シアターフォーラム    
シアターフォーラム 『天保十二年のシェイクスピア』製作発表会見・出席者ご挨拶

蜷川幸雄
蜷川幸雄(演出)
 「先ほどから70歳と言う年齢が出てきていますが、実際には70歳とは思っていなくて、唐沢さん、あるいはあの五月蝿い勝村くんと同年代だと思っています。ですから70歳を個人的に祝おうと言う気はさらさら無く、若者たちと同じ年齢でガンガン行こうと思っています。これだけ個性的な、そして五月蝿い人たちをまとめて果たして初日が開くのか、と不安ですが、きっと何とかなると思います。
 井上さんの『天保十二年のシェイクスピア』は、確か出た本が書き下ろし新潮劇場と言うシリーズだったように記憶しているんですが、僕はそれを買いまして、――多分、その時は俳優だったんですが、もうボケて良く解っていないんですが、――「やりたいな」と思っていました。ところがそれ以来ずっと井上さんの作品はやりたいなと思いながら、――『薮原検校』でも何でもそうなんですが、――僕がちょっと演劇界の違う流派に属していたものですから、その機会が無くて、今回初めて井上さんの作品を演出出来ることになりました。長い間楽しみにしていたので、今度こそは初めての夢が叶う、と一生懸命やりたいと思っています。
 放って置いてもこの人たちは勝手にやる良い俳優が揃っておりますし、まあ何が心配って、――放って置いてもいいんですけれど、――どうやって逸脱するのを収めるか、とその程度が演出なんじゃないかと思っています。ともかく「皆さん、頼むよ〜、宜しくお願い(笑)」という事で、宜しくお願いいたします。」


井上ひさし 井上ひさし(作)
 「今脚本を直している最中で、直しが間に合わなかったらどうしようという、・・・まあ、明日出来ます(笑)。蜷川さんの演出で、これだけ皆さん凄い方が集まられて、丁度同じ時期にWこまつ座”もやりますので、非常に複雑な分裂気分ですね。でも、私の古い作品に光を当ててくださいましてありがとうございます。
 上演時間が5時間くらいの作品で、忘れもしないPARCO劇場で初演だったのですが、だんだん後半に近づくにつれてお客さんが居なくなって(場内笑)、「終電が間に合わない」とか色々ありましてですね、それを3時間位に今圧縮しているところです。
 とにかくシェイクスピア全作品を入れようというとんでもない野望を持って書き始めて、全部入れていたらその長さになったんですね。で今、切って切って切っておりますが、シェイクスピア全作品がボロボロ落ちて行くんですね(笑)。で今、シェイクスピアの作品が20位残っているでしょうか。とにかくお客さまの忍耐力の範囲内に収めようと。
 でも、これだけの皆さんがお集まりで、演出が蜷川さんということになれば5時間でもいいのかも知れませんが、でもとにかく3時間以内にしようと思って、今悪戦苦闘中です。もうちょっとすっきりとした脚本になると思います。」
宇崎竜童 宇崎竜童(音楽)
 「もう音楽は全部書き終えたのでやる事は無いんです。脚本がとても面白くて、井上さんの詞がやっぱり面白くて、詞の中にキャラクターが出ているものですから、「これは70年代全般のフォーク調で行こうかな。」とか、「これはタンゴで行こうかな。」とか、「これはスカで行こうかな。」とか、「ジャズで行こうかな。」。もう台本に細かく「ここからブルース調」と書いてあったり、「転調してスィングジャズになる」とか、あらゆる音楽の手法が散りばめられているので、一ヶ月くらい引きこもってワァーッとやったら全部出来ちゃったんで、後は皆さんがどうやってお歌いになるのかです。「歌・・・歌えるんですか?」って蜷川さんに聞いたら、「歌える人は少ないよ。」って仰っていたので(会場笑)、・・・楽しみにしております。」

(これまでに参加した主な蜷川幸雄作品)

