『エリザベート』トート役で城田優が文化庁芸術祭新人賞を受賞

 2010年8月9日から10月30日まで東京・帝国劇場で上演された東宝ミュージカル『エリザベート』で、トート役を演じた城田優さんが平成22年度(第65回)文化庁芸術祭賞新人賞を受賞し、その喜びの会見が行われました。

 文化庁芸術祭は昭和21年以来毎年秋に開催され、開催期間中に行われる参加公演(演劇、音楽、舞踊、大衆芸能の4部門)や作品の中から、それぞれの部門で公演・作品内容を競い合い,成果に応じて文部科学大臣賞(芸術祭大賞、芸術祭優秀賞、芸術祭新人賞)が贈られるもの。
審査は関東と関西に分けて行われ、今年の演劇部門には関東29公演、関西19公演が参加し、合わせて6件(大賞1件、優秀賞3件、新人賞2件)が受賞しました。

 『エリザベート』はウィーンが生んだ代表的なミュージカルで、1992年の初演以来6年のロングランを記録、さらに各国でも上演されて絶賛を浴びています。ハプスブルグ帝国の最後の皇后・エリザベートの激動の生涯と魂の遍歴を斬新な視点から描いたこの作品は、日本では1996年に宝塚歌劇団が上演、さらに2000年には東宝ミュージカルとして3ヶ月間のロングランを行った後、再演を繰り返し、2010年の公演千穐楽には通産上演回数が903回に達した大人気の作品です。

 人の命を奪う黄泉の帝王でありながら、人間エリザベートを愛してしまうトート役は、初演〜2005年は山口祐一郎・内野聖陽のWキャスト、2006年・2008〜2009年の公演では山口祐一郎・武田真治のWキャストで務めて来ましたが、2010年は山口祐一郎に加え、劇団四季出身の石丸幹二、そして城田優のトリプルキャストで行われ、城田さんは歴代最年少、若干24歳のトートという事で開幕前から注目を浴びていました。

 会見会場に現れた城田さんは、まず「このような名誉ある賞を頂くことが出来て感激していると同時に今でも実感が沸かない程驚いております。昨日急に会見が決まって緊張していますし、また気持ちが追いついていないのですが、この会見の場で実感が沸けばいいなと思いながらここに居ます。」とご挨拶。続いて記者との質疑に入りました。

●城田さんのトートは日増しに評判になって城田トートの虜になるファンが続出しましたが、ご自身ではそれを感じておられましたか。またどのように思われていましたか
城田 僕自身は3ヶ月間、毎公演がむしゃらに臨んでいたので、全く周りからの評判とか、開演当初からレベルアップしているとかの事は耳に入って来なかったのですが、周りの友人や関係者から「城田君の日のチケットが取れないんだよ。」と言われる様になってから、「そんな筈は無い。」と僕自身は思っていたのですけれど(笑)、本当にチケットが取れないという事実を知らされてから「凄く評価されているのかな。」と感じるようになりましたが、「日に日に評価されている。」という感覚は有りませんでした。

●何が評価されて今回の受賞に繋がったと思われますか
城田 今回僕がトートを演じるに当たって心掛けた、と言うか目指したのは今まで20代の役者の方がトートを演じた事は無かったので、最年少ならではの雰囲気と言うか、若さやこの歳だから出せる何かを出したいなと考えていて、今まで演じて来られた方との差別化というかオリジナリティ、僕にしか出来ないトートを創ろうと思っていたので、このような賞を頂けると言うことは、もしかしたらそれが成功したのかな、と考えています。

●最後のお姫様抱っこもオリジナルですか
城田 そうですね(笑)。そこも含めて細かい演出から歌一つとってもそうですし、これまでエリザベートファンの皆様が思い描いていたトート像とは又違った角度から役創りをさせて頂きました。

●特技にピアノ・サックス・ギターとありますが、これを契機に今後CDを出したり、ソロでやってみたいという思いはございますか
城田 僕は幼少時から音楽が大好きだったので、いつか自分自身の作詞・作曲・歌で曲を出してみたいという夢は小さい頃からずっと有ります。

