シアターフォーラム    
シアターフォーラム 夢枕獏:脚本書き下ろし 創作舞踊劇場公演『陰陽師 −鉄輪恋鬼孔雀舞−』

陰陽師 −鉄輪恋鬼孔雀舞−






 1984年より、社団法人 日本舞踊協会の内部団体として活動をスタートさせ、よりいっそうの創作舞踊の充実と発展を図るために、さまざまな調査やいろいろな研究によって、多角的な視野から協会員が自由に企画・立案した公演を毎年開催し、現代から将来への作品研究に取り組んでいる「創作舞踊劇場」。

 第1回公演『水くぐるものがたり』を国立小劇場で開催して以来、日本舞踊の概念にとらわれる事なく各方面から一流のスタッフを集めて、これまでに『天守物語』『南総里見八犬伝』といった日本の作品から『カルメン』などの海外作品まで幅広いラインナップで斬新な創作舞踊を年一回発表し続けて、今年で22回目の公演を迎えます。


 2005年は、人気作家・夢枕獏氏が自身の原作「陰陽師〜生成り姫〜」を、この公演のために日本舞踊の脚本として書き下ろし、古典芸能では馴染みの物語に氏の世界観を加えて、現代性を交えた新しい作品、『陰陽師 −鉄輪恋鬼孔雀舞−』(かなわぬこいはるのパヴァーヌ)。
 現代性を交えた新しい「日本舞踊 陰陽師」は、6月23日から東京・銀座一丁目のル テアトル銀座で上演されますが、そのプレビュー公演が22日に行われ、関係者のほか、普段日本の伝統芸術に触れる事の少ない日本語学校に通う外国人の方などが、絢爛たる舞台を楽しみました。

 一般的には馴染みの薄い創作日本舞踊ですが、関係者の様々な努力により、毎年の公演も徐々に観客数が増加し、今回は客席数774席のル テアトル銀座で8公演が行われます。


 今回の演出を担当する花柳芳次郎氏は「久しぶりの日本的な題材で、美しい着物で美しく舞う雅な世界をお届けします。観ていただく方に解かりやすい踊りを創って、創作舞踊・日本舞踊の面白さ、楽しさ、決して難解なものではない事を知っていただきたい。」と意欲的なコメント。

 また振付担当の花柳寿南海氏は「この騒がしい世界の中で、大きな世界観の中で動いている人間の怖さ、面白さを“陰陽師”と言う作品から感じさせていただいたので、良いものを創って、お客様に楽しんでいただき、考えていただけるような美しい作品にしたい。」とその狙いを語ります。

 そして原作・脚本の夢枕獏氏は「小説を書くことは孤独な作業で、舞台の脚本を書くことも同じなのですが、小説と違うのは僕が書き上げた時点ではまだそれは完成されていないと言う事。全体の半分にも満たない状態だと思います。いつも一人でやっている小説家にとって共同作業、つまり全体の一部となることはなかなか刺激があり、書き手のイメージを超えたものが舞台上に出来あがって行くのが面白く楽しいのです。今回は謡曲の“鉄輪”の詞を使いながら僕の新しい詞を入れて『陰陽師 −鉄輪恋鬼孔雀舞−』を書き上げました。台本が完成した瞬間から僕は一人の観客であり、どんな舞台になるのかワクワクしています」とメッセージを寄せました。


 藤舎呂船氏の作曲、有賀二郎氏の美術、沢田祐二氏の照明、さとう うさぶろう氏の衣裳などに加え、劇中でのイリュージョンにはマジシャンの藤山新太郎氏が協力し、観客をあっと驚かせる仕掛けを施します。

 伝統的古典舞踊の礎の基に築かれる、新しい日本舞踊の姿は、舞踊愛好家のみならず、全ての舞台ファン、演劇ファンをも魅了する刺激的な舞台となりそうです。


陰陽師 −鉄輪恋鬼孔雀舞−第22回創作舞踊劇場公演
  
『陰陽師 −鉄輪恋鬼孔雀舞−』(かなわぬこいはるのパヴァーヌ)
 原作・脚本:夢枕 摸  演出:花柳芳次郎  振付:花柳寿南海
出演  安倍晴明 役  尾上青楓(星組) 花柳典幸(月組)
  源 博雅 役  市山松扇(星組) 西川扇与一(月組)
  葦屋道満 役 藤間章作(星組) 尾上菊之丞(月組)
  徳子姫  役 藤間藤太郎(星組) 橘芳慧(月組)
     
  ほか

日程  2005年6月23日(木)〜6月26日(日)  全8公演
会場  ル テアトル銀座
料金  6,800円   学割 4,800円(当日券のみ)  全席自由席
※学割は開演1時間前から会場のみで発売
お問合せ  社団法人 日本舞踊教会 03-3533-6455
メール onmyoji@dance-holic.com

