「鉄道員(ぽっぽや)」で平成9年度の直木賞を受賞。他にも「プリズンホテル秋」(第16回吉川英治新人文学賞受賞)「蒼穹の昴」「月のしずく」「珍紀の井戸」など、現代日本を代表する作家の一人・浅田次郎。
シナリオライター・映画監督として数々の名作を世に送り出し、特に「午後の遺言状」(1955)では、日本アカデミー賞、モスクワ国際映画賞、毎日映画コンクールなど、映画賞を独占し、2002年には文化勲章を受賞。現在もなおその創作意欲に衰えを見せない日本映画界の巨匠・新藤兼人。
女性を描いては右に出るものがいないと評されるこの二人が初めて組んだ舞台『ラブレター』は、2004年の初演に続いて、6月24日より東京・銀座の博品館劇場で再演の幕を開けますが、前日の6月23日には舞台稽古が公開され、合わせて出演者が今回の舞台に掛ける意気込みなどを語りました。
今回、日本で偽装結婚をする中国人女性・百蘭を演じるのは吉本多香美。その相手であり百蘭の残した手紙で心の奥に潜んでいた何かが目覚める高野吾郎役には金子昇、その吾郎に付き添うチンピラ・サトシに佐野瑞樹というキャスティング。
会見ではまず現在の心境を問われて、「凄く楽しい舞台だと思うのでワクワクしています。」と笑顔で答える吉本さん。金子さんが「最初はプレッシャーがあったのですが、稽古が進んで行く内に薄れて、今は早くお客さまの反応が見たいので初日が楽しみです。」と自信を覗かせれば、初演にも出演している佐野さんは「最低条件として前回よりも良いもの、というプレッシャーがありますが、「前回よりも良くなっている」と言われるように頑張りたいと思っています。」と、こちらも力が入ります。
新藤監督の演出については、「最初は怖いイメージがあったけれど、優しい口調で厳しい中にもユーモアを交えた演出で、動きなども細かく説明しながらなので、凄く解かりやすく芝居創りが出来た。」と口を揃える出演者たち。
「とにかく情熱があって、私たちより若いかもしれない。」とのことですが、「難しい注文をサラリと言う」一面もあるとのことで、超ベテラン監督の手腕は舞台でも遺憾無く発揮されたようです。
また、今回が舞台初主演となる金子さんは「この『ラブレター』は、僕が兄のように慕っている北村一輝さんの初演の後ということで、余計にプレッシャーが大きくなって、北村さんに電話をして相談に乗ってもらったりして、プレッシャーに負けないように頑張って行くようにしていました。」と、やはり最初はとまどいもあった様子。
劇中では長いセリフの場面もあり、「今まで役者をやってきた中で、一番長いセリフをいただきました。」ということですが、そのセリフを稽古初日から覚えていたそうで、これに再演となる佐野さんが「「最初は台本を持って稽古する。」と話していたのに裏切られて、結局僕が一番最後まで持っていました。」と笑わせるなど、初日を前にしてもリラックスムードで、チームワークの良さを感じさせる会見となりました。
最後に「凄く素敵なストーリーで、演っている私たちも涙が溢れてくるような、ぐっと胸が熱くなる話なので、ぜひその感動を皆さんと分かち合いましょう。」と締めくくった吉本さん。
浅田次郎の「小説の心」と新藤兼人の「芝居の心」が真っ向からぶつかった舞台は、観る者の胸に静かな感動が沁み込んでいく、そんな作品と言えそうです。
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