タイトル通りに、上演会場もこれまで最大の10箇所に拡大した今回の公演。演出を手掛けるG2氏は会見の冒頭で「この「BIZ」シリーズは、元々後藤くんと松尾を一緒に飲ませたところからスタートして、そこからだと7〜8年掛かって完結することになります。」と感慨深く振り返り、「これはコメディですが、その中でもかなり笑いの起爆力・爆発力のパワーが凄い作品で、そこに篠原さんが加わって更にグレードアップしてやれるという事でとても楽しみにしております。」と挨拶し、いよいよ迎える完結編に向けて力が入ります。
続けて挨拶に立った松尾さんは「この作品は一言で言うと、「人間万事塞翁が馬」のような話でございまして、とにかくそれほど向上心の無い人間が寄り集まって、勘違いが生まれたら、その事態がトラブルに成る筈が何故か好転してしまって大成功を納める、というある意味落語的なちょっと奇想天外なコメディです。第一作のカーテンコールで後藤さんが、「頭の中には三部作が出来ている」と豪語したので、続編を企画しましたが、それが名作で、こうなったらさらに大きな規模で完結編を大々的にやろうということで、今回はちょっとした感動巨編で、3秒に一回笑わせるくらいのパワーがあります。」と、こちらも気合の入ったコメント。
そして「これは勘違いから生まれる喜劇なので、新たに全員のことを知らない人が登場する必要があって人物が増えるのですが、そのシンドイ役に篠原さんに登場していただいて楽しみにしております。完結編といっても前回、前々回を見て無くても充分楽しめますので、初めての方も是非お越しいただければと思っております。」と、公演に向けて自信を覗かせます。
また、作家であり出演者でもある後藤氏は「創る上では難しい作業だったり、繊細な脚本だったりするので、一杯悩みながら執筆が進行中です。こういう脚本を書く人が最近凄く少なくなって、必要だな、と思って私が書いているような気がします。一人のついた嘘がどんどん膨らんで展開して大きなパニックになって行くけれども好転していく、最終的にはとても良い結果になる、というのはコメディの典型・基本だと思うのですが、だんだんそういうものを書ける作家が少なくなったと思いますので、この三部作がそういう脚本界にも影響を与えられたらと思っております。けれど、とても楽しく出来る仕事なので、今回も完結編に相応しいものを皆さんにお見せ出来ると思っております。」と、揃って強気の発言を行います。
そして、今回が後藤作品2度目となる篠原さんは、「今回で舞台は8度目くらいになるんですけれど、今までミュージカルとか、ちょっと真面目なお芝居とか、ラブシーンもあるお芝居だとか、色んなお芝居を演ってきたんですけれど、その中で一番難しかったのがコメディだと思ったんですね。そのコメディで初お誘いを頂いたのが私が前回出た舞台(Piper第5回本公演。『スプーキー・ハウス』)だったんですけれど、やってもやっても自分の中にどんどん課題が出来ていって克服出来ない感じが凄く有ったんですね。その中で、このお話を後藤さんからメールで頂いて、「ぜひとも出たい」と思って二つ返事で「よろしく山」と打ち返しました。今回ご一緒させていただく方はコメディアンのベテランの方ばっかりなので、そのコメディアンぷりをいっぱい見習って、歌って踊れるコメディアンを目指して、この舞台にパワーを注ぎ込みたいと思います。」と彼女らしい表現を交えながら意気込みを語りました。
第一作の『BIG BIZ』では、小さな脱税のための幽霊会社「宮原木材」が、一日で100億円を稼ぐ「結城ビックビジネスエンタープライズ」になり、第二作の『BIGGER
BIZ』では、その「結城ビックビジネスエンタープライズ」がシンガポールのホテルを舞台にした商談や、乗っ取りに対抗しながら一日に100億2000円(!)を稼ぐ「加賀ビガービジネスエンタープライズ」になるまでが描かれたこのシリーズ。
「何が完結するかと言えば、特に何も完結させたくないと思っているのですが、6年掛かって生まれたキャラクターが最後に大暴れする場所と考えていて、ストーリー的にはまだ次があると言われるものにしたいし、完結を遊んでいきたい。」と三部作の完成について話す後藤さん。
「この企画では松尾さんの面白さをどこまで出せるかと挑戦しているので、シリーズで自分の中で何が大きくなって行くかとすれば、その挑戦度ですね。『BIGGEST
BIZ』ではビゲストな松尾くんをお見せ出来ると思います。」とこの作品に賭ける自らの思いを語ります。
「後藤氏の三部作の話を聞いて、勢いと「取り敢えず三本くらいなら何か出来そう」という直感だけでここまで突っ走ってきました。」と言うG2氏。「とても面白く出来て来ましたし、完結編という事で変に力の入った作品にしたくないので、リラックスして楽しんで創りたい。」と言えば、松尾さんも「“AGAPE
store”のゲストは、自分たちが楽しめる仲間になるかが一番肝心なんですね。楽しんでいる空気がそのままお客様に伝わるんです。」と、コミュニケーションを大切にした舞台創りを強調します。