梅田芸術劇場メインホールでの本格的な宝塚歌劇公演の第一弾となるこの公演は、この作品から新たに月組男役トップとなる瀬奈じゅんさん、同じく娘役トップとなる彩乃かなみさんの、新コンビ披露公演でもあります。
『Ernest in Love』は、「サロメ」「ドリアン・グレイの肖像」「幸福な王子」など多彩な著作で知られるオスカー・ワイルドの喜劇「まじめが肝心」を原作に、アン・クロズウエルが脚本・作詞を、リー・ポクリスが作曲を手掛けて、1960年にオフ・ブロードウェイで上演され、小品ながら好評を博した、陽気でお洒落なミュージカル作品。
イギリスの詩人・劇作家・小説家、世紀末デカダン唯美主義運動の代表者であり、劇には独創的な形式美を持つオスカー・ワイルドの世界。その風刺的な機知に富んだ様式的なコメディを、アン・クロズウェルの優れた翻案、リー・ポクリスのエネルギッシュで活気に満ちた音楽が、お洒落で陽気なちゃめっけのあるミュージカル作品へと変貌させ、観客を魅了しました。
ヴィクトリア駅でハンドバッグの中に置き忘れられた捨て子の物語、二人の酒落男の名前をめぐって引き起こされる女性たちの混乱、そして2組のカップルの恋の行方。
今回の宝塚版では、木村信司氏の脚本・演出により、作品の持つエッセンスを生かしながらも、日本人に分かりやすく見直し、より華やかにロマンティックに、楽しさ一杯の舞台が繰り広げられます。
制作発表会見の席上で宝塚歌劇団の小林公一理事長は、「旧・梅田コマ劇場から通算して4回目の宝塚公演ですが、今回は本拠地の宝塚大劇場で公演しながらという新しい形で、本拠地とは一味も二味も違う作品で新しい宝塚の魅力を伝えたい、そして梅田の町の雰囲気に合った作品をという事で決めた小粋で洒落た作品です。1960年以来上演されていませんので誰も観た事は無いですが、本を読み、音楽を聴く限り、今の開発されている梅田・茶屋町にマッチしているし、新コンビの魅力を充分に発揮出来る作品だという事で選びました。」と、この作品の上演に至った経緯を説明します。
また今公演の日本語脚本・歌詞、演出を担当する木村信司氏は、「この作品は、オスカー・ワイルドが絶頂期に書いた、最高傑作のコメディであるという事が一番の売り物だと思います。1960年のミュージカル、アメリカが元気で明るかった頃のミュージカルでパワフルで楽しいですし、音楽面ではスコアは5人くらいの編成と書いてありますが、16人位のフルオーケストラヴァージョンで、セットも大きく、豪華な形でみんなで頑張っていこうと思っています。新コンビの新生月組にも期待しています。」と公演へのプランを語ります。
さらに木村氏は「僕の中では柿落としを担当すると言う気持ちがありまして、“梅田コマ劇場”が“梅田芸術劇場”と名前を変えて新たに出発する。そこに歌劇団が大劇場でやった公演ではなくて新しいミュージカル作品で出る、という公演に対する思いがありましたので、劇場・公演の立ち上げが上手く行くようにと頑張ろうと脚本を書きました。
この作品は音楽もいいし、――『ファンタスティックス』などごく一部を除いてオフの作品は大手の会社でCD化されるという事は普通無いのですが、――フルオーケストラできちんと出ています。楽しい作品だということはニューヨークでは一般に知られていて、音楽はCDにも成る位のグレードで捕らえられています。
また、これも初めての試みだと思うのですが、日本人に合うものとして向こうの作品を創って行く事が出来る。直訳や輸入ではなく、脚本も音楽もアレンジが出来るのは脚本家・演出家としては楽しいところだと思っています。」と力の入ったコメントで、舞台に掛ける意気込みも相当の様子。
続いて出演者からの御挨拶となり、4月8日より東京宝塚劇場での公演『エリザベート』では、女役としてタイトルロールのエリザベートを演じている瀬奈じゅんさんは、この公演が男役トップとしてのお披露目になりますが、
「私はこの“梅田芸術劇場”が“飛天”という名前だった時に、一回出させていただいているんですね。その時というのは、阪神大震災で大劇場の安寿ミラさんの公演が中止になってしまって、その後「関西で是非とももう一度やらせていただきたい」という事で飛天でさせていただいたんです。それに下級生=研2くらいで出ていたんですけれど、その時に「本当に舞台に立てるって幸せだな。」って痛感致しました。私にとっては凄く思い出のある飛天という劇場でした。
なので、名前が変わりまして新たな“梅田芸術劇場”と言う素晴らしい劇場、私自身思い出のある劇場で新しいスタートを切れる事をとても幸せに思っております。(木村)先生も仰っていましたが、本当に究極の楽しいコメディなので、真面目に楽しく、本日より月組生になりました彩乃かなみと、そして霧矢と城咲と、それに専科の出雲綾さんの力をお借りして、月組パワーで真面目に楽しく頑張りたいと思いますので、是非宜しくお願い致します。」と意欲の感じられる御挨拶。
そして、4月3日まで宙組公演『ホテル ステラマリス/レビュー伝説』の東京宝塚劇場公演に出演後、会見当日の4月4日付けで月組の新娘役トップとして組替えになった彩乃かなみさんは、
「私も今大変緊張しているんですけれども、瀬奈さん率いる新しい月組、その組を支える一人としてこれからも一作品、一作品頑張って行きたいと思っております。その出発点となりますこの『Ernest
in Love』というお話が、とても明るくハートフルで、楽しそうなミュージカルになると今から私も楽しみにしております。微力ではございますが、これからも頑張りたいと思いますので、宜しくお願いします。」と、こちらも新たなスタートに向けて気合が入ります。
さらに 霧矢大夢さんから「只今上演中の『エリザベート』とは一転して、明るく楽しいミュージカルと言う事で、瀬奈さん、彩乃さんを筆頭に楽しい月組のチームワークをお見せしたいと思います。どうぞ宜しくお願いします。」
城咲あいさんから「私も瀬奈さん率いる月組に一生懸命ついて行きたいと思います。新しく彩乃さんというお姉さまが加わって、これからが凄く楽しみです。一生懸命頑張りたいと思います。宜しくお願いします。」と御挨拶があり、新しい月組の門出となるこの作品に向けて、既に気持ちは一丸となっているようです。
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