今回のミュージカル化について荻田浩一氏は「とても高名な原作でファンの方がとても多いので、その皆さまのご期待に添うように、原作で感動されたその思いを裏切らないように、でもミュージカルとして新しく創り直して、そこにまた新たな魅力・息吹が備わるようにしたいと思います。まだ稽古が始まったばかりなのですが、スタッフ・キャスト一同で頑張っておりますので、初日までに完成させたいと思います。」と、その意気込みを語ります。
音楽監督の斉藤恒芳氏は「ミュージカルはたわいの無いお話を音楽と演出で凄く盛り上げる作品が多いんですけれど、お話だけでこれだけ完成度が高いと、そこに音楽をどういう風に入れていいのか、というのがとても悩むところです。今回はとても歌の多いミュージカルなので、その歌の中でも微妙な心の変化とか、色々な取り巻く人々の気持ちとか、ちょっとづつお客様にも解かるように変えて行くのが一番の僕の研究課題です。まだ創っている最中ですので、今ここで喋っているのもちょっと心苦しいところなんですけれど、まだ頑張って書きたいと思います。」と、生みの苦しみの中でも手応えを感じているようです。
今回の出演者は9人。主人公チャーリィを演じる浦井健治と、アリス役の安寿ミラの2人以外は場面によって複数の役を演じることとなります。これは、主人公にとって、その存在が持つ意味合いが同じ場合、またはまったく反転する場合、それぞれを効果的に見せ、劇的効果を高めるためとの事。
主人公のチャーリーを演じる浦井健治さんは、「今回初主演という事もありまして、とても緊張しているのですが、何よりも僕はこの作品が本当に大好きで、チャーリーという役を演じられることを幸せに思っています。このチャーリーという役は並半端な気持ちでは絶対に演じられないと自分の中では思っているので、色々と自分なりに歌い方を知識に合わせて変えてみたりだとか、役作りとして色々な施設を廻ってみたりだとか、自分なりに色々と役に対して熱を注いでいる最中です。頑張るので宜しくお願いします。」と、力を込めて語ります。
そのチャーリーの教師で、初恋の相手でもあるアリスを演じる安寿ミラさんは、「荻田さんもさっき言いましたけれども、誰もが知っているこの原作をミュージカル化するという時に生まれる、――他の方がなさる時も感じる事なんですけれど、――不安というものを多少なりとも私も感じておりましたけれども、稽古場に行って1日目に斎藤さんの創られた曲を聴いた時に、その不安が全部消えてしまいました。それくらい心癒される、とても素晴らしい珠玉のメロディたちです。今は、――殆どオリジナルミュージカルと言ってもいいと思いますけれども、――それを創って行く難しさ、大変さを感じながら、同時に一つの目標、到達点に向けてゼロから創って行く目に見えない連帯感ですとか信頼感を感じて、お稽古場にワクワクと通っております。個人的に自分の役としては、久しぶりに毒の無い役で(笑)、清らかなアリスで、初主役となる浦井君を本当はサポートしなくちゃいけないんですけれど、まだまだ自分の事でいっぱいいっぱいで、最終的にはいい感じでサポート出来ればと思っております。いつも自分の出ている作品を「観て下さい」と言うのが中々苦手で言えないんですけれども、今回は本当に沢山の方に観て頂きたい、とても素晴らしい作品になると思います。」と、この作品にほれ込んでいる様子。
そして彼に手術を施すストラウス博士役の宮川浩さん。「今回のこの作品、皆さんもご存知の通り、本当に原作も脚本も本当に素敵な作品です。これを生かすも殺すも主役の浦井健治次第なんで(会場笑)、プレッシャーを掛けながら、そしてちゃんとサポートしながら、いい作品に仕上げたいと思います。」
同じく、彼の経緯を見守るニーマー教授役の戸井勝海さん。「今回、ニーマー教授という、僕が今迄ミュージカルであまり挑戦したことの無いタイプの役どころに挑戦させていただきます。本当に有名な作品で、僕も原作を何度も読んだことがあったのですけれど、「いったいどんなミュージカルになるんだろう。」って凄いドキドキしながら稽古場に行きまして、曲が本当に素敵で――安寿さんも仰っていましたけれど、――一曲づつ取り出してもそのまま成立しちゃうような音楽がとっても多くて、――僕も一昨日辺りにとっても素晴らしい(笑)ソロをいただきまして、今悪戦苦闘しておりますが、――本当に素晴らしい作品になると思います。どうぞ劇場の方にいらしていただけるようにお願いいたします。」
ニーマー教授の下で研究をするバート役の永山たかしさんは、「今回僕は、バード・セルドンという役と、他にフランクという役、そしてもう一つリロイという役、3つ演るんですが、それぞれが抱えているもの、――この作品のいい部分だと思うんですけれど、――葛藤と成長、それはチャーリーだけじゃなくて、ここに居る全ての人々に言える部分で、徐々にその成長を僕自身が描ければいいな、と思っております。それと、それぞれのキャラクターに、観ている人たちそれぞれが感情移入できるようなキャラクターが揃っているのではないか、と思っています。ちょっと湿っぽくなりましたが(会場笑)、皆さん、是非博品館で逢いましょう。」とテンション高くご挨拶を行います。
そして、今回の舞台で注目となりそうなのが、チャーリーと共に脳外科手術を受ける白ネズミのアルジャーノンを生身の俳優が演じること。
そのアルジャーノン役の森新吾さんは、「皆さんも言われている通り、こんな素敵な作品に出られることを本当に幸せに思っています。アルジャーノンはチャーリーと同じ手術を受け、頭の良くなるネズミですけれども、今回それを人が演るという事で、自分が出るシーンで不思議な空間が創れたらいいな、と思っています。DIAMOND☆DOGSとしていつも7人で活動していますが、今回初めて1人でこういう舞台に出させて貰うので、初舞台の気持ちで頑張りたいと思います。」ということで、ダンサーとしての彼の肉体がどのようなアルジャーノンを創り出すのか興味深いところです。
さらに、チャーリィの隣人フェイを演じる小野妃香里さんは、「フェイという役は天才になってからのチャーリーしか知らない唯一の登場人物なので、周りの人たちとはまた違った幸せな空間をチャーリーに作ってあげられたらいいな、と思っています。そしてそれをチャーリーを通してお客様と共有出来ればいいな、と思っております。」と、優しくコメントし、また、看護婦のヒルダとルシルを演じる朝澄けいさん、小田島クリスティンさんも、「皆さまに一生懸命付いて、頑張りたいと思いますので、宜しくお願いいたします。」(朝澄)、「とても素敵な作品なので、一生懸命頑張りたいと思います。宜しくお願いします。」(小田島)と、それぞれに控えめながらも決意を語りました。
会見の後に、小野妃香理、朝澄けい、小田島クリスティンの3人ををバックコーラスに劇中のナンバーを披露した浦井健治さんは、最後に「ミュージカル『アルジャーノンに花束を』。テレビドラマとも映画とも小説ともストレートプレイとも違う、色々な魅力が詰まった作品になると僕は信じています。皆で協力して創り上げていこうと思っているのでご期待ください。」と力強いメッセージを残して会見を締め括りました。
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