シアターフォーラム    
シアターフォーラム 宮本亜門、『太平洋序曲』で東洋人初のBW演出家に

 ミュージカル『太平洋序曲』は、スティーブン・ソンドハイム(『ウエストサイド物語』『リトル・ナイト・ミュージック』『イントゥ・ザ・ウッズ』などの作詞や作曲を担当)、とジョン・ワイドマン(『エニシング・ゴーズ』『ビッグ』『コンタクト』などの脚本を担当)という二人のアメリカ人によって創られた、黒船来航時の日本を舞台にした作品で、1976年にブロードウェイで初演されてトニー賞の2部門を受賞しました。

 日本では2000年10月、東京・新国立劇場において宮本亜門演出により初演されましたが、この舞台を世界文化賞授賞式の為に来日していたソンドハイム氏が観劇して「これ以上素晴らしい『太平洋序曲』はない」と高く評価。彼の強い推薦により、2002年にニューヨークのリンカーンセンターと、ワシントンDCのケネディ・センターでの上演が実現し、さらに同年10月の東京での凱旋公演も大成功を収めました。


 そして2004年秋、宮本亜門氏は、本格的な公演ではブロードウェイ史上初となる東洋人演出家として、アジア系アメリカ人キャストによる英語版の『PACIFIC OVERTURES ミュージカル「太平洋序曲」』により念願のブロードウェイ進出を果たすこととなり、7月21日、米国側プロデューサーなどが同席しての制作記者発表が行われました。


 宮本亜門氏は「トントン拍子に来たと思われるかも知れませんが、色々な段階がありました。ロンドン版の『太平洋序曲』からも売込みがあったそうで、プロデューサーから「是非、このヴァージョンをやりたい」と言われた時は、――実は、前日に「もし上演が決まったら丁寧な英語で喋るように」と言われて練習していたのですが、――「イエス! イエス!」と興奮するだけで、後で落ち込みました。」と、これまでのエピソードを披露。
 「この作品をブロードウェイで演る事以上に、英語で演りたかった。美しいソンドハイムの詞、ワイドマンの言葉を直接伝えたかった。今のアメリカ人に伝えられるものが有ると確信しています。」と熱を込めて語ります。


 美術の松井るみさんは「この舞台には初演から関わってきて、非常に気に入って大事で愛している作品です。亜門さんと仕事をするのは大変ですが(笑)、このチャンスを活かして自分の持っているものを全部出して、めげずにやりたいし、素晴らしい作品なので、世界中の方に見ていただきたい。先日インターネットを見ていたら、ヤンキースの松井秀喜、メッツの松井稼頭央に続く、「3人目のマツイになれ」という言葉が出てきました(笑)。その言葉を大事に頑張っていこうと思っています。」と、ブロードウェイへの進出に興奮冷めやらぬ様子。

 また、今回から参加する衣裳のコシノジュンコさんは「2年前に(時代が同じ)蝶々婦人をやったよね、ということから突然話がきて、これまでの苦労を知らずに一番ラッキーなのは私で、嬉しく参加させていただきます。日本の物語で誤解もあると思うので、素晴らしい日本の文化を世界に出して、日本を感じさせて、目で見る日本の文化をもっともっと表現したい。日本の優雅さと華やかさ、鎖国とその中に入ってきたアメリカ、日米の両極のバランスを取ってその面白さを表現し、舞台装置に生える衣裳を考えたい。」と、抱負を述べます。


 今回の上演に際しては、「セットも細かく変更されて派手になり、衣裳の色合いも変わって、エンターテイメント度が濃くなります。」と語る亜門さん。「劇場に合わせて新しい演出が増えますので、劇場の雰囲気を楽しんで欲しい。芝居の最後は現代ですので、時代に合せて台詞が変わってきますし、(脚本の)ワイドマン氏も「もう一度新作のつもりで作ろう」」と言ってくれています。」と、さらに磨き上げられた舞台創りに腕を撫します。
 出演者は3ヶ月に渡るオーディションで選ばれた、日本人女性3人を含むアジア系の実力派揃いということで「彼らの実力を見て欲しいし、とにかく楽しい時間を過ごして欲しい。ポスターを見ても解かるが、今までのブロードウェイには無い、シンプルでありながら魅力的な新しいセンスでぶつかってきている。」と力の入る亜門さん。


 公演はこれまで『キャバレー』『アサシンズ』などが上演されてきたブロードウェイのStudio54劇場(254 West 54th Street,New York,NY)で行われ、主演は『M.バタフライ』でトニー賞、ドラマ・ディスク賞などを受賞したB.D.ウォン(B.D.Wong)氏が決定しています。
 プレビュー公演は11月12日より開始され、12月2日から本公演がスタートする予定で、2005年2月中旬までの期間限定公演と発表されていますが、「出来れば規模のより大きな他の劇場に移して、延長してロングランの形に持って行きたい。」と語る米国側のプロデューサー。


「人生の中でもっとも大きな扉を開ける大きな節目。これからの世界に向けて何かをしたい。」「この扉を開けて、世界中のエンターテインメントがひろがればいい。」とさらに、その先を見据える亜門さん。

 果たして、この舞台がどのような評価を受け、どのような成果を収めるのか。演劇ファンならずとも大いに注目したいところです。

 

宮本亜門
宮本亜門(演出)



松井るみ(装置)

コシノジュンコ(衣裳)

装置模型

ポスター

会見風景


後列左より:マイケル ウォーク(ゴージャスエンターテイメント 会長)、吉井久美子(ゴージャスエンターテイメント 社長)
トッド ヘイムズ
(ラウンドアバウト・シアター・カンパニー)、紿田英哉(国際交流基金 理事)
前列左より:コシノジュンコ、宮本亜門、松井るみ  

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