●3ヶ月間舞台に立たれていた中で、一番印象に残っている事は何でしょうか
城田 甲乙付け難いんですけれど、まずは初日(8月11日)の何とも言えない緊張感。『エリザベート』という長く愛されている作品の中で、トートという物凄く人気の有る、そして色気の有る役を初めて演じる城田優が出てくる、という時の緊張感は今でも忘れられない程物凄く、当日も言ったのですが「胃薬を飲んでも全然胃の痛みが治まらない」ほど凄く緊張していたあの日と、その正反対で、千穐楽最後のカーテンコールで舞台に立った時に共演していた皆様が本当に大きな声援と拍手を送って下さって、そして観に来られたお客様が本当に心から拍手をして頂けていると言うのが心に直に届いて、本当に忘れられない千穐楽になったなと思うので、その二つ、やはり初日と千穐楽と言うのは光と影じゃないですけれど本当に良い思い出になっています。

●演る前は色々とプレッシャーも有ったと思いますが、どういう事をプレッシャーに感じて、どう乗り越えたのでしょうか
城田 僕は16、7歳の時にこの東宝版『エリザベート』を帝国劇場で観させて頂いて、「僕にはとてもじゃないけれど、このミュージカルには出られないな。」と当時思い知らされたというか、レベルの高さを痛感した事がございまして、そのトートを自分が演じるという考えても見なかった流れに、正直どうしようかと最初はためらったのですが、前例の無い事に挑む事に僕自身が何故か凄く掻き立てられるというか、前例が無いなら前例を作るという意思の下、それまでのプレッシャーを壊して行こうという意識に結びつきましたし、何よりも共演者の皆様が支えて下さったというのが一番の糧になったと思いますね。
稽古中にしても、場当たりでも、本番中でも、いつでも一番近くで皆さんが「大丈夫だよ、優くん大丈夫だよ。」と。僕が緊張したり落ち込んだり悩んだりする度に「凄く良いもの出来ているよ」とか「新しいトートになっているよ」と皆さんが仰って下さったので、その皆様の、――勿論スタッフの皆様やファンの皆様、僕の周りのプライベートの友人や家族も皆支えてくれたのですけれど、――やはり一番近い距離でずっと支えてくれたキャストの皆さんが居たからこそ、そのプレッシャーや緊張を上手く、と言うかギリギリ何とか跳ね除ける事が出来たのかな、と考えています。

●実際に参加して『エリザベート』はいかがでしたか
城田 僕が16歳か17歳の頃に劇場で観たあの美しい世界観、美しい音楽、衣装やセット全てがキラキラしていて本当に素晴らしい作品だと当時も思っていたので、それは変わらず、自分が演じた中でも感じる事が出来ましたし、自分がトートを演じた事で尚、その世界観がもっと濃く鮮明に自分の中に映ったので、やはり『エリザベート』には何一つ欠かす事が出来ないというか、全ての要素がミュージカル『エリザベート』が愛される理由なんじゃないか、と思いました。

●受賞の第一報を聞かれた時はどのような状況で、どのようなリアクションを取られましたか。カンパニーの皆様に連絡をされましたか。
城田 本当に急だったので、スタッフの皆様には先程挨拶をさせて貰ったのですが、キャストの皆さんには誰にも何も言えていない現状です。
初めて聞いた時は、社長から「ビッグニュースが有る!」と言われたので、まず良いニュースなのか悪いニュースなのか解らないままドキドキしていました(笑)。まあ社長の顔色が凄く良かったので(笑)、どうやらこれは良いニュースなのかと思いながら聞いたところ、「賞を受賞した」と聞いたので、「えっ! 本当ですか! トロフィーとか貰えるんですか?」と(笑)。本当に僕自身が賞には憧れ意識と言いますか、役者をやっていて表彰されるということは名誉な事ですし、自分自身の糧になる事だと思っているので、このような立派な賞を頂く事でこれからも頑張って行こうと思えるので、未だ本当に実感は沸いていないんですけれど、純粋な気持ちで「やった!」という、――学生がコンクールで金賞を取ったという感じではないですけれど、――本当にそれくらいのピュアな気持ちで今凄く嬉しいなと思います。そして本当に実感は未だ沸いていないです。

