劇団「Studio Life」創立25周年記念公演 第3弾『DRACULA』

【脚本・演出 倉田 淳】

 ブラム・ストーカーの「ドラキュラ」を初めて読んだ時は、小説というよりはドキュメンタリーのような、日記風に綴られたその形式に、まず新鮮さを覚えました。でも内容自体は人間側からの視点のみで書かれたシンプルな“勧善懲悪もの”で、自分の中では違和感があったんです。勇敢な人間たちが悪しきドラキュラを退治してめでたしめでたし、というのは違うよなぁ、と。個人的に、それ以前に読んでいた萩尾望都先生の「ポーの一族」に見られるような、果てしない孤独を背負った存在としての吸血鬼というものにシンパシーを感じていたものですから…。そういった孤独の面を何とか表現できないかという思いが育っていき、『ドラキュラ』舞台化へとつながったんです。

 でも2000年の初演にあたって台本を作る時は、本当に苦労しました!(笑) “勧善懲悪”から離れたいと思いつつ、離れていく糸口がなかなか見つけられなくて。結果としてドラキュラが、ヒロインのミナではなく彼女の婚約者・ジョナサンに愛を見出すという形に落ち着きました。そしてラストで見せるドラキュラの選択――これはスタジオライフにしか表現できない物語になったと自負しています。幸と不幸があいまった結末。何事も光と影とで成り立っているという真実。そうした要素は、『ドラキュラ』に限らずスタジオライフの作品全てに共通するメッセージかもしれませんね。

 『ドラキュラ』のテーマは何百年にもわたる“孤独”です。社会から隔絶され、人々から忌み嫌われ、それでも不老不死のまま死ぬこともできないという、孤独の象徴のような生き物。でも、そこまで究極的ではないにせよ、現在私たちが生きる社会にも同様の孤独を感じている人は沢山いるんじゃないかと思うんです。例えば長生きしても四肢の自由がなく、自殺することも叶わず、そしてその辛さを誰にも共有してもらえなかったり…。心のケアの問題は年々深刻になっていますよね。それゆえにドラキュラは、時代を超えて、共感をもたらし続けるキャラクターなのではないでしょうか。

 今回、スタジオライフ創立25周年にあたる年の最後に『ドラキュラ』を上演させていただくことにしたのは、端的に言いますと“スタジオライフらしいありよう”でこの一年を締めくくれるのではないかと思ったからです。
今年はスタジオライフの命ともいえる作品『トーマの心臓』と『訪問者』の連鎖公演(2〜4月)で幕を開けました。 続いて7月には、近年新しく見つけた道であるシェイクスピア作品(『じゃじゃ馬ならし』)を。それで最後はどうしようと思った時に、最も私たちらしいというか、耽美的であり、かつ私どもが様々な角度から取り組んでいる“孤独”というテーマのシンボライズという意味で、『ドラキュラ』が浮かびました。過去3回の上演では、幸いお客様からのご好評をいただいている演目でもあります。

 4回目となる今回の上演。演出家としては、これまで以上にクールな目線でアプローチしたいなと考えています。かつては持てなかった客観的でクールな目線を持つことで、舞台上の“情”の部分が逆に濃く浮上してくるんじゃないかという狙いに、今回はトライしてみたいなと。また、スタジオライフの本拠地・新宿からは離れた銀座という場所で、新しいお客様との出会いが一つでも多くあればいいなと意気込んでおります。

劇団「Studio Life」創立25周年記念公演 第3弾
『DRACULA』

スタッフ 原作: ブラム・ストーカー
演出: 倉田 淳
キャスト


公演情報

東京公演
日程 2010年11月10日(水)〜11月28日(日)  全26回公演

会場 銀座・博品館劇場
料金 前売・当日:5,800円  ウイークデイマチネ:4,500円
問い合わせ先 スタジオライフ 03-3319-5645(平日12:00〜18:00)

大阪公演
日程 2010年12月4日(土)〜12月5日(日)  全3回公演

会場 大阪・サンケイホールブリーゼ
料金 前売・当日 S席:6,000円  A席(2F後方席):5,400円
問い合わせ先 スタジオライフ 03-3319-5645(平日12:00〜18:00)

 

その他の写真

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『DRACULA』ちらし表 『DRACULA』ちらし裏




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