公式サイト 
創作舞踊劇場サイト 


【作品概要】

 夢枕獏氏が自身の原作「陰陽師〜生成り姫〜」を本公演のために新たに書き下ろした。「生成り姫」は室町時代に生まれた謡曲「鉄輪」に想を得た作品(舞踊でも地唄「鉄輪」が有名である)。
 鬼と化した女から呪われる男を安倍晴明が護る話で、晴明と、原作でも重要な役割を果たす晴明の盟友源博雅を軸に展開される。
 古典芸能では馴染みの物語を夢枕獏の世界に脚色、現代人の共感を得る創作日本舞踊として表現する。

■鉄輪(かなわ) 〜カナワヌコイ〜
 鉄輪(かなわ)とは昔、火鉢の中に置いた五徳のことで、鉄の輪に三本の足をつけたもの。
 やかんなどを乗せて湯を沸かす為のものだが、この鉄輪を逆さまにしてその足にロウソクを結びつけ、火をつけた鉄輪を頭に乗せ、白装束、髪を振り乱し、白化粧、濃いロ紅、ロには櫛をくわえ、胸には鏡を提げ、丑の刻に貴船神社(京都・鞍馬)に参り、杉の大木に添えた藁人形に五寸釘を打ち込み呪う…。
これが今に伝わる丑の刻参りだが、この原型は「宇治の橋姫」伝説にまで遡る。
そして、この物語は室町時代になると、謡曲(*)「鉄輪」として登場する。
*謡曲 謡(うたい)。能の歌詞(をうたうこと)

●「宇治の橋姫」伝説
 宇治の橋姫は悪阻(つわり)に苦しんでいる為、夫に「千尋(ひろ)のワカメを海で採って来て下さい」と頼む。しかし、海に出かけた夫は美しい龍神に囚われる。
 会う事も叶わなくなった橋姫は憎い龍神を呪う事を考えている。
 その頃、心願成就で知られた貴船に参詣し「私を鬼に変身させて欲しい、そして龍神を呪いたい」と祈願した。すると貴船の神より「髪をマツヤニで固めて角を作り、その先に火を灯し、鉄輪を被って、三本の松明を持ち、宇治川に22日間浸りなさい」とお告げがあり、そのお告げ通り、一心不乱に宇治川に浸った橋姫は鬼となった。

●謡曲「鉄輪」
 下京に住む男が後妻を迎えた事を妬み、先妻は後妻に対して呪いを考え、貴船に参詣し「赤い布を裁ち切り身に纏い、顔には朱を塗り、頭には鉄輪を乗せ、ロウソクを灯せば鬼となり、恨みを果たせる」と橋姫伝説と同じような神のお告げを社人より受ける。
 一方の下京の男は先妻の鬼と化した悪夢に悩まされ、安部晴明の元を訪ねる。
 晴明は男と後妻の人形(かたしろ/ひとがた)を作って祈祷をすると、先妻の生霊(鉄輪の女)が現れる。女は人形に向かって恨みを述べ、新妻の髪を手に絡めて打ち叩いたりした末、男の命をとろうと立ち迫るが、やがて晴明の呪術が勝り、鬼は消え失せる。






【創作踊劇場これまでの公演】
第 1回   水くぐるものがたり  1984年6月  国立劇場・小劇場
第 2回 ファウスト 1985年6月 国立劇場・小劇場
第 3回 祀りの中で 1986年6月 国立劇場・小劇場
第 4回 カルメン 1987年6月 国立劇場・小劇場
第 5回 水柳/風のかたみ 1988年6月 国立劇場・小劇場
第 6回 一の谷物語 1989年6月 国立劇場・小劇場
第 7回 西鶴おんな抄 1990年6月 国立劇場・小劇場
第 8回 1999この世の終りまで踊っていたい 1991年6月 サンシャイン劇場
第 9回 天守物語 1992年6月 国立劇場・小劇場
第10回 鳥獣戯画 1993年6月 メルパルクホール
第11回 南総里見八犬伝 1994年6月 メルパルクホール
第12回 吉 原 1995年6月 国立劇場・大劇場
第13回 高野聖 1996年5月 青山劇場
第14回 黄泉の銀花 1997年6月 国立劇場・大劇場
第15回 今 いざやかぶかん 1998年7月 新国立劇場・中劇場
第16回 生きもの地球紀行 1999年7月 新国立劇場・中劇場
第17回 安土切支丹能 2000年6月 国立劇場・大劇場
第18回 創作 火の鳥 2001年6月 ル テアトル銀座
第19回 水滔々 2002年7月 東京芸術劇場
第20回 薔沙薇の女 カルメン2003 2003年6月 ル テアトル銀座
第21回 火の鳥 =転生編= 2004年6月 ル テアトル銀座

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