唐沢寿明 唐沢寿明(佐渡の三世次(みよじ))
 「僕は今日、出来たチラシを初めて見まして、開いた瞬間に「こいつら、タダモノじゃない。」って書いてあって、本当にタダモノじゃなかったので驚いたんですね。「僕らはこの作品に関して何もしていないのにどうしてこの顔が出来るんだろう」とか色々な事を思ってしまいました。本番は頑張ります。本当にちゃんと、きちっと行きたいと思いますが、流石に白石さんもお一人だけ完成された様な写真でいらっしゃって(場内笑)、ちょっとハッとしたんですけれども、本当に頑張らないといけないな、って思いますよね、皆さん(笑)。ホント、宜しくお願いします。」

 足が不自由で顔に火傷の跡があるせむしの男。
 人から疎まれる風貌ながら得意の策略でのし上がっていく。

 (『マクベス』(01・02)、映画「畷う伊右衛門」(04))

藤原竜也 藤原竜也(きじるしの王次(おうじ))
 「僕は本当に皆さんに付いて行って楽しく最後までやりたいと思いますので、宜しくお願いいたします。」
(周囲より「短い!」「もっと長くやれ!」の声」)
 「蜷川さんにですね、しっかりと付いて行きたいと思います。宜しくお願いいたします。」
(周囲より「歌は?」の声)
 「歌は初めてなんですが、僕は結構自信があったんですけれども、スタッフの前で歌ったら「ヴォイストレーニングに行け!」と言われて、今からやって参ります。宜しくお願いします。」

 父が母・お文と叔父・九郎治の陰謀で殺されたと父の亡霊により知り、復讐をするために狂気を装う。

 (『身毒丸』(97〜)、『滝の白糸』(00)、『近代能楽集・弱法師』(00〜)、『ハムレット』(03)、『ロミオとジュリエット』(04))

篠原涼子 篠原涼子(お光(みつ)/おさち)
 「4年ぶりの舞台で、しかも今回の作品が2度目で、浮気もしないで他の作品をやらずに又、蜷川さんの所に戻って参りました。今回は素晴らしい先輩たちと、舞台に慣れている人たちと一緒にやるので、一人で足を引っ張らないようにしなきゃ、と思っています。一見怖そうに見える先輩たちが一杯いらっしゃいますけれども、凄く内心はとっても優しい方たちなので、そういう方たちのアドバイスを沢山頂きながら、頑張って行きたいと思います。それから蜷川さんにも色々なアドバイスを頂きながら、頑張って行きたいと思います。宜しくお願いします。」

 十兵衛の三女。その素直さが仇となり、十兵衛のもとを追い出されてしまう。/かたや双子で別々に育てられたおさちは代官の家に嫁いでいた。
 (『ハムレット』(01))
白石加代子 白石加代子(閻魔堂の老婆/飯炊きおこま婆)
 「蜷川さん、今度は優しくて綺麗な女を演らせてくれる、って前に言いませんでした?(笑) 仰いましたよね? でもこの頃、時空を越えた女の役を沢山演らせて頂いていて、今回も又そうなのかな、って思って、今回は又よりによって、魔が入ったようなお婆さんですが頑張ろうと思います。
 先ほどエレベーターに乗る所で、宇崎さんが私のラブソングを考えてくださっていると仰いましたけれど・・・(宇崎「ラブソングとは言いません」)。(笑)そうだそうです。とにかく唐沢さんが仰った「チラシが一番面白かったね。」と言われない様に皆で頑張って行こうねっ。どうぞ宜しくお願いします。」

 幕兵衛と三世治に予言を与える謎の老婆。/佐吉の母。息子を心配し浮舟太夫との恋路を阻む。

 (『夏の夜の夢』(94)、『身毒丸』(95〜)、『グリークス』(00)、『ペリクリーズ』(03))
夏木マリ 夏木マリ(お里(さと))
 「完成された先輩の後で何を言ったらいいのか解りませんが、とにかく私が普段会いたい、お話させていただきたいという様な俳優さんたちの中に入れていただいて、1ヵ月ちょっとですか・・・旅も含めたら2ヵ月近くなりますけれど、やらせて頂くのは非常に稽古が楽しみだな、と。だからきっと良い作品になると思います。井上さんと蜷川さんというのは私の中で両極端だったんですけれど、お二人の作品に参加できるなんて事は、舞台のキャリアがこれで終わってもいいんじゃないかと言う位、幸せな舞台だと思います。宜しくお願いします。」

