シアターフォーラム    
シアターフォーラム 48年の歴史にさよなら芸術座 『放浪紀』千穐楽  - 前編 -

全員揃って
暖簾
芸術座開場公演『暖簾』 (1957年4月)
出演 森繁久彌ほか  写真提供:東宝演劇部
森光子と池内淳子

カーテンコールをする森光子
客席の隅々まで見渡してお辞儀をする森光子さん

 1957年(昭和32年)4月25日に山崎豊子原作、菊田一夫脚本・演出による『暖簾』でその輝かしい歴史のスタートを切った芸術座。
 帝国劇場、東京宝塚劇場などが立ち並ぶ東京・日比谷の劇場街で、以来48年間に渡り、『がめつい奴』『華岡青洲の妻』『雪国』『三婆』『たぬき』『渡る世間は鬼ばかり』などなど、日本を代表する名優たちが演劇史に残る舞台を送り出し続けてきました。

 中でも、開館の翌年1958年11月に『花のれん』で芸術座初出演を果たした森光子さんは、その後、『おもろい女』『雪まろげ』『放浪紀』など全33演目に出演、その合計は延べ約120ヶ月間にも及び、文字通りの看板女優として同劇場を支えてきました。


 そして2005年3月27日、その森光子さんの代表作である『放浪紀』の芸術座での1455回目(通算上演回数では1759回目)となる公演をもって、東宝本社ビルの建て替えのため現・芸術座はその幕を降ろし、2007年11月にオープン予定の新劇場にその役目を引き継ぐこととなりました。

 現・芸術座最後の日、『放浪紀』千穐楽の舞台の最後の幕が静かに降り、カーテンコールで舞台に一人正座した森光子さんが、名残を惜しむように何度も礼を繰り返しますと、満員の客席からはいつまでも続くような大きな拍手が響き続きます。


 その後、再び幕の上がった舞台には「48年の拍手につつまれて 祝 大千秋楽 あたたかいご声援をありがとうございました」と書かれた大きなパネルが下げられ、その下に出演者が勢揃いして、主な出演者より一言づつの御挨拶となりました。

青木玲子
青木玲子さん
48年前にここで初舞台を踏ませていただいたのが私の演劇人生の始まりでございました。そして菊田先生のご薫陶を受けて数々の名作に出させていただき、今日1759回目の『放浪紀』で最後の芸術座に出させていただきましたことを本当に幸せだと思っております。
深江章喜
深江章喜さん
舞台に出ては悪たれをついている土建屋の田村を演っております。当劇場で悪たれをつくのは今日で終わりですが、何年か後にはまた田村を演りたいと思っております。
中島久之
中島久之さん
今日、芸術座の記念すべき千穐楽の舞台にこうして立って居られる事、大変感激致しております。これも森さんを始め、この芝居に関わっている全ての方、劇場の方々、そしてお客様方のお陰と心から感謝を申し上げます。
有森也実
有森也実さん
また美しく神々しい森さんとお芝居が出来てとっても幸せです。毎日勉強させていただいています。今日この特別な日の事は、事有る毎に、お芝居をする度に思い出すこととなります。こうやってここに居られる事が本当に幸せに思います。それは芸術座を愛してくださったお客様、そしてスタッフの皆様のお陰だと思っています。感謝しています。
大出俊
大出俊さん
こういった挨拶と言うものは先人の言った事を言わない様にするのがルールでございますけれども、今日だけは御勘弁ください。それは何故なら、舞台に居る人間は感動が一緒なんです。長い歴史のある芸術座で伝統ある『放浪紀』という作品に出演させていただき、今日という日を迎えられる事を本当に役者冥利に尽きると思います。この感動をこれから仕事にも人生にも、腹の底にデンと据えてやっていきたいと思います。
斎藤晴彦
斎藤晴彦さん
1732ステージ目から出させていただきました。少年時代に菊田一夫先生の「鐘の鳴る丘」を毎日聴いて生きてきた者でございます。まさか菊田先生の芝居が出来るとは夢にも思っていませんでした。3月4日に菊田先生ゆかりの芸術座の初舞台を踏ませていただきました。本当に万感の思いです。1759回という凄まじいロングランですが、毎日舞台で「なるほど、そのくらいの事は出来る作品だ。」と感じて、役者ではありますが毎日感動して舞台に出ております。この芝居がまだどんどん演れるようにと思っております。
大塚道子
大塚道子さん
この尾道の母になりましてから18年になります。最初は新参者でドキドキしながら出ておりましたが、少し楽になって参りました。本当に素晴らしい作品、素敵な俳優さんたち、裏方の皆さん、表方の皆さん、ご一緒にお芝居が出来て本当に幸せです。そしてこの芸術座がこれでもうお別れだと言うので最後にひとつ申し上げたいのは、ここの裏方さんの優しさとお行儀の良さに本当に感謝しています。劇場が新しくなった時に、またこの舞台に立てる事を祈っております。
米倉斉加年
米倉斉加年さん
(ゆっくりと劇場を見渡して)ありがとうございました。
山本學
山本學さん
私も一言しか申し上げられません。本当に芝居、人生、いろんな事をこの舞台を通して教えていただきました。いろんな方々に心から御礼申し上げます。
池内淳子
池内淳子さん
まだまだ新人です。1759回ですが私はまだ28回です。この3月に参加させていただいて、本当に奥の深い作品だなと思いました。いつもそちら側で拝見していたのですけれども、まさか自分で『放浪紀』でこちら側に来るとは思っていませんでした。でも本当に皆様の温かなお心でどうにかここまで来る事が出来ました。この齢になって、こんな素敵な事が起きるんだな、生きているのも、齢を取るのも悪くないなといまつくづく思ってます。こうしてお声を掛けていただいた、森さん始め関係者の方々のご配慮にとっても感謝しております。芸術座が無くなるのは本当に悲しいんです。本当に素敵なスタッフが大勢揃ってらっしゃいます。またここから皆様にお目に掛かれる事を本当に楽しみにしております。
 「『放浪紀』千穐楽 - 後編 -」に続く

   

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