現在、東京・新宿の紀伊國屋サザンシアターで上演中の、劇団
Studio Life 公演『ドリアン・グレイの肖像』
原作者は、ビアズリーの挿絵でも有名な戯曲『サロメ』や、童話集「幸福な王子」など数々の名作を残した、19世紀末を代表する作家、オスカー・ワイルド。
そのワイルドの唯一の長編小説である「ドリアン・グレイの肖像」は、退廃と美学に彩られた耽美な文学であり、これまでに幾度も映画化、舞台化されて多くのファンを持つ作品ですが、今回は倉田淳氏による新たな脚本・演出で、その名作に挑みます。
劇団 Studio Life は、1985年に結成された男優のみで構成されている劇団で、『トーマの心臓』(原作・萩尾望都)『ヴェニスに死す』(トーマス・マン)『死の泉』(原作・皆川博子)などの文芸耽美作品を始めとして、人の心の機微を深く追求する作品を精力的に送りだし、多くの演劇ファンからの注目を集めてきました。
また、最近では、大坂・名古屋・福岡など地方都市にも公演規模を拡大し、各地でも好評を博している他、所属の俳優も他公演への客演・出演やテレビなどのメディアへの出演が増加するなど、劇団・俳優ともに成長を続けている期待の劇団です。
シアターフォーラムでは、その Studio Life 公演『ドリアン・グレイの肖像』の舞台稽古を独占取材、さらに舞台稽古終了後には、出演者の方にインタビューを行って、今回の公演に向けての抱負や、意気込みなどを伺いました。
インタビューに応じていただいたのは、ドリアン・グレイ役の山本芳樹さん、ヘンリー・ウォットン卿役の笠原浩夫さん、シヴィル・ヴェイン役の及川健さんの御三方。山本さんと及川さんは舞台稽古終了直後ということで、衣裳・メイクもそのままでのインタビューとなりました。
美貌の青年・ドリアンを演じる山本さんは「単純に“美貌”にどう説得力を持たせようかと悩みましたが、それは内面的なものから出てくると思うので、美しい精神を持った青年の枠を作るのが大変でした。」と、役創りについての苦労を披露。
また、ドリアンに強い影響を与える快楽主義者・ヘンリー卿を演じる笠原さんは「ヘンリー卿は19世紀後半だからこそ疎まれていますが、現代では当然と言うか、有る意味誰でも理想とする観念を持っている人であることを踏まえて、誰もが隠し持っていて触れないようにしているものをグッと掴んで、「おっ!」と思わせるような人物にしたい。演り甲斐は有りますが難しく、目標が高いですが頑張りたい。」と、ストーリーの要となる人物だけに、力が入ります。
そして、ドリアンに恋し、やがて破滅させられる天才女優・シヴィルを演じる及川さん。劇中劇では『ロメオとジュリエット』のジュリエットも演じますが、「シェイクスピアは初めてで、自分がジュリエットを演るとも思えませんでした。天才女優といっても夢見る少女で、周りが状況を説明してくれるので気負わず、普通に演りたい。」と“女優”としての風格を伺わせます。
また、この舞台の見所や魅力について
「凄く“美”というものにこだわっていると思うので、空気とかセット、衣裳、役者の内面から出るもの、仕草、色々な美しさを感じて感動していただければと思います。」(山本さん)
「ワイルドが何を書こうとしたか? 感じるのは、美を追求した時にその先に何があるのか、人は何を美と思うのかということを、御客様を交えて役者が追求できる作品だと思います。」(笠原さん)
「僕は自分でもイラストを描きますが、描きたい相手に出会った画家がその画に翻弄されて行くと言うのは、画を描くものとして面白いと思います。最後にはサスペンスもあって、凄く好きな作品です。」(及川さん)
と、それぞれにポイントを語っていただきました。
快楽主義者ヘンリー卿の流麗なレトリックと深い洞察。その危険な誘惑に豹変していくドリアン。そしてドリアンに翻弄されるシヴィル。Studio
Life ならではの美意識と魅力に溢れた『ドリアン・グレイの肖像』は、ワイルドの描き出す華麗で退廃的な世界に観客を誘う舞台と言えそうです。
なお、このインタビューの模様は、動画でもご覧頂ける様に現在作業を進めておりますので、こちらも、どうぞ楽しみにお待ち下さい。