 十兵衛の次女。代官の機嫌をとるために自分を人身御供にした父に怨みを持っている。その父の財産を姉・お文と争い悪事を仕掛ける。

 (『ハムレット』(01)、『リチャード』(03))

高橋惠子 高橋惠子(お文(ふみ))
 「初めての悪女をさせていただきます。やっとあの・・・初めてなんですよ、ええ。本当に初めてなんです。実際と違って今までは悪女を演ったことが無かったので、やっとちょっと実際の部分も出せるのかな、と思っております。でも、とても・・・今日もここに来てとても個性的な面白い人がこんなに集まっていて、毎日ワクワク、観てくださる方にもさらにワクワクして頂けるように皆で楽しみながらやって行きたいと思っております。宜しくお願いします。」

 十兵衛の長女できじるしの王次の母。夫・紋太に愛想を尽かし、その弟・九郎治と共謀し命を狙う。
 (『近松心中物語〜それは恋〜』(97〜)、『近代能楽集・弱法師』(00・01)、『ハムレット』(03))

勝村政信 勝村政信(尾瀬の幕兵衛(おぜのまくべえ))
 「もう6、7年・・・もうちょっと前でしょうか。セゾン劇場と言うのが有った時に『昭和歌謡大全集』というのを蜷川さんとやらせていただきまして、その時に蜷川さんが心筋梗塞で亡くなられまして・・・(場内爆笑)・・・その時本当に死んじゃうかと思って、遺作になるかと皆で死ぬほど頑張ったんですけれど、あれから早10年近く経って、まだお亡くなりになりませんで、今回こそ皆で力を合わせて遺作にしたいと思いますので、宜しくお願いいたします。

お里に取り入り、地位と名誉を得ようとする用心棒。花平らを殺そうとするが、間違えて十兵衛まで殺してしまう。
 (『零れる果実』(96)、『パンドラの鐘』(99)、『マクベス』(01・02)、『シブヤから遠く離れて』(04))
  木場勝己  百姓隊の隊長

仕事の都合で欠席

 物語りの舞台、下総国・清滝村に暮らす百姓。W狂言廻し”の役どころで、物語の進行役をつとめる人物。
 (『オセロ』(94)
沢竜二 沢竜二(大前田の栄五郎(おおまえだのえいごろう))
 「ちょっと真面目な事を言わせて貰うと、蜷川さんが演出で、井上ひさしさんの脚本で、宇崎さんの音楽というのは大変魅力が有って、今まで自分から「出して貰えたらお願いします」と頼んだ事は無い役者ですけれど、今回は言いました。「お願いします。もし出して貰える役があったら出してください。」 やっぱり歳も歳になってきますんで、――今、遺作とか何とか話が出ましたけれど、――私もこれが最後の大作だと思いますね。
 それから歌。宇崎竜童さんが作った歌をCDで聴いていて、僕もちょいちょいミュージカルに出るんですが、向こうのミュージカルのフレーズが多くて、日本でやるのに何でこんな向こうのフレーズを使うんだろうなあ、と私もちょいちょいニューヨークやラスベガスへ行くのでそう思っていました。完全に日本人に受ける歌を作ってます! びっくりしちゃって、「こりゃ俺、絶対大丈夫だ」そう思いました。頑張ります。
 大前田の栄五郎ですがこんな事を言って死んだそうです、「あら嬉れし」と。死ぬ時にこんな事言えねえと思うんだけどね、言ったちゅうんだよ。「あら嬉れし 見知らぬ土地へ 死出の旅」ちゅうて死んだらしいですね。その大前田栄五郎がどんな大前田栄五郎になるか解らないけれど頑張ります。宜しくお願いします。」

