります。
浅丘さんを始めとする舞台経験豊富なキャストに混じり、初舞台となる中村トオルさん、モー娘。卒業後初の舞台出演となる保田圭さんと新鮮なパワーの加わったこの舞台。絢爛たる夜会から荒涼たる場面まで、初春に相応しい、幻想的で華麗で妖艶な世界がステージの上に現出するのではないでしょうか。