1985年の創立以来、今年で20周年を迎えた「劇団
Studio Life」。
同時期にスタートした劇団としては、善人会議(現・扉座)、花組芝居、自転車キンクリート、遊◎機械/全自動シアター、など個性的なものが多い中、演出家の倉田淳氏を除いて全て男優のみで構成され、女性の登場人物も男優が演じるという独特の公演スタイルで若い女性ファンを中心に人気を博しています。創立当初は倉田氏の書き下ろし作品を上演していましたが、1996年2月の『トーマの心臓』(原作:萩尾望都
小学館刊)初舞台化の成功を機に、以降少女漫画や文芸耽美小説などの舞台化に数多く取り組んで、高い評価を得てきました。
その「劇団 Studio Life」が今年9月より12月にかけて、これまでにもその作品が数多く映像化されてきた人気ミステリー作家・東野圭吾氏の、『白夜行』の初舞台化に挑む事になり、8月18日、原作者の東野圭吾氏を始め、Studio
Life代表の河内喜一朗氏、脚本・演出の倉田淳氏、そして劇団員が出席しての製作発表会見が行われました。
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これまで中世ヨーロッパや欧米を舞台とした作品を多く上演してきた「劇団
Studio Life」にとって、現代日本を舞台とした作品は新たなチャレンジであり転機とも言えますが、今回の上演の大きな特徴とも言えるのは、全体を二部構成として期日を分けて上演するという試み。この企画意図について倉田氏は「とても原作が長いし、19年間に渡る人間ドラマなので、丁寧に一つ一つ追って行かせていただきたいと思い、二部構成にしました。原作の1章から8章までを第一部、8章から13章までを第二部と考えています。もし一部がどうしようも無い物だったら二部は誰方もいらして頂けない惨憺たる結果になると思うので、一部を観て、二部も足を運んでみようと思っていただけるような舞台になるよう頑張りたい。」と語り、自らを引き締めます。 |
1973年、大阪の廃嘘ビルで1人の男が死体で発見される。被害者は質屋の店主の中年男性。容疑者は次々と浮かぶが、結局決め手を欠き事件は迷宮入りする。暗い眼をした「被害者」の息子・亮司と、並外れて美しい容姿を持つ「容疑者」の娘・雪穂は、その後別々の道を行く。交わることのないはずの二人の歩んだ道とは…。
「亮司の孤独と雪穂の孤独、2人がそれぞれの孤独と運命を抱えながら出会って、そこから絆が始まる、その強く深い絆に感動して舞台化したいと思いました。これは計算尽くされたミステリーなので、説明しすぎても、ひとりよがりになりすぎても面白くなくなるので、その辺のバランス、二人の裏側に潜んでいるものをどうインパクト強く印象付けるか、一つの道を通って最後に解っていただけるように四苦八苦しています。」という倉田氏に対し、これが自身の作品初の舞台化となる原作者の東野氏は
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「人間はいいかげんなのですが、一生懸命小説は書いております。その中でも、これは代表作と言うかライフワークの一つなんですが、この作品だけは映像化とかそう言った事は出来ないだろうな、と言う気がしていたんですね。舞台の芝居は好きなので、そういうのを意識して書いた他の作品もあるのですが、まさかこれを舞台でやろうと思いつく人が居るとはとても想像もしなかったので、正直話が来た時は「何考えているんだろうなぁ」と思ったんです。
出版社から「多分本気だと思うんですけれど」と言われて(場内笑)、正直、乱暴な言い方をすると「出来るものならやってみろよ」というような感じでOKしたんですけれど、「まさか本当にする人が居るんだなあ」と思っています。勿論未だ観せて貰っていないんですけれど、作者としてというよりも「白夜行」のストーリーを知っている人間としてどういう風にされるのか、非常に楽しみですね。
亮司にしても雪穂にしても一成にしても物凄く自分の思い入れの強いキャラクターで、特に亮司と雪穂は自分の中に有る理想の形の男と女なので非常に楽しみです。他人から良く「東野さん、雪穂みたいな女、好きでしょう」「東野さんの書く女の人ってみんなどこか雪穂を変形したような女ばっかりですものねぇ」って言われるんです。つまり悪い女ばっかりなんですけれど、でもそのイイ女を・・・イイ女だけれど悪い女を、男性がどう演じてくれるのか。男性だから出来る、男にとって悪い・・・「魅力的」という意味で悪い女を、ひょっとしたら男の人が演れるかも知れないな、と楽しみです。頑張ってください。」と、その成果に大いに期待を寄せます。 |
