シアターフォーラム    
シアターフォーラム 蜷川作品オールスターキャスト 『天保十二年のシェイクスピア』製作発表会見

 【宝井琴凌の『天保水滸伝』をはじめとする侠客講談を父とし、シェイクスピアの全作品を母として】井上ひさし氏が書き下ろし、1974年にPARCO劇場(当時は西武劇場)で初演された『天保十二年のシェイクスピア』。(演出:出口典雄、出演:木の実ナナ、峰岸隆之介、根岸明美、稲野和子、中村伸郎ほか)

 シェイクスピアの全37作品を複雑かつ絶妙に織り込んだこの作品は、当時傑作と言われながらも上演時間5時間という超大作のため、その後長く上演されずにいましたが、去る2002年、(社)日本劇団協議会10周年記念として、脚色:鴻上尚史、演出:いのうえひでのり、出演:上川隆也、沢口靖子、古田新太、小林勝也、森塚敏、熊谷真実らにより東京・大阪で上演され、こちらも評判となりました。

 そして2005年秋、数々のシェイクスピア作品を演出して世界的評価を得ている蜷川幸雄氏の演出により、「'05 NINAGAWA vs COCOON」シリーズのファイナルとして、これまで蜷川作品に出演してきた日本演劇界を代表するオールスターキャストが揃っての上演が決定し、スタッフ・キャストが揃っての製作発表会見が行われました。

会見風景

 この「'05 NINAGAWA vs COCOON」シリーズとは、シアターコクーンの芸術監督就任7年目、そして70回目の誕生日を迎える蜷川氏が、シアターコクーンで今年演出する4作品を、劇場と刺激し合い、共に闘っていくという姿勢で行われているもので、これまで『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』(2月)、『KITCHEN キッチン』(4月)、『メディア』(5月)と3作品が上演され、これが4作目のラストとなりますが、これまでの3作品はいずれも満員の盛況となる観客の熱い支持を得て来ました。


 今回初めて、作:井上ひさし×演出:蜷川幸雄、と言う組み合わせが実現する訳ですが、お二人はそれぞれにこの作品、そして相手の事について、

蜷川幸雄、井上ひさし
蜷川幸雄

 蜷川氏「書き下ろし新潮劇場を読んでいた時から「やりたいなあ」と、それは多分俳優として演りたいと思っていたんだと思います。自分がいつか演出家になるんじゃないかと予感していたと思うんですが、出口(典雄)さんの(初演)は観に行きませんでした。それは意図的に行かなかったんです。でもその時に根岸明美さんが出ていて、根岸さんに「出口さんの稽古はどうなんだ」とか、「本番はどうなのか」とか、「あなたはモメなかったのか」とか、いろんな事は聞きました。そういう意味で言えば、とても興味が有りました。
 それからそれ以前に、僕は劇団青俳という所のレパートリー委員をやっていまして、井上さんがお書きになった『さらば夏の光よ』というのを情報で仕入れまして、新日本文学の編集部にそれを取りに行って貰って、それを読ませていただいて、劇団へ提出したら劇団の馬鹿先輩たちが「嫌だ!」と言ったので出来なかったといういきさつがあります。実を言えば、若い時からとても興味が有って、「お仕事をしたいな」と思っておりました。そういう意味も含めて、ずっと若い時から思っていたのが、やっと人生のゴールイン間近になって夢が実現したというのが正直なところです。」