●3ヶ月間トートを演じた中でご自分の中でのトート像は変化したのでしょうか
城田 稽古場から含めれば約半年間に渡って役創りをしていった訳ですけれど、僕の中では先程も申しましたように毎公演がむしゃらに、その中でも落ち着きも見せつつ、とにかく120%……200%で臨めるよう毎公演挑んでいたので、僕の中で自分自身が感じられる変化というのは中々無かったのですが、初日と千穐楽では落ち着きですとか、気持ちの持ち方ですとか、配分と申しますが何処でエネルギーを放出して何処で抑えてというような処に関してはある程度コントロール出来る様になっていたと思うんですけれど、自分自身目に見えるような「ああ、ここでこう変化しているな」と言う様な事を実感している暇というか余裕は正直無かったですね。それ程までに全力で毎公演臨まなければならない凄く大きな・・・例えるなら凄く強い敵と戦っていると言いますが、本当に本当に毎回全力で臨まないと殺られるというような意識の下で演っていました。

●この役には今回限りで臨まれたと伺っていますが、こうした評価を受けて次も有るのかどうかも聞かせて頂きたいと思います。
城田 本当に一度きり・・・僕自身どれだけ出来るかチャレンジしたいと思っていたのが本当の気持ちで、本当にこの一度に全てを賭けようと思っていたので、その気持ちは変わらずに有ったのですけれど、このような賞を頂く事が出来、観に来られなかった、――僕の周りにも居るんですけれど――、また是非演って欲しい、と言う声も直に届いているので、機会が有ればまた前向きに、またオリジナルの前回と違ったトート像だったりとか、前回を上回るパワーアップした2倍も3倍もスケールの大きなトートを是非演じてみたいとは考えています。

●これからどんな作品や舞台に挑戦してみたいかお聞かせ下さい
城田 具体的にこの作品、このジャンルというのは無いのですが、僕自身ちょっと異質な容姿というか、大きさもそうですし(身長:188cm)顔もそうですし、自分自身自覚している他の日本で活躍している俳優さんとは違うところを上手く生かして行きたいと言うのが一番の考えで、前は自分自身に色んなコンプレックスが有ったのですが、それを逆に武器にして、こうして色んなお仕事をさせて頂けるようになり、そしてこのような素敵な賞も頂けたと言う事で、自分自身に自信を持って仕事をして行けたらいいなと思うので、今後も関わる一つ一つの作品で、――別に賞を狙うとか目指すと言う事では無く――、今回はこのようなオマケ、――オマケと言うほど小さな事では無いのですが――、そのような感覚で今後もずっと120%、200%、とにかく頂いた役を自分なりに解釈し、他の人から「ああ、そういう演じ方も有るんだな」という意外性ですとか、テレビでしたら視聴者の方を裏切るようなお芝居、舞台でしたら観に来られたお客様がずっと僕を見て釘付けになってしまうようなお芝居、とにかく全力で毎公演、そしてどんな作品でも演じて行けたらいいなと常に思っています。

●長身でハンサムで、まさかそんなコンプレックスが有ると言うのは意外ですが
城田 幼少期の頃は本当にコンプレックスで、高校生くらいまでは身長も本当に嫌だと思っていたので、授業中は常に腰を曲げて身長が止まるように祈っていた日々だったのですけれど、今は『エリザベート』カンパニーの皆さんに「城田くんは身長があるから本当にトートにぴったりだよね。」と仰って頂く事が凄く多かったので、「こういう自分がコンプレックスに思っていた事が生きる日が来るんだな」と思い、是非今後もこの体や顔を生かせるような仕事が出来たらいいな、と思います。

 最後に帝国劇場から贈られたという花束を手に写真撮影に応じた城田さん。これからもテレビ・映画は勿論の事、ミュージカル俳優としてもその類稀な容姿と才能で、多くの観客を惹き付ける舞台を数多く見せてくれる事を大いに期待して良さそうです。

 

 

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