 関八州の親分衆のひとり。無宿者だった三世次が清滝村の縄張りを継げるかどうかの大事な集会の議長役を務める。
 (『パンドラの鐘』(99)、『テンペスト』(00)、『オイディプス王』(02)、『ハムレット』(03)、『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』(05))

吉田鋼太郎 吉田鋼太郎(鱒の十兵衛(ぶりのじゅうべえ))
 「僕が鰤の十兵衛=リア王の役だと思うんですけれども、高橋恵子さんと夏木マリさんの父親の役なんですね。それでまず、そこから僕の壁が今立ちはだかっていまして、僕の方がちょっとだけ歳が下なので、――多分ちょっとだけ、――そこから怯えず、――もちろん役者に歳は関係ないですけれど――もう、怯えていますね、済みません。まず稽古に怯えずに入って行きたいと思っております。宜しくお願いします。」

 旅篭の経営者。三人の娘を持ち財産を分け与えるが、強欲な長女・次女に疎まれ悲惨な運命に。

 (『グリークス』(00)、『オイディプス王』(02・04)、『タイタス・アンドロニカス』(04)、『メディア』(05))

壌晴彦 壌晴彦(小見川の花平(こみがわのかへい))
 「僕は一時期役者を止めていた時期がありまして、それで初めて復帰したのが、――もう17、8年になりますかね、――井上さんの『雪やこんこん』という芝居で、そのお陰でまたこうして今俳優が出来ている訳です。その井上さんの脚本で、蜷川さんの演出、そして、こういう仕事をしていて、これくらい面白いことは無いだろう、という御同業の皆さんに囲まれて、心掛けることはただひとつです。稽古場で愛される俳優になりたいと思います。ありがとうございました。」

 お里の夫。十兵衛の旅篭を継ぐが強欲なお里に愛想を尽かされ、幕兵衛に命を狙われることになる。
 (『近代能楽集・卒塔婆小町』(00〜)、『テンペスト』(88)、『オイディプス王』(04))

毬谷友子 毬谷友子(浮舟太夫(うきふねたゆう)/お冬(おふゆ))
 「私個人としては、蜷川さんのこのチームに入れていただいた事がもうワールドカップに出場が決まった位嬉しいような、とにかくこれからの3ヶ月間を本当に幸せを満喫しつつ、でも役はすぐ自殺しちゃう人たちなんですけれど、私自身も本当に千穐楽の次の日に死んじゃってもいい位のつもりで、勇気を持って飛び込んで行きたいと思います。宜しくお願いします。」

 吉原で勘定が払えず困っていた佐吉の代金を肩代わりする代りに、夫婦になることを約束させる。/王次の心変わりと父親を殺された事で精神が錯乱してしまう。
 (「桜の園」(03))
高橋洋 高橋洋(佐吉(さきち))
 「今、毬谷さんも沢さんも仰っていましたけれど、こういう作品に自分が一人として関われるという事は凄く幸せだな、という風に凄く思います。何年か前に勝村さんが主演の『パンドラの鐘』という芝居に出させて貰った時に、「こういう場で自分がここに居ていいのかな」って強く思って、やり終わった時に、「凄くやって良かったな」って思ったんですけれど、それと同じ様な気持ちに今、何となくなりました。楽しみにしています。宜しくお願いします。」

 飯炊きおこま婆の息子。桶屋。桶を届けた帰りに寄った吉原で浮舟太夫を見初める。年季明けに夫婦になる約束をし、その日が来ることを待ち望んでいる。
 (『近代能楽集・卒塔婆小町』(00〜)、『真情あふるる軽薄さ』(01)、『かもめ』(99)、『ハムレット』(03)、『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』(05))

  西岡徳馬  よだれ牛の紋太(もんた)/蟻の九郎治(まむしのくろうじ)

仕事の都合で欠席

 お文の夫。十兵衛から譲り受けたもう1軒の旅篭「うし家」を営む。/お文にたぶらかされ実兄の紋太を殺害。
 (『滝の白糸』(00)、『ハムレット』(03))

天保12年のシェイクスピア 集合写真


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