舞台化に際し「自分が感動した根源を探っていくと、それはやはり強く深く原作に辿り着くので、ストーリーはいじりたくない。そのまま感動したところを表現させていただきたいと思っています。亮司と雪穂がどういう風に生きているかという事を自分の中のテーマにさせて貰っているので、「一部で終わり」という風にはせずに、一部をご覧になった方が、「この続きはどうなるんだ」と言って二部も観て下さるようにと思っております。」と、狙いを語る倉田氏。
そして、この長編ミステリーの傑作に挑む出演者たちは、それぞれに力強い決意と、役創りへの意気込みを語りました。
笠原浩夫 <亮司役> |
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「今この会場に物凄い空気感が充満しておりまして、かなり圧倒されておりますが、逆に僕らは凄い作品に臨もうとしているんだな、ということをつくづく改めて実感しております。この亮司と言う役は雪穂役と共に物語の中心となる、核となる人物ですので、役の存在感に負けないような自分なりの亮司像をしっかり創って行きたいと思います。」
「凄く単純な面での役創りで言いますと、舞台が大阪ということで、僕は宮城県生まれで東北弁と標準語しかしゃべれないので、生まれて初めて関西弁に挑むという事が今物凄く大変だなと思っております。それと亮司という役はとても深い傷を負っているということで、その深い傷が何なのかということを一番大事に探って行きたいと思っておりますし、それを役創りに活かして行きたいと思っております。」 |
及川 健 <雪穂役> |
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「人並み外れて美しい美貌の持ち主、と言うこの役を演じることを大変光栄に思っております。最後まで一生懸命務めて行きたいと思っております。」
「彼女の心の深淵にどれだけ迫れるかが今回の勝負だと思っています。あとは笠原さんと同じ様に私は千葉県出身なので、関西弁に今悪戦苦闘しているので、そちらも流暢に喋れるようになりたいと思っております。」
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山本芳樹 <亮司役> |
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「決して軽くなく、重い暗い、そしてストイックな役なので精神的に負けないように、亮司と言う役に自分自身負けないように最後まで精一杯演り遂げたいと思います。」
「凄く存在感が大事になってくると思うので、登場する度にというか、存在する時にどれだけ空気が動くか、動かせるかという、空気の流れを変えたり、時には止めてしまったり、温度も変わると思いますし、そういう黙っていても何か語っているという雰囲気だとか、いかに空間を支配できるかが勝負だと思って、挑戦していきたいと思っています。」
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曾世海児 <篠塚一成役> |
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「今回篠塚と言う役を頂きまして、原作を読んだ最初の印象は「お金持ちのボンボンかな」と思ったのですが、読み進めて行くうちに、事件に巻き込まれて行くうちに、何だかとっても責任感が強く、行動力もあり、胆力もある。男から見ても凄く魅力的な男性で、そんな役を演らせていただける事を、とても今光栄に思って、全身全霊この役に臨みたいと思います。」
「篠塚一成という役は、本当に絵に描いたようなというか、見た目ではそういう青年です。この作品には色々な登場人物が居るんですけれども、その登場人物の中で、いつの間にか事件の核心に少しづつ少しづつ迫って行く。そして、とても鋭い嗅覚と言いますか、雪穂に捕らわれない、雪穂に丸め込まれない、いわゆる胆力というものが有る人物ですので、優しいだけのお兄さんじゃない、もうひとつ奥の、グッと腹の中にある強い力というか、前に前に進んでいる人物をお見せできたらな、と思っております。」
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この秋、「劇団 Studio Life」ファンはもとより、東野ファン、ミステリーファン、そして演劇ファンなど、広く注目を集めそうなこの作品。
亮司役と雪穂役はダブルキャスト(第二部の雪穂役はトリプルキャスト)となりますので、それぞれの出演日などは下記公式サイトをご参照ください。
なお、この製作発表会見の模様は、改めて動画での掲載を予定しております。こちらもどうぞ楽しみにお待ちください。
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