井上ひさし  井上氏「どうもありがとうございます。私は昔、清水邦夫さんとNHKの学校放送で一つの番組を二人で書いていた時期がありまして、――プロデューサーは大変だったと思いますけれども・・・遅いってことですね。――でも一回もアナも開けずに2年くらいやっていたんですが、その時からずっと蜷川さんの噂は耳にして、凄い人が居ると言う話を聞いていましたが、その後、蜷川さんと清水さんのチームと言うのが大変沢山良い仕事をなさって、そこに割り込む事は出来なかった訳ですね。
 今から20年近く前に異常接近した時があります。ありますが、丁度私が一身上の色んな混乱の最中に居りましたので、接近したまま又離れていったんですね。それで大変残念に思っておりましたが、とにかく一度蜷川さんの演出で自分の芝居がどう変わるか見たいな、とはずっと思っておりました。今回、こうやってご一緒する事になって、――未だ清水さんの仰っていたことが頭にありますから、――大変恐れていると言いますか、非常に厳しい、という事を――良い意味でですね、――厳しい、妥協をしない、という事をずっと聞いていましたので、さあ、どうなりますか。
 僕は、書いて演出家に、稽古場にお渡しすればもう何も言えない、というのが主義なので、稽古を楽しみにしております。とにかく学校放送で清水さんから噂を聞いた時から数えるともう40年・・・以上ですね。まだ蜷川さんが俳優さんの頃からですから。私の人生の黄昏の闇の濃くなって行く方へだんだん歩いておりますので、そのギリギリのところで蜷川さんとお仕事が出来て本当に幸せです。」
とエールを交換しあいます。長年日本の演劇界に大きな足跡を残しながら、交わることの無かった二人の巨匠が合い見えるこの舞台。さらに、舞台『新・近松心中物語』や、映画「嗤う伊右衛門」で音楽を担当した宇崎竜童氏が新たに手掛けるのも大きな楽しみです。


 製作発表会見でのスタッフ・出演者の御挨拶、そして公演の詳細などは項を改めて掲載を致します。どうぞ、そちらもご覧になってください。



『天保十二年のシェイクスピア』

 作:井上ひさし  演出:蜷川幸雄  音楽:宇崎竜童



《東京公演》

日程  2005年9月9日(金)〜10月22日(土)
会場  Bunkamura シアターコクーン
料金  S席 13,000円 A席 10,000円 コクーンシート 6,000円
前売  2005年7月10日(日)
チケット  Bunkamura チケットセンター 03-3477-9999  ほかプレイガイド
お問合せ  Bunkamura 03-3477-3244

《大阪公演》
日程  2005年10月28日(金)〜11月6日(日)
会場  シアター BRAVA!
料金  16,800円 (全席指定)
前売  2005年9月3日(土)
主催  MBS / グリークス
お問合せ  グリークス 06-6966-6555

Bunkamuraサイト 


【蜷川幸雄 プロフィール】

1935年 10月15日埼玉県生まれ。
1955年 劇団青俳に俳優として入団。
1969年 『真情あふるる軽薄さ』で演出家デビュー。
1974年 日生劇場『ロミオとジュリエット』で大劇場の演出を初めて手掛ける。
    以降、日本を代表する演出家として話題作を作り続けている。
1983年 『王女メディア』のヨーロッパ公演を皮切りに数々の作品で海外に。
1999年 ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)の演出家として『リア王』を日本・英国で公演。好評を博し、ロンドン・グローブ座のアーティスティックデレクターの一人となる。
1999年 1月にBunkamuraシアターコクーンの芸術監督に就任。

最近の主な演出作品
2002年 『マクベス』、『欲望という名の電車』、『オイディプス王』
2003年 『桜の園』、『ペリクリーズ』、『エレクトラ』、『ハムレット』、『リチャード三世』
2004年 『タイタス・アンドロニカス』、『新・近松心中物語〜それは恋』、『シブヤから遠く離れて』、『オイディプス王』、『お気に召すまま』
2004年 『オイディプス王』でアテネ芸術オリンピックに参加。
2004年 英国人俳優による『ハムレット』をプリマス・ロイヤルシアターを皮切りに英国8都市で上演。
2005年 『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』、『KITCH:EN』、『メディア』、『近代能楽集』

2002年 英国の名誉大英勲章第三位を授与される。
2004年 文化功労賞を受賞

紀伊國屋演劇賞個人賞、朝日舞台芸術賞グランプリ、読売演劇大賞など受賞暦多数


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