作品が本来持つオペラの要素を崩さず、日本の伝統芸能を取り入れた斬新で独創的な演出が施された今回の“おぺら”は、冒頭、第1幕1場から、悪代官どん・じょばんにと八坂藩奉行所のお奉行との殺陣、そして越後屋が加わっての三重唱と見どころが満載。
さらにその後のレチタティーポ(音楽つきの台詞)の箇所では、時代劇ならではの台詞回しの面白さが観る者の興味を引き付けます。
そして舞踏会ならぬ“祭”のシーンでは、祭雛子に合わせての歌と踊りに加え、雅楽や日本舞踊を活かした演出などが施され、単なるバラエティーでは無い、日本古来の伝続芸能の良さが息づく公演となります。
今回、悪代官どん・じょばんに役でオペラ初挑戦となるのは、「ごくせん」「やまとなでしこ」「鬼嫁日記」などのドラマを始め、映画やバラエティでも活躍の東幹久さん。
そして、彼と対立する八坂藩奉行所のお奉行を演じるのは、17年間務めたというテレビ「水戸黄門」の格さん(渥美格之進)役で有名な伊吹吾郎さん。
このお二人を中心に東京藝術大学卒業生をはじめとする実力派若手ソリストたち、そしてこの舞台の為に結成された「時代劇おぺら『どん・じょばんに』アンサンブル」(東京藝術大学弦楽・雅楽専攻有志他で構成)が悠久の世界へと導きます。
さらに、その上演場所として選ばれたのは、明治5年に開催された京都博覧会の時に、祇園の舞妓・芸妓の技芸発表の舞台として造られた祇園甲部歌舞練場。
その催しは今日に至るまで「都をどり」として引き継がれ、毎年4月1日から月末まで、祇園甲部の芸妓さん、舞妓さんによって行われる京都の春の風物詩となっています。京の歴史と伝統が漂う空間、そして使用される「都をどり」の舞台セットは今回の時代劇と西洋オペラの融合を一層引き立てる事は間違いありません。
(ちなみに、祇園の花街は四条通で南北に二分され、南側が甲部、北側が乙部と呼ばれています。)
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