その大地さんを始め、石井一孝さん(ヒギンズ教授)、羽場祐一さん(ピッカリング大佐)、上條恒彦さん(ドゥーリトル)、そして演出の西川さんが顔を揃えた会見では、まず西川さんが、扮装したキャストを見渡して開口一番、「今日は競馬場という事で、僕も騎手の衣裳をお願いしたのですが却下されました(笑)。」と会場の笑いを誘います。
そして「最初(2002年)の時は、僕はミュージカルよりもストレートプレイの方が多いので出来るかなと思ったのですが、ドラマ性が強いミュージカルで有るという事と、真央さんと仕事が出来るという事で頑張ってみました。ドラマ性とイギリス社会の階級性みたいなものを強く出したいなと思って、随分プレッシャーも有ったんですけれど、出演者の方に助けられて評判も良く出来上がったと思っています。今回、東京で新メンバーでやるということで、帝劇も初めてですし、また新たな気持ちで緊張してゼロからのスタートの気持ちでやりたいと思っております。」と、新演出の狙いを語ります。
続けて大地真央さんが、「今回、21世紀ヴァージョンとなって東京でお披露目する事が出来る事を嬉しく思っています。何年前からやっているとか、何百回やったとか、そういう事は意識しないで、新しいキャストの方々と新たな気持ちで、初めてやるくらいの気持ちで取り組みたいと思っています。新鮮な気持ちで、その時に感じるもの発見したものを大事に、鮮度を失くさないというのが一番のテーマかな、と思っています。」とご挨拶。
続けて、今回が初出演となる石井一孝さんが、「大好きな作品で非常に嬉しく思っていますし、大変な役を演らせていただくと、身の引き締まる思いでいます。大地真央さんと共演させていただくことを非常に嬉しく思っています。かれこれ5作目くらいの共演になるのですが、ここ10年くらい、色々アドヴァイスをいただいたり、時には叱られたりしながら来ましたので、今までご指導いただいている恩返しになるように、――僕で8代目だそうで、――素晴らしい先輩方が演られていた役でプレッシャーも有りますが、僕なりのヒギンズ教授を演じてみたいと思います。」と語り、「僕は観客として10回以上観ていると思うのですが、ミュージカル史上でも三本指に入る傑作だと思っています。ヒギンズ教授は朗々と歌うような曲は殆ど無くて、芝居唄っぽい、殆ど歌っていないような印象を受けるのですが、どの程度歌ってどの程度歌わないのかということを、上手くポイントを持っていくと、ちょっと違ったヒギンズ像になるのかな、と思っています。」と新たな役作りへの意欲を見せます。
同じく初出演となる羽場祐一さんは、「僕はストレートプレイばかりやってきた人間で、ミュージカルということで、自分でもどうしてしまったんだろう、と戸惑っております。カラオケにも行かない人間なので、きっと皆様にご迷惑を掛けると思うのですが、この『マイ・フェア・レディ』で大地さんの演じるイライザが一生懸命発声練習をして、だんだんきちんと喋れるようになるように、私も現場できっちり歌の発声練習をさせられて、怒られて、叩かれて、何とかお聞かせ出来るようになればいいな、と希望的観測でここに座っております。ずっと昔に映画で見た作品なので、古典の名作というイメージなのですが、それに僕が参加する、登場人物を演じるという事が凄く不思議な感じがしています。僕は僕でしかないので、僕が素直に感じたり、思ったりしたことをきちんと身体に乗せて、大地さんたちに届けてあげられれば、今回参加した意義があると思っています。」と語りますが、少し不安気な様子も覗きます。
そして6年ぶりのドゥリトル役となる上條恒彦さん。「真央ちゃんが大好きなんで、凄く楽しみにしていました。この人は綺麗なだけじゃなくて、凄く悪戯っぽいので、舞台で注意しながら、警戒しながらやろうと思います。」とベテランらしいコメント。そして「僕は、ヒギンズ教授の家に乗り込んで行って相手をコケにして5ポンド貰ってくるシーンが一番好きなんですが、石井君は前から知っているものですから、イビリ甲斐が有ると凄く楽しみにしています(笑)。」と笑うと、石井さんが思わず「恐いな」とつぶやき、会場から笑いが起きる場面も。
会見では、劇中のアスコット競馬場の場面で、イライザの美しさに惹かれた青年フレディが、「7番の馬券を持っていますよ。ドーバーという馬です。宜しかったらこれをお持ちください。レースを楽しく見られますよ。」とイライザに馬券をプレゼントするシーンにちなんで、大地さんから7番の馬券が集まった報道陣にプレゼントされるという洒落た演出もあり、それぞれ、財布などに仕舞う姿も見られました。
「上流と下町との出会い、言葉のかかわり合いで、それぞれの人物が変わっていく、ヒューマンなドラマ性の高い作品。舞台上で上下の高さを強調し、装置をシンボリックにシンプルにして、人間性を浮かび上がらせる演出を目指した。」と西川氏。
さらに洗練され、さらにパワフルなステージとなって、大地真央のイライザが6年ぶりに帝劇の舞台に帰ってきます。