「生きのびる」ために必要なことは「ずる賢さ」
「生きる」ために必要なこと、それは「愛」
1934年、ナチス政権下のベルリン。その独裁政権下で迫害され弾圧された同性愛者の姿を通して、人間の尊厳そして愛を描いた作品、マーティン・シャーマン作『ベント』。
この『ベント』が椎名桔平さん、遠藤憲一さん、高岡蒼佑さん、篠井英介さんらの出演でパルコ劇場では19年ぶりに上演されることとなり、1月6日に行われた舞台稽古には、話題の舞台とあって大勢の報道陣が集まりました。
最後の舞台稽古を前に行われた会見で、主人公のマックスを演じる椎名桔平さんは、「稽古場でやったことを劇場に向けて調整をしている段階ですが、(この舞台稽古で)一つの完成形にしてお見せしたい。」と力強いコメント。
「戦時下の独裁政権下の政治的なものや、同性愛としての恋愛という特色を持っている舞台ですが、色んな状況に置きかえられる舞台だし、特殊な環境に置ける人間関係というフィルターを通すことで、より人間を生身で立たせ、よりいっそう人間の尊厳・愛情が自然と浮き出てくる戯曲です。」との言葉にも力が篭り、この舞台にかける強い意気込みを感じさせます。
2幕は殆ど椎名さんと遠藤さんの2人芝居となりますが、そこで展開されるラブシーンについても、「純粋な愛のラブシーン、触ることも顔を見ることも出来ない収容所でのラブシーンで科白だけです。言葉だけを追うと衒いが有るやりとりですが、感情を通してエネルギーを届けたい。」と意欲的な椎名さん。
そして「同性愛」の部分が話題になっていることについては、「初演時は同性愛の捕らえ方がセンセーショナルでしたが、18年経って世の中も変わり、ゲイ・同性愛が奇抜ではなくなってきています。だからこそ、今これを演ることによって、人間同士の普遍的な大事なものを探して、そういうものを浮かび上がらせることが自然に出来ると思う。同性愛を意識はしていません。」と、純粋な愛のドラマであることを強調します。
これには共演の篠井さんも「崇高で純粋で突き詰めた愛の姿。愛の姿は男女問わず胸を打つんです。」と共感のコメント。そして「良いメンバーと現代演劇の十指に入る良い作品です。混迷とした社会の中で演劇をやって「頑張ろう、人を信じよう。」と伝えたい。」と、こちらも意気込みを見せます。
21年ぶりの舞台出演となる遠藤さん、篠井さんに「可愛いくて、これからはゲイの役が沢山来ると思う。」と言われた高岡さん。この4人の男性を中心に展開される舞台からは、一時も目の離せない緊張感と、究極の愛の姿が伝わって、観客である貴方の胸を貫くことでしょう。