今回この公演の企画プロデュースを手掛け、出演もする草刈さんは、「プティ先生は私の積んだ経験を花開かせてくれた方で、先生が10年前に『若者と死』で私に死神の役を与えて踊らせてくださったことで、私の踊りの幅がかなり広がりました」と師への思いを語り、プティ氏もこの会見に向けて作られたビデオメッセージの中で、「彼女が見せた『若者と死』は、これまで踊ったダンサーの中で最高のものでした。」と絶賛。こうした信頼関係が今回の公演を生み出すことになりました。
「2年前、公演の無い時にたまたまパリに行って、そこからジュネーブにお住まいのローラン・プティ氏にお目にかかりに行ったのですが、その時に「今後私はどういう活動をしていったらいいのだろうか」とお話したところ、「何か自分で公演をやってみるのも一つの方法だよ。もしそういうことを自分でやるならば協力する。」と仰っていただいたのがきっかけで、その言葉を信じて、一歩踏み出さなくてはいけないのかな、踏み出してみたいという気持ちが高まり、2年かかってこのプログラムにたどり着きました。」と、そのキッカケを語る草刈さん。
今回の企画意図については「プティ先生の描く女性は官能的だったり、強い個性をもっていたり、凄い悪女だったりして、その強い女性をアジア人が演じるという事で、その表現を通じて“アジアンビューティ”というのを模索すると言うのを一つのテーマにして作品を選びました。
女性を表現する事を考えると、男性との関わりは不可欠で、ローラン・プティ先生はフランスの方なので、作品もアジアを意識して創られたものは全く無い筈ですけれども、そうやって出来上がったものを私とワンさんが踊る事によって、何かまたヨーロッパの方たちとは違う表現というものを打ち出せたらいいかな、と思っています。」と、そのコンセプトを語り、
「曲目もジャズとかロックからクラシックまで幅広くありますし、登場する女性も『コッペリア』でコッペリア伯爵が自分の理想として作ったお人形と踊るシーンも入っています。そういう女性を並べていくということもプティ先生の個性が反映されていると思いますし、今回の公演では「女性を表現する=“アジアンビューティ”を表現する」と言うことを一つの軸において作品を並べてみましたが、他の今までのプティ先生のガラ公演とは一味違って、プティ先生の作品集として纏まりのあるもの、そして色んな側面でお客様に楽しんでいただけるものになっていると思います。」と、企画プロデュースの面でも自信を覗かせます。
その「“アジアン・ビューティー”を表現する」女性ダンサーとしては、草刈民代のほかに中国中央バレエ団のプリンシパル、ワン・チーミンの参加が決定。
「プティ先生の作品と言うのは生命力を凄く感じて、劇的なストーリー性を持った作品であると思っています。今回私と一緒に、パートナーとして中央バレエ団からリー・チュンがやって参ります。二人で力を合わせ、また今回の作品に参加する女性は私と草刈さんの二人だけですので、そういった意味でも一生懸命成功するように頑張りたいと思っております。」というワンさんを、プティ氏は「透明感があって、他のダンサーには無い何かを持っています。同世代のダンサーの中で十本の指に入るでしょう。」と評します。
「プティ先生の作品は、世界中の素晴らしいダンサー達が過去に伝説的と言ってもいいような瞬間を沢山残していると思うんですけれども、そこを目指そうと思っても、アジア人のダンサーというのはどうしても変わってしまうものを持っていると思うんですね。。その特性というのが、役柄を演じることによっていい形で出るように私自身は模索して踊りたいと思います。それが“アジアンビューティー”として認められるような形になったらいいな、と思っております。」と草刈さんが語るように、草刈民代とワン・チーミン、世代の異なる2人の競演は、今回の作品コンセプトである“アジアン・ビューティー”にふさわしい華麗な舞台を実現することでしょう。
|