今年創立20周年を迎えた人気の男優劇団“Studio
Life”が、現代日本を舞台にした作品に挑む意欲作『白夜行』が9月14日、東京・新宿の紀伊國屋ホールで幕を開けました。
この作品は、人気ミステリー作家・東野圭吾氏の同名の長編小説を初めて舞台化したもので、数多くの作品が映像化されている東野氏も「まさかこれを舞台でやろうと思いつく人が居るとはとても想像もしなかった。」と語ったほどの挑戦作。
原作が19年間に渡る人間ドラマを描いた長編であり、「丁寧に一つ一つ追って行かせていただきたい」との意図から、全体を二部構成として上演が行われれ、今回は物語の前半部分である第一部の公演となります。
物語は1973年(昭和48年)、ベトナム戦争が終結し、山口百恵がデビューし、オイルショックが起きたこの年に、廃ビルで質屋の店主が殺されると言う一つの殺人事件が起きた所から始まります。
そして翌1974年、質屋殺しの容疑者の1人とされていた主婦が吹きこぼれた味噌汁によるガス中毒で死亡。この二つの事件を皮切りに、質屋店主の息子・亮司と、主婦の娘・雪穂、二人の周りで起きる様々な出来事を軸にしてストーリーは展開して行きます。
シンプルな舞台装置とスピーディーな転換。時には映像を駆使して複雑な物語の背景をテンポ良く描く演出は、3時間という上演時間の長さを感じさせず、さまざまな角度から描かれ、時には交錯するかに見える登場人物たちの行動は、緊張感を孕んだまま終演を迎え、1986年の大晦日の出来事で幕を閉じます。
キャストは“Studio Life”の通例であるWチーム制で、杳(ヨウ)チームは山本芳樹(亮司)・及川健(雪穂)、宵(ショウ)チームは笠原浩夫(亮司)・舟見和利(雪穂)がそれぞれ演じます。(大阪公演は宵チームと晦(カイ)チーム(山本芳樹・舟見和利)のWチーム)
第一部で提示された様々な謎がどう結びつき、どのような結末を迎えるのか。製作発表会見の席上で倉田氏が、「「一部で終わり」という風にはせずに、一部をご覧になった方が、「この続きはどうなるんだ」と言って二部も観て下さるようにと思っております。」と語った通り、第二部への期待が大きく膨らむ仕上がりの作品となりました。
また、この作品の第一部のチラシには雪穂(及川健)が、第二部には亮司(笠原浩夫)が大きく写っていますが、改めてご覧になると、第二部のチラシは小さく、まるで人形の様な雪穂が亮司の後ろに座っている姿がお解かりいただけると思います。
まるで合成写真のようなショットですが、これにはそうした細工は一切無く、撮影時の遠近感で生まれた効果だとか。
作者自ら「自分の中に有る理想の形の男と女」と語る亮司と雪穂を中心として、計算された緻密なプロットのこのミステリー作品に、創立20周年を迎えた劇団“Studio
Life”がどのように挑み、そして新境地を開拓して行くのか。
演劇ファン、ミステリーファンならずとも、その成果には多いに注目の集まる公演と言えそうです。
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