シアターフォーラム    
シアターフォーラム 松本幸四郎さん 春の褒章で紫綬褒章を受章

 歌舞伎俳優としてはもちろんの事、ミュージカル、現代劇、映像など幅広いフィールドで活躍されている九代目 松本幸四郎さんが、2005年春の褒章で紫綬褒章を受章されることになり、その喜びの会見が開かれました。

 紫綬褒章とは、「学術、芸術上の発明、改良、創作に関し事績の著しい方」への褒章であり、科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術分野において優れた業績のある方が対象となります。


 八代目松本幸四郎(のちの初代松本白鸚=故人)の長男に生まれ、3歳で初舞台を踏み、今年で俳優生活60周年を迎えた松本幸四郎さんは、代表作である『勧進帳』の弁慶を昨年12月の国立劇場公演で通算790回務めるなど歌舞伎俳優としての活動に加え、『ラ・マンチャの男』『王様と私』などに代表されるミュージカルや、現代劇の俳優としても活躍。
 本年6月29日の帝国劇場公演『ラ・マンチャの男』千穐楽は、ミュージカル通算出演回数が2000回を迎えるという、記念の公演となります。

 さらに、1997年には日本の創作劇上演を目的とした演劇企画集団“シアターナインス”を設立、三谷幸喜氏らの新作を上演する一方、2000年には演劇としての歌舞伎を目指して歌舞伎企画集団“梨苑座”を立ちあげて『夢の仲蔵』を演出・主演。さらにテレビ、映画など映像分野でも活躍するなど、その挑戦心溢れるエネルギッシュな活動は留まる所を知りません。


 名古屋・名鉄ホールで2005年5月1日に初日を迎えるミュージカル『ラ・マンチャの男』の稽古中という幸四郎さんは、集まった報道陣を前に次のような御挨拶で受章の喜びを語りました。

 「自分の演劇に対する夢に力を与えていただきました。3つの時に歌舞伎の初舞台を踏んで60年。歌舞伎を勉強する一方で、ニューヨークのブロードウェイで『ラ・マンチャの男』、ロンドンのウエストエンドで『王様と私』というミュージカルを英語で演るということは、決して楽なことではなかったですけれども、多くの方々のお力のお支えによって今日の晴れの日を迎えることが出来ました。多くの方に御礼を申し上げたいと思います。今まで自分の芝居を一緒に創ってきてくださったスタッフ・キャストの方々と、特に裏方の皆さんに御礼を申し上げたいと思います。
 それから自分は舞台ばかりでなく、映像、テレビ・映画の仕事もしておりますので、カメラマンの方々、助監督の皆さん、それからADの方々、結髪さん、皆さんに御礼を言いたいと思います。自分のあまり多くはない親友、友達にも御礼を言いたいと思いますし、いつもいつも支えてくれた家族の者にも、そして何よりも染五郎時代からずっと応援をし続けてくださった全国のファンの皆様に心から御礼を申し上げたいと思います。
 これからも一日一日、一舞台一舞台、ワンシーンワンシーンを大事に、自分の役者としての見果てぬ夢を見続けていきたいと思います。どうもありがとうございました。」


 「これまで決して良い事ばかりではなく、苦しい事、辛い事も有りましたけれど、悔いの無い決断を今まで自分はしてきたな、という思いで一杯です。」と言う幸四郎さん。
 「歌舞伎の方は松竹、ミュージカルは東宝という、日本の演劇界の大きな興行会社の「演劇というものは良いものであれば垣根は無い。いい芝居をやるんだったらば、やらせよう」という演劇の良心みたいなものを、何十年も感じてきました。本来ならば出来ない形なんです。」と感謝し、「歌舞伎の場合も、ミュージカルあるいは現代劇の場合も、振り返ってみると自分は双方を徹底してやってきたな、という気がします。」とこれまでの様々な挑戦を思い起こします。


 そして今後の目標を「歌舞伎では『勧進帳』1000回上演プロジェクトが計画されているようですし、歌舞伎以外の現代劇はシアターナインスも梨苑座もミュージカルも全部含めて、“ナインス・レパートリー”というものにして順次上演していく形を考えています。当面はこの二つの夢に向かって、邁進したいと思います。」と明かした幸四郎さん。

 現在『ラ・マンチャの男』稽古中と言うことで「遍歴の騎士に叙勲という、お国に大変粋な計らいをしていただきました。」と笑顔を見せ、その劇中歌である「♪見果てぬ夢」になぞらえて、「「夢とはただ夢見るだけのものでもなく、夢とはただ夢を語るだけのものでもなく、夢とは夢を叶えようとするその人の心意気だ」という気持ちが、長年歌ってきて自分の中に湧き上がってきたんですね。夢を叶えようとする心意気さえあれば、夢は叶う筈だと。」と締め括り、この記念の年に花を添える受章をステップに、さらなる高みを目指して進んで行く意気込みを見せていました。

松本幸四郎



勧進帳 松本幸四郎
『勧進帳』武蔵坊弁慶 九代目 松本幸四郎
撮影・福田尚武


ラ・マンチャの男 松本幸四郎
『ラ・マンチャの男』 セルバンテス/ドン・キホーテ



なお、この受章会見での質疑応答の詳細などは近日中に掲載を致します。どうぞ楽しみにお待ち下さい。


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『ラ・マンチャの男』製作発表 (@nifty)


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