1980年に、つかこうへい作品を上演する劇団として、大阪芸術大学舞台芸術学科の学生を中心に旗揚げされ、その後、1984年11月の『宇宙防衛軍ヒデマロ』よりハードロック・ヘヴィメタルに乗せた独自のオリジナル作品を中心とした体制に転換。
1988年以降は、劇画・マンガ的世界をコンサートばりの照明と音響を駆使し、歌舞伎の様式美をとりいれた作品で、演劇ファンのみならず、音楽ファンをも巻き込んで観客動員数を驚異的に伸ばした“劇団☆新感線”。
更にWいのうえ歌舞伎”と題する歴史や神話をモチーフに物語性を重視した独自性の高い作品スタイルを確立してきました。
そして現在では、劇団の本公演以外に数々のプロダクションと手を組み、提携公演として『阿修羅城の瞳』『野獣郎見参』『アテルイ』『髑髏城の七人』『SHIROH』などを上演し、高い評価と多くの観客の支持を得て、劇団としての地位を築いています。
その劇団☆新感線が結成25周年を迎えた2005年、これまでオリジナル作品にこだわってきた座付作家・中島かずきと演出家・いのうえひでのりが、小説原作の劇化に初挑戦。伝奇時代作家・隆慶一郎氏の傑作時代小説「吉原御免状」を舞台化して上演する事となり、その公開通し稽古が9月7日に東京・青山劇場で行われました。
肥後、熊本の奥深い山中、あの剣豪、宮本武蔵に育てられた若武者がいる。名を松永誠一郎。
亡き師、武蔵の遺言に従い山を下り、江戸最大の遊郭・吉原へと赴くは、時に明暦三年八月十四日。
「ここは極楽だよ。そして地獄かな――――――――」
謎の老人・幻斎が、謎の言葉で誠一郎を迎えた、その時。吉原を不穏な殺気が取り巻いた。
次々と襲いかかる秘密組織「裏柳生」の総帥・柳生義仙。それに抗し、誠一郎の助太刀を買って出る旗本・水野十郎左衛門。
血で血を洗う暗闘の中、戦いの理由を問う誠一郎に、義仙が言う。
「神君御免状はどこだ?」。
主演の松永誠一郎には、作家・演出家・制作の全員一致で「この人しかありえない」と言わしめた、堤真一。
そして、その松永誠一郎を付狙う裏柳生の柳生義仙を、新感線の看板役者・古田新太、不思議な雰囲気を醸し出しつつこの物語の芯を語る吉原の重鎮・幻斎に藤村俊二、松永誠一郎との友情を深める旗本・水野十郎左衛門に梶原善など、お馴染みの顔に加え、吉原の里という華やかな遊郭の花魁でもあり、松永誠一郎をめぐる運命の女として描かれる勝山太夫に松雪泰子、もう一人の運命の女・高尾太夫を京野ことみという、新感線初登場の二人が体当たりで演じます。
もちろん、橋本じゅん、高田聖子、粟根まことなど新感線のメンバーも顔を揃え、この『吉原御免状』を盛り立てます。
2002年の岸田國士戯曲賞を受賞した作家・中島かずきと、2004年の日本演劇協会賞を受章した演出家・いのうえひでのりが、劇団☆新感線二十五年目にして初めて挑戦する小説原作『吉原御免状』。
江戸吉原を舞台に、吉原成立の秘話、徳川家康影武者説など、大胆不敵、縦横無尽に展開する舞台は、今までに無い新感線的時代劇の誕生と言えそうです。