新国立劇場で演出したS・ソンドハイム作品『太平洋序曲』が高く評価され、同作品でアジア人として初のブロードウェイ演出家となった宮本亜門氏が、その第二弾として2004年6月に上演したミュージカル『Into
the Woods』。
読売演劇大賞優秀作品賞、朝日舞台芸術賞秋元松代賞(演出:宮本亜門)、読売演劇大賞最優秀スタッフ賞(美術:礒沼陽子)に輝いた傑作が5月19日から再演の幕を開けるのに先立ち、17日には舞台稽古が公開されました。
シンデレラや赤ずきんちゃん、ラプンツェルや「ジャックと豆の木」のジャックなどグリム童話の主人公たちが歌い踊りながら、様々な困難に立ち向かい、それぞれの幸せを勝ち取るユーモアいっぱいの第一幕。一転して次々に降りかかる過酷な試練と苦悩に直面することになるスリリングな第二幕、そして再び高らかに歌い上げるフィナーレまで、フルオーケストラによるソンドハイムの円熟した美しい音楽、劇場全体を森の気配が包み込むような礒沼陽子の美術、そしてそれらを纏め上げ、新国立劇場ならではの機構を活用してダイナミックな中に登場人物を丁寧に描き出す宮本亜門の演出は、初演から2年の時を経てますます磨き上げられています。
出演者も、初演時にソンドハイムの難曲を歌いこなし、的確で深みのある役作りで「ベストキャスト」と評された諏訪マリー(魔女)、小堺一機(パン屋)、高畑淳子(パン屋の妻)、シルビア・グラブ(シンデレラ)、藤本隆弘(シンデレラの王子)などに加え、新たに、天地総子(ジャックの母)、矢崎広(ジャック)、宮本せいら(赤ずきんちゃん)らが参加し、広い劇場空間を縦横に駆けめぐって観客を魅了します。
幸福を求め、迷い、成長する物語の中に、欲望、復習、家族の絆、社会の矛盾といった様々なテーマが織り込まれ、子どもから大人まで、観る者すべてが自分自身の投影として舞台を見つめてしまう、大きな魔力を秘めた作品『Into
the Woods』。
家族揃って楽しめる作品でありながら、単なるエンターテインメントに終わることなく、深いテーマを持つ作品本来の瑞々しく豊かな魅力は、日本を代表するミュージカル演出家として活躍する宮本亜門の手により、劇場いっぱいにあふれ出すことでしょう。
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